2020年05月30日21時05分掲載  無料記事
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コラム

警官による在日クルド人の扱いと都知事選 そしてミネアポリス

  前回、ミネソタ州ミネアポリスで黒人が白人警官に路上で制圧され、殺されるシーンの映像がソースシャルメディアで広がって抗議だけでなく、暴動に発展したことについて書きました。そして歴史的に白人と黒人の人種対立が先鋭化すると、アメリカの場合、民主党支持だった白人労働者層が共和党支持に乗り換える傾向があることを書きました。私の仮説ですが、この事件の背景には大統領選を共和党に有利に運びたい人々の意志が、明白な共謀がなくとも、未必の故意のような形で働いたのではなかろうか、ということです。もし興味のあるかたは以下のリンクに前の記事があります。 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005292101555 
  一方、日本でも渋谷でクルド人が警察官によって威圧的に扱われたということで、それに抗議する人々が警察署前に集まっていましたが、その中の人が逮捕される事件に発展していると聞きます。ソーシャルメディアに上がった映像を見ただけでは、実際には事の全貌は正直よくわかりません。ただ、この事件でもクルド人が警察官に拘束されているシーンが撮影され、ソーシャルメディアで広まっています。 
 
  この事件も、どこかミネアポリスのケースに似た印象を多くの人に与えていると思います。米国と同様に、ここで人種対立的な構図になってしまうと、おそらく都知事選では右翼的な思想性の現職・小池百合子氏の再選に有利になることが考えられます。東京都民は極右思想の石原慎太郎氏を4回連続で都知事に当選させてきました。石原氏の中国などに対するタカ派的発言を都民の有権者の多くは支持してきたのです。そのことを考えると、発端がクルド人であれ、中国人であれ、この種の事件がメディアで取り上げられ、抗議する人々が暴動しているようにフレームを作られると、さらに都知事選の投票日までこうした事件が多発すれば、小池都知事の再選の可能性がメディアの拡声器によって弾みがつき、一段と高まると思います。アメリカやフランスのような暴動に発展していくと、フランスでマリーヌ・ルペン氏の支持が高まり、アメリカでトランプ大統領への支持が高まるように、日本でも安倍首相や小池都知事の支持が高まる可能性があります。警察が自治体や行政府の指揮下にあることを考えると、しかけられる可能性も含めて、冷静になる必要があると思います。 
 
 
※黒人死亡事件への抗議広がる デモ隊がCNN本社を襲撃(朝日) 
https://www.asahi.com/articles/ASN5Z77CRN5ZUHBI00N.html?ref=tw_asahi 
  この記事の中のCNN襲撃写真みたいなシーンはマスメディアの格好のネタになり、こうしたシーンが積み上げられると、選挙で右翼政治家に票が集まることになる。 
 
 
 
■ラジ・リ監督の傑作映画「レ・ミゼラブル」 〜郊外をめぐる2つの結末〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202001211933302 
■私はなぜ刑務所の民営化と闘ってきたか  元受刑囚で「刑務所法律ニュース」のジャーナリストに聞く  Interview : Alex Friedmann , Managing Editor of "Prison Legal News." 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201612081813454 
■白人警官による黒人の殺人、暴動と米大統領選 〜人種対立が深まると優位に立てる共和党〜 2012年夏の右翼の尖閣諸島上陸と自民党の復活を想起 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005292101555 
■ミネアポリスの警官による黒人の殺害、暴動 そしてバイデン大統領候補の声明 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005311405150 
■ミネアポリスで黒人が警察官に衆人環視の中、殺される 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005291518325 
■警官による在日クルド人の扱いと都知事選 そしてミネアポリス 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005302105156 


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