2016年07月03日02時36分掲載
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文化
音楽にかける青春 岩﨑宙平さん(28) プラハで指揮者デビュー Chuhei Iwasaki
今、もっとも生き生きとした日本の指揮者の一人がプラハで活躍中の岩﨑宙平(ちゅうへい 28)氏です。プラハ音楽院に留学後、ドヴォルジャークやショスタコーヴィッチの曲を振って指揮者デビュー。作曲家としても活動しており、自作のシンフォニーも指揮しています。将来、大きな期待がかけられる人でしょう。今回、その岩崎さんに、プラハでの音楽生活についてお聞きしました。
以下が自作のシンフォニーをプラハで指揮する岩﨑氏です。生きのいい音楽で、指揮も溌剌として聴衆を魅了しています。
https://www.youtube.com/watch?v=0-KrwVcGtFs
Q プラハでよく出かける場所とか、公園などはあるのでしょうか?
岩﨑 古本屋で珍しい楽譜を探すのが好きです。あとはstromovka公園に通うのも好きです。
Q チェコの魅力を教えてください。
岩﨑 芸術的に豊かな国です。また美しい風景も数多く、インスピレーションに満ちています。
Q そもそも音楽を始められたきっかけはどのようなことだったんでしょう?
岩﨑 4歳の時にたまたまN 響の演奏会をテレビでみたのがきっかけでヴァイオリンをひこうと思いました。半年親にねだってヴァイオリン教室に入れてもらいました。
Q 音楽家になろうと決心したきっかけはどのような経験でしたか?
岩﨑 12歳の時に当時のヴァイオリンの吉野薫先生に桐朋女子高音楽科を目指すよう勧められたのがきっかけです。それまでは特に何も考えていませんでした。桐朋女子高音楽科にてヴァイオリンを学び、その後チェコに渡りました。
Q 指揮の勉強をしようと思われたのはどのような経緯からですか?
岩﨑 小さい頃から夢ではあったのですが、実際にはじめたのはプラハ音楽院においてです。ヴァイオリン科と作曲科に受かったのでどうせなら指揮も学ぼうと考えました。実際、チェコに留学した時点ではヴァイオリン奏者志望だったので指揮者ではなかったのですが、よい先生や同僚にめぐまれ結果的には大変良かったと思っています。チェコは良くも悪くもフレキシブルなところがあり、様々なアイデアを実行することが可能です。一例ですが私はプロとして活動する以前は学友とオーケストラを作って毎月演奏会を開催し、実地経験をつむことができました。またチェコフィルなど一流の楽団の演奏会を音楽学生は安値で聴くことが可能で、芸術面での成長に役立ちました。
Q プラハ音楽院の最初の印象はどのようなものだったのでしょうか?
岩﨑 腕が立つ人が多く、大変なところに来たなと思いました。もっとも桐朋女子高も腕が立つ人ばかりでしたが……
Q クラスメートたちはどんな人たちでしたか?
岩﨑 エキセントリックな方が多かったですね。基本的に親切な方ばかりで、チェコ語がまだ下手だった時分に大変お世話になりました。
Q 先生はどんな方々でしたでしょうか?とくに深く師事した先生がいらっしゃったら教えていただけませんか?どんなことを学んだのでしょうか?
岩﨑 指揮は色々な先生に習ったのですが、ミリアム・ニェムツォヴァー先生という方に最初に教えて頂きました。オペラのスペシャリストでした。またヴァイオリンを元読売日本交響楽団のコンサートマスターだったフランティシェク・ポスピーシル先生という方に習ったのですが、先生は当時現在私が指導しているプラハ音楽院室内オーケストラの指揮者をされており、ヴァイオリンだけでなく指揮者としてもオーケストラ指導のやり方を教えて頂きました。
Q 将来、どのように音楽活動をしていきたいですか?
岩﨑 マルティヌー以降のチェコ近現代音楽を演奏する機会を増やしたいと思っています。また伊福部作品や芥川作品をチェコで取り上げる活動もさらに拡大していきたい所存です。プロオケとの演奏会も増えつつあるので、うまく繋がっていけばよいのですが……また現在プラハ音楽院にてオーケストラ指導にあたっており、これも長く続けられればと思っています。
Q マルティヌー以降のチェコ近現代音楽について、少し教えていただけませんか? その魅力はどのようなものなんでしょうか?
