2016年03月13日14時30分掲載  無料記事
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コラム

ポーランドの旅2 ダンディなバスの運転手は高給取り 木村結

  ポーランド8日間の旅は殆どバスの旅だった。ホテルを出ると「おはようございます」と日本語で迎えてくれるシュテパンさんはダンディな運転手。毎日ネクタイを締め紫のセーターなどを粋に着こなす。彼はポーランドの労働者としては高給取り。多くの労働者は仕事が終わってからタクシーの運転手や家庭教師などのアルバイトをしている。夫婦共稼ぎは当たり前だが、給料は日本円で7万から10万円位。ポーランドは古くから8時間労働が根付いている。 
 
  ワルシャワ郊外にあるヴィエリチカ岩塩坑は地下64mから325mまで降りて坑道を歩き岩塩で作られたシャンデリアやマリア像を見学する施設だが、労働者をどんなに長く働かせようとしても、8時間を過ぎると効率が落ちるので、8時間労働が定着。8時間しか持たない明かり燃料を持たせて仕事をさせた長い歴史がある。だからポーランドでは残業という考え方がなく、お金が足りない人はレジャーのためとか、家を建てるためにバイトをするのだ。長くて2年間の休みを取ることができるので、多くの人が自分で家を建てる。 
 
  観光バスの運転手は時間が不規則なので約22万円と高給なのだという。日本では今年1月、スキーツアーバスの事故で15人も犠牲になったばかり。過酷な非正規雇用の代名詞のような日本の長距離バスの運転手との違いに思いを馳せた。労働者の殆どは5時半には仕事を終える。例え同僚と外で飲む場合でも一旦は家に帰り、子どもの顔を見てからシャワーを浴び着替えて出かけるとのことで、1日に2回のラッシュアワーがある。実際夕方のラッシュに巻き込まれ40分ほどレストランに着くのが遅くなったこともあった。 
 
  ドイツから買いに来るほど食料品は安く、日本の価格に比べて3割程度。例えばビールは500ml缶で100円。チーズは日本で2000円程度の大きな塊が300円程。木の実やドライフルーツの種類も多く、スーパーでは量り売りで安い。ホテルの朝食ブッフェでも様々なドライフルーツがあり、プロキシミーニアという名前を覚えて探したが自由行動の少ないツアーでは見つけられなかった。 
 
  連日昼食も夕食もお仕着せだったが、結構美味しくいただけた。ただ出される肉とじゃがいもの量が多く、残すのが心苦しかった。紫キャベツはじゃがいも同様冬の野菜の定番のようで、コールスローやマリネなどレストラン毎に異なる味付けで量が多くても平気だった。スープも野菜が入らないビーツの色だけの真っ赤なボルシチやブロッコリーのスープなど多彩なスープが冷えた体を温めてくれた。 
 
  連日氷点下5度から10度程度で寒かったが、ビールだけはよく飲んだ。ベルギービールほどの個性はないが、軽いだけに飲みやすく、どれも美味しかった。世界遺産の平和教会の隣にあるトイレを借りに入ったパブではトイレだけの使用料2ズロチを払うよりとカプチーノを頼んだら7ズロチ。ビールのジョッキを頼んだ方も7ズロチで美味しそうにビールを飲む姿に悔しい思いをした。7ズロチは250円程度だが、指定されたレストランでビールを頼むと350mlで8から10ズロチ。いつもツアーでは割高な飲み物を飲まされている気がして納得できない。いつも偶数の金額なので、料金表の倍の価格を払わされているのかも知れない。昨年行ったインドでも同じだったが、お仕着せのレストランにはドリンクのメニューしかなく、団体旅行者向け専用のような気がしてならない。旅行代理店の方に聴いてみたい。一人参加の女性が4人で、みなお酒が好きだったこともあり意気投合。連日行動を共にし、スーパーでビールやワインやチーズなどを買い込み、ホテルでおしゃべりに興じた。 
 
  枕チップは不要の国だが、ホテルやレストラン以外のトイレは有料で1.5から2ズロチを払わなければならない。たった50円か70円でもトイレにお金を払う習慣のない日本人はこのお金が気になる。職場近くの東京駅ではリニュアール工事と共に駅構内や地下街のトイレを有料化したが、「帰りに50 円お支払いください」などと入り口に書いて支払いを喚起したり、食事をしたレストランでコインを受け取り、そのコインがないとドアオが開かないなど、様々な工夫を重ねたが、どの方法も市民権を得られなかった。東京駅だけが、しかも一部のトイレだけが実施しても無理なことだが、受益者負担の問題は街づくりの大きなテーマ。公園のトイレなども考えていかなければならない問題だと思う。 
 
  話をポーランドに戻そう。ポーランドではよほどの街中でないと信号はない。交差点は円形でパリの凱旋門のようになっていてわかりやすい標識もある。横断歩道に立てば双方向の車は停止し、歩行者は優先的に渡れる。手を振ったりお辞儀をしたりすると同じように応えてくれる、とてもフレンドリーな国民性。これは常に周辺諸国に支配され続けたからだろうか。ただ、自転車道路などが明確に分離している処に入り込んで事故にあったら、完全に歩行者の過失になるとのこと。その国の交通常識は大事なポイント。ガイドブックには記載が必要な情報だと思う。ワルシャワなどで信号機がある処では車がかなりのスピードで飛ばしていた。 
 
   車は日中でもライトを点けて走っている。物価の安いポーランドに週末ともなればドイツからの買い物客が殺到する。そのドイツからの車がみな昼でもライトを点けているのを見て、西側の人々がやっているのは良いことに違いないと真似した結果とのこと。また、金曜日には妻に花をプレゼントする習慣はフランスから真似たと。きっと他にも習慣になったことはたくさんあるのだろう。こうして国境がなくなると同時に文化も習慣も融合していく。 
 
   日本では、犬猫の殺処分が社会問題になっている。私は、命をお金で買うことを辞めなければ殺処分問題は解決しないと思うが、国会議員のグループでもペットショップ問題は棚上げで周辺の議論ばかりしている。ポーランドにはペットショップはない。ペットを飼いたい人は保健所で面接をし、飼う能力があるか資質をチェックされる。合格すると訓練学校に行かされる。そこを卒業して初めて飼うことが許されるが毎年数万円の税金の納付が必要。だから犬を散歩に連れ歩くのはステータスなのだと。猫も野良猫はおらず、家で同様に飼われているとのこと。 
 
   道路脇の電柱の真上に巨大な鳥のオブジェがあった。これはコウノトリの巣で、春アフリカから飛んでくるのだと言う。親鳥は卵を巣に産み、幼い鳥たちだけでアフリカに渡り、親鳥は秋に帰るとのことで、教えてくれたガイドは詳しいことはわからない世界に生息するコウノトリの1/4がポーランドで越冬する。ガイドによると飛べるようになった幼鳥は幼鳥だけでアフリカに渡り、その後親鳥たちも帰って行くと言う。詳しいことはわからないが、不思議な習性ですと話した。ウミガメの赤ちゃんも卵から孵ると一目散に海を目指すが、コウノトリが飛ぶ距離は約9000km。にわかには信じられず、ネットで調べたが、コウノトリの生態については謎が多いようだ。 
 
  消費税は7%。ビールなど贅沢品は22%だが、生活費は安く大学の学費なども無償。コウノトリだけでなく、人間も住みやすい街だと感じた。 
 
木村結 
東電株主代表訴訟事務局長 
 
 
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