2017年11月18日20時57分掲載  無料記事
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政治

野党共闘を考える 共産党幹部・植木俊雄氏に聞く 共産党はどのように共闘を決め、どのように進めてきたのか その1

  共産党に対する市民の眼差しがここ1〜2年で大きく変わってきたようだ。振り返ると、2014年2月の東京都知事選。安倍政権打倒を求める野党勢力は共産党が推した宇都宮健児候補と民主党が推した細川護熙候補に割れた。その結果、自民党が推薦した舛添要一候補の圧勝となった。舛添候補の得票率は宇都宮候補と細川候補の得票率をほぼ足し合わせた数だった。同じ野党支持者であっても宇都宮候補を推す人々と、細川候補を推す人々の間に大きな溝が生まれ、野党候補者一本化の難しさが浮き彫りとなった。あれから3年以上がたつ。共産党はそれまでの孤高のイメージを脱ぎ捨て、野党共闘に積極的に取り組む政党になっていた。共産党はいつ、どのように野党共闘の方針を決め、これまでどのように取り組んできたのだろうか。東京・代々木の日本共産党中央委員会を訪ね、共産党幹部の植木俊雄広報部長に話を聞いた。 
 
 
Q 共産党が野党共闘路線をいつどのように始めたのか、その経緯を教えていただけますか? 
 
植木俊雄・広報部長 
  野党共闘をすることになったのは安保法が〜私たちは「戦争法」と言っていますが〜強行可決された2015年9月19日のことでした。正確には19日の未明のことでしたが、安倍政権が数を頼みに強行採決することはほぼ確実、ということでその日に共産党は中央委員会を招集したんですよ。そこで野党共闘の方針を決定したんですね。中央委員会で決まった提案は安保法を強行採決した安倍政権を退場に追い込むことです。安保法廃止、立憲主義の回復を目標にした連合政権を実現する、と。野党連合ですね。で、具体的には1人区を中心にして選挙で野党が統一候補を擁立して勝利させる、と。こういう提案をその時にしたわけです。これが最初の提案です。確か19日の午後1時半くらいだったでしょうか。私たちは事前に準備していました。 
 
Q 具体的にはどなたが野党共闘のアイデアを主導されたんでしょうか? 
 
  中央委員会を開いて提案するのは幹部会ですけれども、幹部会で今言った中身を考え始めたのは志位(和夫)委員長でした。安保法の強行採決に反対という事で、8月末頃に国会周辺で20万人規模位の集会が盛り上がって来るということがありましたね。この大きな闘いの中で野党は共闘して闘って欲しい、という声が院外の市民の方々から広がってきました。そういう人たちの声にこたえないといけない、と思っていたんです。しかし、安倍政権はおそらく数を頼みに強行採決してくるだろう、と。そうなった場合に、どうやってこの盛り上がった力を生かしていこうか、ということを考えていけばこの方向しか、ないんじゃないか。そんなことで夏ごろから(選挙での)野党共闘について考え始めていたということですね。もちろん、国会の中で闘争をやっている最中ですから、その時点でまだ打ち出すわけにはいかなかったのです。国会の中では廃案に追い込む、という可能性を追求しながら、安保法が決定的になった時に、それではこの方向へ、と早くから構想としては始めていたですね。 
 
Q 2015年9月19日に召集された中央委員会で野党共闘はすぐに決定したんですか? 
 
  そうです。 
 
Q 中央委員会は何人ぐらいなんでしょう。それと幹部会は? 
 
  中央委員会は若干人数は時どきで変わりますが、委員はおよそ164人です。みんなすんなりと提案に賛成しました。この方向しかない、と。安倍政権の数を頼みにした安保法を廃止し、立憲主義を回復できる現実的な見通しがある、と。幹部会は59人です。私もその一員です。 
 
Q 中央委員会は地方のリーダーのような方々が集まっているんですか? 
 
  共産党には全国大会という党の大本の方針を決める大会がありまして、この大会から大会までの間の決定機関が中央委員会です。全国大会に次ぐ決定機関です。ですから構成メンバーは47都道府県から。共産党の地方の組織がありますから、そこの責任者です。と同時に国会や地方議会で重要な役割を果たしている議員の方々も構成に入っています。また、すべてということではありませんが、全国にある行政区〜「地区委員会」と私たちは呼んでいますが〜この行政区の中でも将来性のある若い方たちも大いに登用していこう、と。中央委員会はそれらの人々から構成されています。国会、および都道府県全体の中核にいる人たちを中央委員として構成しているのです。 
 
Q 共産党が野党共闘を考え始めたのは、この時からだったんですか?あるいは2014年の都知事選の敗北の時の反省みたいなことがきっかけだったりしたんですか? 
 
