2026年10月29日22時03分掲載
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市民活動
長生炭鉱の遺骨返還へ「民間主導の探査」と「政治決着」目指す―市民団体が政府交渉の現状と独自調査の方針を報告
1942年の長生炭鉱水没事故(海底炭鉱)で犠牲となった計183人(うち136人は朝鮮半島から、47人は日本人)の遺骨収集を目指す「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」(以下、「刻む会」)は、10月28日に政府ヒアリングと記者会見を実施。省庁側から慎重な回答が示される中、独自の探査決行や政治への働きかけで事態を打開する方針を示した。
【実質ゼロ回答の中に引き出した前進】
ヒアリングにおいて、「刻む会」は厚労省に対し、海底だけでなく一部の犠牲者が埋葬された可能性のある「陸の遺骨」の調査への財政支援を求めたが、「事実関係が不明」として見送られた。警察庁に対しても、これまでに発見された身元不明遺骨の長期間安置や出身地の特定を要請したが、現行法を理由に慎重な姿勢を示す結果となっている。
一見すると厳しい結果だが、「刻む会」事務局長の上田慶司さんは省庁側との交渉について、「すべての課題を提示し、門前払いではなく『検討せざるを得ない状況』に持ち込んだ」と説明する。実際に警察庁に対しては強い要請を重ねた結果、遺族捜しの具体化について「検討する」との回答を引き出した。
また、DNA鑑定に関しても進展がみられた。「刻む会」は、これまでに発見された遺骨からDNAの抽出に成功した実績を評価している。今回のヒアリングにおいて警察庁は、既に判明している新たな遺族との照合に向け、より精度の高い基準で自ら検体を採取する方針を示した。
「刻む会」代表の井上洋子さんは、日韓共同で行われたDNA鑑定結果の公式発表前に、警察庁の担当者から事前説明の電話があったことを明かし、「以前の淡々とした対応に比べ、当会と信頼関係を築こうとする姿勢が感じられた」と述べている。
【宇部市の動きを前進と捉え、民間主導の陸地探査へ】
一方、地元・宇部市での「陸の遺骨調査」も重要な局面を迎えている。陸地への埋葬の可能性を探る中、市から新たに提供された1942年当時の公文書について、「刻む会」は「犠牲者が陸地に埋葬された可能性を裏付ける資料」とみている。
同時に市から調査予定地の伐採を控えるよう申し入れも届いたが、「刻む会」はこれを肯定的に受け止めている。これまで境界確定調査を拒んできた市が、初めて権利関係の調査に乗り出した証拠であり、長生炭鉱跡地一帯の平和公園化に向けた大きな一歩となるからだ。
そのため「刻む会」は、厚労省からの支援が見送られたことや市からの要請があっても歩みを止めず、予定通り11月13日以降に伐採を決行する。さらに12月中旬には韓国から専門業者を招き、超音波探査機による独自調査に踏み切る構えだ。
【「未来志向」を問う政治的アプローチ】
こうした現場の動きと並行して、事態を打開するための政治的なアプローチも進める。省庁が難色を示した課題を、11月末の「日韓・韓日議員連盟合同総会」の議題に乗せ、日韓双方への働きかけを通じて両国政府を動かす狙いだ。
会見の最後、同席した日本人犠牲者の遺族は次のように訴えかけた。
「役所は一般論ばかりを楯にするが、『国策で集められた人々が犠牲になった』という歴史的背景を度外視している。日本政府自らが主体的に遺族を探す積極的な姿勢を行動で示してこそ、真の未来志向に繋がるはずだ」
国策の犠牲となった人々の尊厳を取り戻すため、「刻む会」の戦いは現場と政治の両輪で次なる局面へと進んでいる。
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