2016年07月03日16時21分掲載  無料記事
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コラム

東電は右翼団体にひれ伏した  東電株主総会報告  木村結

  6月28日東電株主総会は開催された。昨年から原発保有9電力は同日開催に戻し、集中開催への非難などなかったかのようだ。脱原発・東電株主運動が議案提案を始めてから26年目となった今年は303名25万株で9件の提案を提出した。最も株数が多かった2006年727名53万7千株に比べるとほぼ半減してしまった。昨年は、3名のグループが原発推進提案を出し、会場内からも「再稼働推進」の要望が出された。10兆円もの税金をつぎ込まれている事実上の破綻会社であるにも拘らず、「そろそろ配当金も」という再稼働しなければ利益は出ないとの説明をする会社を後押しするような発言も相次いだ。脱原発の意見や質問には多くのヤジが飛び交い、まともな議論を期待する株主の出席は益々減っていく。 
 
   今年は会場の空気だけでなく外の景色も大きく変わった。会場の代々木体育館に着くと東電の案内板の半分以上が見えない様に「しきしま会」と称する団体の大きな横断幕が張られ、日の丸の紋付きの着物を着た萌えキャラの幟も何本か翻っており9時前にも拘らず10人ほどがスタンバイ。その横には在特会にはもれなく付いてくる公安が30人ほど。その後「日本の原発は安全です」と書かれたパネルを持つ10人ほどが現れ、更に「放射線の正しい知識を普及する会」の12頁オールカラーの季刊紙を配布する人びとも到着。東電は私たちには正面から逸れた場所を指定しておきながら、しきしま会には向こう正面の最高の場所を提供するという厚遇ぶり。東電が設置した案内板の表示が見えなくても文句も言わない。冷たい雨が降る中、私たちは用意してきた「今総会の見どころ」を書き出したチラシを配布した。このチラシは受け取りやすいよう読みやすいように工夫した3つ折りで、毎年殆どの株主が受け取ってくれる。 
 
   株主総会では提案1件につき3分の制限時間の中、9名で趣旨説明を行った。その後の会場からの質問には毎年「公平に」指名すると言いながら、いきなり私たち提案株主が座るBブロックから立て続けに2名の推進者を指名するなどルール無視。推測だが、あらかじめ決まっていた人の隣の人を数土会長が間違えて指名したため隣同士2名に質問の機会を与えたのだろう。2番目に指名された女性は昨年、私の左後方におり、私たちの発言に口汚ないヤジを飛ばし続け、その上最後の指名者として脱原発参加者への罵詈雑言を大声でわめいた人物。昨年はヤジとそぐわないブルーの花柄のワンピースだったが今回はサーモンピンクのワンピースで養殖のサーモンが危険な餌で育てられ人間に害を引き起こしていることを連想してしまった。彼女は会長の正面、マイクの裏に陣取り、私たちの趣旨説明の間中、ブツブツと低い声で発言者をDisっていたがマイク係は注意しなかった。指名された質問者15名のうち脱原発の発言者はたった5名。 
 
   原発推進の発言者に共通なのは、放射能で死んだ人は一人もいない。除染は必要ない、朝日新聞「吉田調書」はデマである。菅直人が首相だったから原発事故は拡大した。同じ原稿を数人で持ち指名されたら読み上げるという方法のようで、これは昨年と同じ手法。以前、私たちもその手法を使ったことがある。ただ、私たちは質問をいくつか作り、自分で肉付けして発言するようにしていたが、緊張を強いられる場所では、読み上げられるよう文章を作成しておいた方が良いかも知れないと感じた。もちろん、既に読まれたものに関しては読まないことは当然である。彼らは原発の知識はもちろん、新聞も読んではいないので、自分の言葉で語ることができない、肉付けができないので底の浅さが直ぐに露呈してしまう。自信のなさを大声で叫ぶことで隠そうとしているのだと、今回靜かに聞いていて理解した。 
 
   数土会長、廣瀬会長は、原発推進の意見が出る度に「心強いご意見ありがとうございます」と何度も繰り返した。更に私たちへの質問にはまともに答えず、関係ない話を延々と繰り返したりするのに、質問なのか意見なのかも判然としない彼らの発言には、「こういうことでよろしいでしょうか?」など論点を整理してやり、担当取締役の回答が終わると「この回答でよろしいでしょうか?」とまでへり下る始末。ヘイトスピーチが規制されたため、在特会は外での活動ができなくなった。新手の総会屋としてデビューした右翼団体を東電は諸手を挙げて受け入れていいのか!数土会長、廣瀬社長の態度は取締役会で問題にならないのか?今年も総会反省会(正式名称「東電を反省させる会」)を共同開催し、その点を重点的に訊したいと思っている。 
 
  東電の個人株主は65万人。そのすべてに私たちの脱原発提案と400字の提案理由が届けられる。圧倒的多数は議決権行使書の賛否に記入せず白紙委任という無責任さ。原発保有の9電力で脱原発提案を行っているが、今年四国電力は議決権行使書に「会社提案に賛成で、株主提案に反対の場合」「会社提案に反対で株主提案に賛成の場合」と2色刷りの注意書きを同封するなど変化も見えてきている。あなたの近くにも9電力の株主はいるはず。是非原発保有の電力会社で脱原発提案がなされていることを知らせていただきたい。そして東電の株主には、来年の株主総会には万難を排して参加していただきたいと切に願っている。 
 
 
木村結 (東電株主代表訴訟 事務局長) 
 
脱原発・東電株主運動 
http://todenkabu.blog3.fc2.com 
 
■映画「日本と原発」はもうご覧になりましたか? 木村結 
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