2016年04月03日21時22分掲載  無料記事
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コラム

済州4・3慰霊祭 伊地知紀子(大阪市立大学教授)

2016年4月3日、済州4・3平和公園での式典に参加したアボジ(父)とトンセン(末息子)の写真を、高誠晩くんが送ってくれました。 
 
「アボジは、4・3(済州島4・3事件)で父を目の前で討伐隊に殺され、兄は村の青年たちと集められ討伐隊に射殺されたのでした。姉は、討伐隊の銃が足を貫通し、その傷のため幼い娘を残して亡くなりました。17歳だったアボジは村の山手の洞窟に隠れてくらし、その後生きるために海兵隊へ入ったのでした。 
 
除隊後、アボジは父が殺された現場である畑で、妻とともに作物を育て、収穫し、6人の子どもを育て、祭祀を執り行ってきました。 
 
弟の明珍が、父を今日の式典に連れていってくれました。石碑に刻まれたアボジのお父さん、お兄さん、お姉さんを前に泣くアボジの写真。4・3にかかるいろんなことを私に語ってくれたアボジ。けれど、いつまでも語り尽くせないのだと、聞きながら思うのです。 
 
  この写真に写っている弟の明珍が、アボジの姉は妊娠しているときに撃たれ、アボジの看護のかいなく亡くなったと書き加えてくれました。」 
 
 
伊地知紀子 (大阪市立大学教授 文学研究科) 
 
 
※済州島4・3事件 
 「1948年4月3日に在朝鮮アメリカ陸軍司令部軍政庁支配下にある南朝鮮(現在の大韓民国)の済州島で起こった島民の蜂起にともない、南朝鮮国防警備隊、韓国軍、韓国警察、朝鮮半島本土の右翼青年団などが1954年9月21日までの期間に引き起こした一連の島民虐殺事件を指す」(ウィキペディア) 
 
 
 
■伊地知 紀子教授の著書には以下のものがあります。 
 
『消されたマッコリ。-朝鮮・家醸酒(カヤンジュ)文化を今に受け継ぐ-』社会評論社 
『在日朝鮮人の名前』明石書店 
『生活世界の創造と実践−韓国・済州島の生活誌から−』御茶の水書房 
 
■金時鐘先生「大佛次郎賞」受賞のお祝い会 伊地知紀子(大阪市立大学教授) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201603140047121 
■済州島からの訪問者 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201601302249066 
■月命日コラム 伊地知紀子 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201601241513520 
■共著「再考・アジアの女性をどう描くか」('Rethinking Representations of Asian Women') 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201603191703436 


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