2026年09月12日14時01分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=202609121401106

アジア

日本のミャンマー外交の失敗(4) 笹川陽平「日本政府代表」の露骨なダブルスタンダード

 前稿でこのところ再稼働し出した笹川陽平氏の「ミャンマー独自パイプ」が日本政府代表としてなのか、個人的なものなのか疑問を呈した。4月10日のミンアウンフライン大統領就任式典には「個人として」だそうだが、いまなお「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」である氏がその数日前に「秘密裏に」国軍と対立関係にある北部の少数民族武装勢力の代表と会い、その内容をもって大統領と会って協議している。(宇崎真) 
 
▽日本政府ではなく国軍の利益優先 
 もとより笹川氏の「ミャンマー国民和解担当」というのは国軍と少数民族武装勢力(EAO=Ethnic Armed Organizations)間の和平交渉の調停仲介が中心任務であって、国軍とアウンサンスーチー氏やNUG(国民統一政府)、反国軍民主勢力等との和解工作を意味するものではない。実際に氏がそのために動いているとの情報に接したことはない。 
 ミャンマーの「国民和解」に最大の障害となっているのは国軍による空爆の拡大である。言い換えればその空爆を止めさずに「和解」「仲介」が成立するというのは絵空事だろうし、笹川「政府代表」の動きは日本政府の方針にも反する。その傾向は2021年2 
月の国軍クーデター以降顕著に表面化した 
 クーデタ―直後のG7外相会議(日、米、英、独、仏、伊、カナダの外相及びEU外相と上級代表)はクーデターを非難し、「正当政府の権力回復」「不当に拘束された人々の解放」「人権及び法の支配の尊重」を求めた。さらにこうも唱っている。「軍による情報統制を深く懸念し、市民社会とメディアを含む文民はいかなる形の報復を受けてはならない。最も脆弱な人々への人道支援に制限が加えられてはならない」、そして最後に「我々は民主的な未来を求めるミャンマーの人々と共にある」と結んでいる。 
 また日本政府は具体的に「暴力の即時停止」「アウンサンスーチー国家顧問ら被拘束者の解放」「民主的政治体制の早期回復」の三点を強調し、国軍主導の「総選挙」(2025.12-2026.1)に対しては「ミャンマー国民のさらなる分断を招き、平和的解決をより困難にする」として「総選挙」を経て成立した「ミンアウンフライン政権」を認めないという立場を表明した。 
 笹川氏が「日本政府代表」である以上「個人として」ミンアウンフライン大統領と会い少数民族武装勢力側とも会い「和平交渉」の「仲介」をはかるのを日本外務省はどのように説明するのか。最大にして最も熾烈な暴力である空爆を即時停止せよとの要求はどうなるのか。そのことを含む三点の原則的立場との関係でどう位置付けられているのか。明確に日本政府は国内外に説明すべきだろう。 
笹川氏の動きは日本政府の公式的立場に沿っていないというだけでなく、「三点の要求」の実現をより難しくするものではないのか。氏は8月27日にもチェンマイでEAO(少数民族武装組織)の代表と個別に5者と計5回の会談をおこなっている。 
 ミンアウンフライン─笹川ラインの動きを見ていると、その目指すところは国軍と少数民族の「和平交渉」を先行させ、アウンサンスーチー支持の国民、反軍民主勢力を孤立させ国軍独裁による政治的安定を実現させることではないのか。それはまさに笹川氏が日本政府の立場ではなく、ミンアウンフラインの代理、利益代表として動いていると言わざるを得ない。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。