2026年08月04日10時50分掲載
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アジア
スーチー氏が国際赤十字現地代表と初会見 ミャンマー新政権はなぜ非公表なのか
4月10日ミャンマーの大統領就任式がおこなわれ軍籍を離れたミンアウンフラインが新政権を正式に発足させた。そして最初の動きとして2021年2月のクーデター以降収監されていた民主化指導者アウンサンスーチー氏を「ある居住に移送」した。それ以降百日余り経っているが、氏の実子や弁護士ふくめ一切第三者による接触は許されず国際的に彼女の安否確認の声が高まっていた。昨日(8/2)になってようやく国際赤十字のミャンマー代表が首都ネピドーで懇談する機会が与えられた。(国際赤十字は会見場所その他の具体的情報は公表していない)(宇崎真)
なぜミャンマー新政権はここまで頑なに氏に関する情報を封じているのか、軍内部事情に詳しいクローニー(複数)は次のように明かす。
5−6月中、出来れば早い段階でミンアウンフライン新大統領はアウンサンスーチー氏をある取引に使うことをもくろんでいたが、その思惑は大きくはずれている。だからといって更に長期にわたって「留置」しておくのは更に広い反発を呼ぶ。氏を表に出すことによる反響は読み難いとして最小限の「生存確認」にとどめようとしているのだ。
実はトランプ政権との間で水面下、アメリカの要請に応じてアウンサンスーチー氏を「自由の身」にする。それによってトランプに花をもたせ、ミャンマー新政権にとっては国際環境の大きな改善が期待できる。米国は新政権への制裁を緩和し、ミャンマー国の資源獲得へ道を拓く。この転換を発表する大々的な記者会見を(バンコクあたりで)開く。こうした構想を描いていた。
確かにトランプ政権は国際法やEUその他の国際関係、慣例は無視し「ディ―ル」損得勘定を第一の基準としているから、ミャンマー独裁政権からすればその「構想」は可能性ありと踏んだとしても無理はない。ところが米国国務省と財務省はそれを進めるには前提条件としてミャンマー国内のオンライン詐欺拠点一掃とその犯罪首謀者の逮捕、身柄の米国移送を要求してきたという。わが国のメディアは日本人関与が明らかになればミャンマー詐欺拠点の所在を大々的に報道するが、それが無ければすっかり忘れてしまう。だから米国人の詐欺被害の実態は殆ど知られていない。
実際にはKKパークの「撤去騒動」で日本人関与のニュースが消えていく裏で中華系オンライン犯罪組織は「今後はターゲットを主に米国、インドに換えそのプラットフォーム構築を急ぐ」としていたのである。
急速なAI普及、スペース社のスターリンクの飛躍的拡張はミャンマー国内(カンボジアフィリピンでも同様であるが)のオンライン詐欺拠点の分散化と増加をもたらしている。現時点でミャンマー国内の詐欺拠点 (Cyber Scam)はタイ国境沿いよりも中国国境地帯を含む東北部の少数民族地帯全体にひろがり、その数は75か所に上っている。(ISP-Myanmar) 米国人のオンライン詐欺被害総額は年間百億米ドル(約1.57兆円)規模にのぼるという。(米国財務省による推計)
これらのオンライン詐欺拠点の形成、維持管理、運用に少なくとも一部にミャンマー国軍の関与があったのは疑問の余地はない。筆者自身タイ国境に接するシュエコッコ市街地とカジノ建設、そしてオンライン詐欺拠点建設に至るまで何度も現地に足を運んで取材を試みた経験がある。拠点を防衛する少数民族武装勢力に取材を申し込んだところ「我々としては許可してもいいのだが、中央の了解をとってきてくれ」「それはネピドーか」「そうだ、ミンラインフライン司令官の許可が要る」というやりとりがあった。
タイ国境沿いモエイ川(ムーイ川)の密貿易利権の認可と引き換えに国軍傘下(国境警備隊)に入ったカレン族のBGFの首領ソーチットウこそが米国からの「前提条件」に挙げられた首謀者のひとりなのである。もっともミンアウンフライン自身も様々な組織犯罪に加わり擁護し巨万の富を築いたことはこれまた疑いようもない。ソーチットウの上に立つ頭目である。そこは百も承知しているが、現実的に政治的に判断して米国はハードルを下げたのだろう。だがそれでもミンアウンフラインには越えられない障害だったということだろう。
ミンアウンフラインと新政権の構想は出発点で崩れた。トランプとのディ―ルがうまく進めば日本、隣国タイとの関係はじめ国際環境を大きく有利に転換していけると勇んでいたのが暗転してしまった。新政権を「認められない」と言明した日本政府であったが、ミンアウンフライン大統領就任式に笹川陽平氏が「ミャンマー国民和解担当日本政府代表としてではなく、個人として」参加した。この時点では既に上述した「構想」があったことは間違いない。果たして、その構想について笹川氏を「父のように信頼する」ミンアウンフラインから説明を一切受けなかったのだろうか。
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