2023年03月10日13時07分掲載  無料記事
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検証・メディア

安倍時代の残照 真実追及への執念の激減 〜下山事件以来の解決なき迷宮入り事件群〜

  これは自分への反省も含めて書いていますが、この10年間、大半は安倍政権のもとでテレビの後退や週刊誌・総合誌の減少などを背景に、真相を知りたいと思うことでもなかなか知ることができなくなってきました。最近、変わったのは安倍首相の暗殺後に旧統一教会に関する事実が次々とジャーナリストたちから報じられるようになったことです。しかし、まだまだ真実探求への情熱はかつてと比べると弱弱しいものです。 
 
  東京新聞が「「戦後の知性主義が日本を破壊した」自宅にメモ 宮台真司さん襲撃事件 死亡の41歳男書類送検」という記事を出しました。 
 
  「捜査1課によると、自宅からメモ帳3冊が見つかり、「学者は一番上にきてはいけない人種」「戦後の知性主義が日本を破壊した」「大学教師なら人に偉そうに説教することを目的にしたらいけない」との走り書きが残されていた。2008年ごろに書いたとみられるが、宮台さんら特定の人物の名前はなく、犯行動機との関連は不明という。」 
 
  これ自体はこの情報が発表される前よりは格段に良いと思うのですが、なんとなくここで幕引きになってしまう嫌な印象を得ます。犯行に及んだ人間像をもっと克明に理解したいと思う人は多いでしょう。たとえば、宮台氏にそんな印象を持ったとしても、あえて犯行に及んだ動機は何だったのか?そのヒントはメモに残されていないのか。この人はいわゆる「ネトウヨ」だったのでしょうか?どんな毎日を送っていたのか。真実に関心のある人なら、とうてい、この程度の記者発表の情報で満足できないでしょう。もっとそこに実在した人間像を描き出してほしい。これだけ世相に不安と暗い思いを与えた重大事件なのだから、犯人が自殺したからと言ってそれで解決では絶対にない※。 
 
  私が思い出すのは、都内の図書館で300冊以上の「アンネの日記」が破られた事件です。確か2014年頃。犯人は36歳で無職と書かれていましたが、精神状態が不安定とかで、その後は私の知る限り犯人の動機や犯行に及んだ深層の記事を読んだ記憶がないのです。300冊も同じ本を破っていくのは、並々ならぬ執念であり政治的動機がなかったとは考えにくいものがあります。折しもネトウヨをバックにつけて第二次安倍政権が始まり、長期化して行く頃の出来事でした。 
 
※逮捕の30代男 「アンネの日記破る」関与の供述も(MX) 
https://www.youtube.com/watch?v=c3Ycy5524NM 
 
  かつてなら週刊誌、総合誌がもっとあって、こうしたテーマをルポライターやジャーナリストが追いかけていたものです。駅前の書店で、本の見出しを見て面白そうだったら買っていました。今とは何もかも大違いです。駅前にはノンフィクション書籍や雑誌のコーナーどころか、もう書店もありません。私は今日の文化は安倍時代に侵されて、変質していると見えます。真相を知りたいと言うこだわりが乏しいと思えてなりません。 
 
 
村上良太 
 
 
■「第三の敗戦」 報道のグローバル化がNHKの怠惰を埋めるかもしれない 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202303071529362 
 
  今後は、以下のようなテーマも、BBCやDWなどの外国の放送局に企画を持ち込めば実現できるかもしれません。国民が関心を持ったテーマでもNHKが作らなかったものは、外国放送局にとっては日本進出のきっかけとなりますし、視聴者のシェアの拡大には大きくつなげることができるチャンスとなるのです。NHKにできないものは、BBCスぺやDWスぺに期待したいと思います。伊藤詩織さんの事件も、ジャニー喜多川の件もそうでした。 
 
 
■ポスト安倍時代の「Nスぺ」に期待したい特集3題 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201707142227515 
 
  以下の安倍首相三殺直後のNスぺはNHKが日本国民をミスリードした歴史的な失敗作。NHKが存在理由があるのか、視聴者に疑問を投げかける番組となりました。10年近く安倍時代が続いた結果、もはやまともな政治ジャーナリズムの番組制作能力が不可逆に劣化しているのではないか、ということです。これはH3ロケット打ち上げの失敗によく似ています。この拙速のつくりと事実のミスリードはなぜ起きたのか?今後はこうした重要なテーマは、BBCかニューヨークタイムズ、Viceなどに報じてもらいたいものです。 
 かつて私は、NHKの番組ラインナップを決める編成部に若手の安倍首相シンパの右翼的職員が入ってきて制作体制を覆しているとあるNHK局員から聞いたことがあります。こうした編成部の職員たちが、以前、改憲推進団体の日本会議関係者だった石原進NHK経営委員長と連動して、人事と予算と番組編成権を握り、NHKを根本から作り替えた、という噂を耳にしたことがありました。制作には優秀な人も真実を追求したいと思っている職員もたくさんいるのですが、編成で企画が通らなかったら、それまでなのです。これなどは実際のところ、今、どうなのでしょうか?ほとんどの人が視聴の料金を取られているわけですから、噂の真偽も含めて、今後、日本人の未来のためにも詳細な調査が必要です。 
 
 
※宮台真司氏襲撃事件 被疑者送検を受けて(Videonews.com) 
https://www.youtube.com/watch?v=_cje6xdro9c 
  宮台氏の分析は、非常に興味深い。とくに1996年〜97年にかけて若者たちのコミュニケーションが一変した、ということである。 
 
 
■NHKスペシャルとred herring (燻製ニシン) 〜核心から人々の目をそらさせる修辞学〜http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202208251825284 
 
■国会で石原進NHK経営委員長らを参考人招致  報道の自由への侵害行為への追及で 11日NHK西門前でアピール行動を予定する「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201910091754443 
 
■ワセダクロニクルのシンポジウム「日本の『共犯者たち』は誰だ?  権力と『マスコミ』」〜ドキュメンタリー映画「共犯者たち」を見て〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201905032304355 


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