2026年10月30日15時44分掲載  無料記事
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入管

永住資格取消し、問われるのは制度の妥当性だ

 出入国在留管理庁は2026年10月1日、「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」を公表した。2024年の入管法改正で追加された取消事由について、判断の考え方や具体例を示すもので、2027年4月1日に運用を開始する。 
 
 ガイドラインは、入管法上の義務違反、故意に公租公課を支払わないこと、一定の刑罰法令違反による拘禁刑を取消事由として挙げている。一方、取消事由に該当しても、日本での在留を認めることが適当でないと判断される場合を除き、原則として別の在留資格へ変更する仕組みも定めている。 
 
 今回のガイドラインについて、永住許可の当事者とその家族でつくる「永住許可有志の会」の荒木生さんに話を聞いた。荒木さんは、永住者が日本社会に根を下ろして暮らしていることへの配慮や、個々の生活状況を判断に反映させる考え方が盛り込まれた点については、一定の評価を示す。その一方で、制度の運用によっては、永住者の生活の安定を損なう事態が起こりかねないと懸念する。 
 
 荒木さんが特に問題視するのは、自治体などの公的機関による通報制度と、在留カードの不携帯が取消事由に含まれている点だ。改正入管法では、国や地方公共団体の職員が職務上、在留資格の取消事由に該当すると考えられる外国人を把握した場合、入管当局に通報できる仕組みが設けられている。 
 
 自治体には、生活困窮やさまざまな問題を抱える住民を支援する役割がある。しかし、通報制度が現場でどのように受け止められるかによっては、支援を必要とする人に寄り添うことよりも、入管当局への情報提供が優先される恐れがある。荒木さんの懸念は、行政への相談が在留資格上の不利益につながるかもしれないという不安を生み、困窮している人が支援を求めること自体をためらわせかねない点にもある。 
 
 また、在留カードの不携帯をめぐっては、政府のこれまでの説明との整合性も問われる。ここでいう政府の対外的な説明とは、2024年に国連人種差別撤廃委員会(CERD)に対して日本政府が行ったものである。CERDは同年6月、永住許可取消し制度の見直しなどを求める書簡を日本政府に送付し、日本政府はこれに対して同年9月、回答書を国連機関に提出した。この回答書の中で、政府は「在留カードの携帯や有効期間の更新申請を単に失念した場合に、『永住者』の在留資格を取り消されることはない」と説明している。しかし、今回公表されたガイドラインには、在留カードの不携帯が取消事由として盛り込まれている。単なる失念と取消しにつながる行為が、どのように区別されるのか。政府の国連機関への回答とガイドラインの記述との関係について、納得できる説明が必要だ。 
 
 永住資格の取消しや在留資格の変更は、本人の生活基盤に重大な影響を及ぼし得る。公租公課の滞納についても、支払う意思がない場合と、失業や病気などの事情によって支払いが困難な場合とを区別しなければならない。ガイドラインが個別の事情を考慮する姿勢を示しているとしても、それが実際の判断に反映されなければ、制度への不信は解消されない。 
 
 必要なのは、行政の裁量を無条件に信頼することではなく、取消しに至る判断の基準を明確にし、本人が事情を説明できる機会を確保することだ。判断に誤りがあった場合の救済手段を実効的なものとし、取消しや在留資格変更の実績を検証できるようにすることも欠かせない。 
 
 法令違反への対処と、長年日本で暮らしてきた人々の生活の安定を守ることは、対立する目的ではない。制度が適正に機能しているかどうかは、政府が示す理念や説明だけでは判断できない。通報制度が自治体の支援現場に及ぼす影響や、在留カードの不携帯をめぐる判断の実態も含め、運用の透明性と妥当性が厳しく問われる。 


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