2017年02月01日13時12分掲載  無料記事
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コラム

わが憧れのインド旅行 〜高額紙幣騒動、「天空の町」そしてダージリン〜 1 宇崎喜代美 (バンコク在住 通訳・コーディネーター) 

  インドといえば、いろいろなイメージがある。人口12億、百何十種類の民族がいて、公用語になっている文字は14種類、カースト制があり貧富の差が激しく、世界遺産的レベルの建物がいたるところにある。現在では教育が画期的で人類の頭脳と言いわれる人が数多く出ている。日本人とはかけ離れた、彫が深くまつ毛の長い大きな目、髭、シーク族のターバン。そして私にとってインドとは、ボリウッドダンスの国で、ものすごく惹かれる。私はダンスなんか絶対しないと思ったのにボリウッドダンスにはまった、その結果6年も踊っていた。最高に踊っていたころは一年に500時間ほどにもなった。 
 
   私が住んでいるタイでは、沢山のインド人が住み、今では私の友人の中にインド人も何人かいる。このタイ国でヨガに出会い、ボリウッドダンスに出会った。しかしなぜかタイ人にとってインド人はあまり好ましくない種族であるという印象を私は受けてきた。首都バンコクの中心街スクムビットにもインド人街がある。基本的に中国人と並び商売上手。身近なインド人を観察していると、商売人は非常にしたたかで、時にしたたかさを超えて、ずるがしこささえも感じる。絶対に謝らないし、自分の正当性を主張する論理は時として明らかに度を越していたりする。一般のタイ人はそういうインド人のしたたかさを敬遠して、一軒家やマンションオーナーの多くはインド人には貸したくないという。一方オーナーがインド人の場合修理等の経費を出ししぶる人がやたら多く評判が悪い。 でも私はインド映画の中に出てくるボリウッドダンス(ハリウッドのHをボンベイのBに変えたもので、独特の映画ダンス)が大好きでダンス留学も夢見ていたこともある。内心今でもチャンスがあれば一か月でもダンス留学したいなんてひそかに思い描いている。 とにかくインドはよくも悪しきもありとあらゆることが混在した興味深い国なのである。 
 
  そんなインドに夫と二人で小旅行に出かけることにした。自分の足でいろいろなところを歩き経験して感じてみたい。目的地は二か所、一つ目はインド北部にあるシッキム。昔はチベット系のシッキム王国。しかし今はインドに併合されている。もう一か所は、お茶で有名なダージリンである。ダージリンは世界遺産の線路幅60cmのToy Trainがある。それにぜひ乗ってみたい。この二か所をめざす旅で興味に満ちたインドをじかに触れ、私の中にあるインドやインド人に対する疑問や謎を解く、ドキドキワクワクの旅が始まった。 
 
  出発したのは11月9日早朝。JET AIRLINEの客室乗務員は黒のブラウス、黒のパンツ、ジャケットは山吹色のロング。皆首をくるくる回すように頭を振っていた。そうだインド人はイエスの時日本人のように縦に振ったりはしないのだ。見ていると、あの首の横振りがだんだんこっちにうつってくるような予感がした。ひとりの乗務員はピチッとしたユニフォームなのに三段に波打つウエストの持ち主、堂々としたあの太っ腹はさすがインドという印象だった。私がいた日本の航空会社にはいなかったキャラで何か文化的相違を感じた。 
 
   快適な飛行を続けいよいよニューデリー国際空港に到着。機上の窓から見た都会はひどいスモッグにおおわれている。北京に負けないスモッグだ。思わずここにいたら早死にするなと感じた。空港にいたインド人にこのスモッグはいつこうなのかと尋ねたところ、「何を当たり前なことを聞くのか」という態度だった。 
 
  空港ではまずアライバルビザ取得のカウンターに行くと、係官が居眠りしていた。それに一人しかいない。ほかの日本人もほとんど見かけなかった。以前より若干入国審査を厳しくしたのか日本人、とくにバックパッカーの姿は減っているようだ。イミグレと通関をすませ両替カウンターに行ってみた。ここで事件は発生した。 
 
  なにか閑散とした雰囲気が漂っている。よくよく近づいてみるとカウンターにOUT OF CASHの張り紙が出ている。ほかの両替カウンターも同じだという。信じられない。 
  空港で両替が出来なければタクシー拾ってホテルにも行けない。全くの想定外の事態だ。別のカウンターから手を振って私たちを呼んでいる人がいる。空港リムジンのカウンターだ。空港リムジンだから高い。しかし現金は1ルピーもない我々はクレジットカードでリムジンに乗るしかない。ここを脱出してホテルにチェックインして、そこで今後のことを考えよう。米ドルがあればホテルで両替もできるし何とかなるだろう。ところがホテルでも両替不可という。ようやく訊きだした事情はこうだった。 
 
  昨夜1000ルピーと500ルピー(日本円で1600円、800円、これが高額紙幣)が前触れもなく突然廃止になったというのである。それに代わる新札は銀行が閉まっていていつ手に出来るかわからないという。突然の断行に全ての人が戸惑っている。政府発表ではブラックマネーをあぶりだし不正ビジネスをやめさせるための決断というのである。しかしブラックマネーを蓄財した有力な勢力は当然当局者も抱き込んでいた筈だし、情報も漏れているに違いない。日々の暮らしに懸命な庶民の困惑ぶりは大変なものだ。急病者が出て病院に行ったが、高額の旧札二種は使えず治療も拒否された人が銀行前で抗議の焼身自殺を図ったというニュースもあった。 
 
 
宇崎喜代美 (バンコク在住 通訳・コーディネーター) 
 
 
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