植木俊雄・広報部長 
  きっかけは、安保法ですよ。野党共闘は単なる反自民かそうではないか、という抽象的な話ではありません。やはり、国政や地方政治の基本問題での一致点にもとづいて共闘していく、ということです。政策の一致ということが基本前提であって、政党の組み合わせによる一致ではないのです。政策を基本とした共闘、というのが基本的な考え方ですね。 
 
  ですから2014年の都知事選の前で言えば、社民・共産、総評、それから民主団体も入れて革新自治体と言われるようなところで革新市長を立てて戦う、ということをずっとやってきたわけです。単なる政党の組み合わせによる共闘ではなくて、政策一致による共闘です。これが共闘の基本原則なんです。今度の安保法のことに関して言えば、法案が通ってしまったからそれでいいよ、というわけにはいかない。非常に重大な、深刻な問題がある。国会審議でも明らかになったように安倍政権が提出した安保法は日本が攻められてもいない状況のもとでも海外でアメリカの戦争に参加する、ということです。集団的自衛権の行使は限定的だ、とは言っているけれども安倍政権はそれを推進しよう、と言うわけです。戦後日本が憲法9条で国是としてきた海外での戦争はしない、海外の戦闘地域に自衛隊は派遣しない、そして武力行使はしない、という自民党自身も積み上げてきた憲法解釈を一内閣の判断によって変えて、こういう法案を強行する、というのはまさに日本国民を深刻な危険にさらしていくものになります。しかもそのプロセスは立憲主義を壊すやり方で進めていったわけです。そういう意味で言えば、立憲主義を破壊するということは独裁主義に道を開くという事です。安保法の廃止と立憲主義の回復はないがしろにできない、と。これが1点ですね。 
 
  で、もう一つは安保法を強行した自民・公明の多数と言うのはもともと小選挙区を基盤とした「虚構の多数」である、と考えています。したがって野党が共闘することで、安倍政権を支えている自公勢力を少数に追い込むことはできる。その点で考え方の一致がある以上、大いにこの方向で進めましょう、と。これが我々の訴えた基本内容だったんですね。 
 
Q 野党共闘すれば勝てる、と 
 
  そうです。安保法反対を望んだ人は世論調査を見ても6割を超えていました。しかも、どうかな・・・と思っている人で、十分審議をするべきだ、と言う人を入れると8割を超えている、という状況でした。この力関係を見つめていくなら「虚構の多数」を作っている小選挙区で野党が一致して闘うならば野党は勝利しうる、ということです。 
 
  安保法反対で立ち上がった人たちですが、2014年に集団的自衛権行使を可能とする自公のあいだでの合意がありましたね。あの時の閣議決定による解釈改憲を許したら日本が戦争する国になる、という風に感じ始めた人々がいました。ですから、かつて労働戦線を巡って分裂した、しないという深刻な対立があった人たちが過去のいきがかりを超えて共闘しないとだめだ、ということになったんです。(※労組「連合」の中の左派に位置する)総評系、旧総評系の人たち。その後、全労連ということで立ち上がった人たち。これらの労組の人たちがナショナルセンターの違いを超えて、憲法9条を破壊する安保法には反対しよう、とともに立ち上がりました。自公政権で集団的自衛権の行使容認の閣議決定が行われたのが2014年7月でしたが、その年の暮れに、これらの労組の人々らが「総がかり行動実行委員会」というのを作って一致したわけですね。ここが決定的だったのです。これは歴史的なことです。双方のリーダーが動いた、ということですね。それと、それを支える人たちが急速に広がっていったのです。これは非常に大きなことですよ、戦後の中でも。皆さんあまり言わないんだけれども。 
  院外での統一戦線的な団結や共闘、というのは集団的自衛権を可能にする閣議決定に反対する闘いの中から生まれた、ということですね。確か政治学者の中野晃一さんが巧いこと言ってましたね。敷布団と掛布団と。敷布団(労組の連携)があったからこそ、掛布団(政党の共闘)もふわっとなるんだ、とか。重層的な共闘がうまれたけれども、その基礎になっているのは敷布団だと。 
 
Q 政党を支える労組が動いて「総がかり行動実行委員会」が生まれた、ということですが、ナショナルセンターの「連合」全体にとって総がかり行動実行委員会が生まれた意味をどうご覧になりますか?場違いな質問かもしれませんが。 
 
  連合の方々自身が言っているように、連合の基幹産業の意識状況を見ても、連合がずっと続けてきた民主党(民進党)の一党支持、というやり方には限界が来ているのだと思います。支持政党の状況が変わってきているのでしょう。(労組のナショナルセンターが)一党単独の支持政党のもとに政治を動かしていくというのが実態として限界にきているのだと思います。 
 
Q 労組と政党の1対一対応と言うのが崩れつつある、と。 
 
  労働組合が特定の政党を支持する、というやり方でやってきた運営が限界に来ている、と。 
 
(つづく) 
 
聞き手 
村上良太 
 
 
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