岩﨑 マルティヌーは最近ようやく知られつつあるチェコの作曲家で、管弦楽法に優れ、色彩豊かな作品を数多く残しています。交響曲を6つ作曲したのですが、どれも素晴らしい作品です。来年5月にヤナーチェクフイルと第1番を演奏する予定なので楽しみです。
チェコあるいはチェコスロバキア近現代は他の東欧諸国と似たような感じで旧共産党政権が西側の12音技法以降のセリー音楽などの音楽手法を拒んだため、新古典主義的な作品が多いです。チェコ人の諧謔的な性格が音になったような作品が多く、個人的に好きなものが多いです。例をあげるとヴィクトル・カラビスのヴァイオリン協奏曲1番やエフジェン・スホニュの弦楽セレナーデ、あるいはヴァーツラフ・トローヤンの映画音楽、またイルジー・ゲムロット(私の作曲の先生です)のアメリカ序曲は非常に気に入っています。
Q 「プロとして活動する以前は学友とオーケストラを作って毎月演奏会を開催し、実地経験をつむことができた」ということですが、具体的にどのように準備をしたり、実現したりされたのでしょうか?
岩﨑 2年生の時に学友とオーケストラ 'filharmonicky orchestr Iwasaki'を結成し、チェコ国内のオーケストラコンクールに出場しました。結果我々以外の出場楽団が全部審査を辞退したため自動的に優勝したのですが、せっかく作ったし、ということでチェコ各地の博物館や教会にオファーをだし、チェコ音楽博物館ホールやドボルザーク博物館やドボルザークの生家、ハヴェル元大統領基金の式典や地方の音楽祭などに出演しました。非常に楽しい時間でした。メンバーがみんな卒業した現在も年に数回集まって演奏会を行っています。
Q 今後の演奏会などのご予定は?
岩﨑 来シーズンは映画音楽オーケストラやプラハ音楽院オーケストラの定期演奏会のほか、ヤナーチェクフィル等に客演する予定です。
■Pavel Trojanの曲を指揮したとき(2014年)
https://www.youtube.com/watch?v=1TDUdqYvMdY
※岩﨑宙平(1987年 東京生まれ)
桐朋学園女子高等学校ヴァイオリン科を経て、チェコ国立プラハ音楽院指揮科、ヴァイオリン科および作曲科で学ぶ。さらにチェコ国立芸術アカデミー指揮科を卒業。作曲はイルジー・ゲムロット氏に、指揮はミリアム・二エムツォヴァー、ミロスラフ・コシュラー、ヒネク・ファルカチュ、トマーシュ・コウトニーク、レオシュ・スヴァーロフスキーらに師事した。
インタビュー
村上良太
■音楽にかける青春 岩﨑宙平さん(28) その2 チェコで若者たちに音楽を教える
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201610171224141
■音楽にかける青春 シチリアの音楽家、ジオリ(Gioli) クラブミュージックとクラシックの融合を目指す19歳 最初のアルバム‘Mechanical Heart’の発売は来月
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201604040323301
■音楽にかける青春 プラハの春・国際クラリネットコンクールで優勝した韓国の Sang Yoon Kim 氏
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201508041229142
■音楽にかける青春 アンナ・パウロヴァー(クラリネット奏者) ’Now I cannot imagine my life without clarinet’ Anna Paulova
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■音楽にかける青春 アコーディオン奏者、ミラン・ルジェハークさん(21) 「アコーディオンは大きな可能性を秘めた未開拓の楽器」 'Accordion is an instrument with a great potential and with possibilities' (Milan Rehak)
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■音楽にかける青春 バイオリン奏者 ルドミラ・パヴロヴァー Ludmila Pavlova 人は演奏している音楽とともに生きていかなくてはならないことを知りました
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201508200021584
■音楽にかける青春 フランク・ルッソ(Franck Russo 29歳)「プラハの春」に入賞 クラシックに限らず幅広い音楽に挑戦中のパリの新進演奏家 J'ai toujours aime les projets originaux et m'exprimer de toutes les manieres possibles. (Franck Russo)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201509271525190
■クラリネットの思い出 野崎剛史(クラリネット奏者)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201509060053480
■ジャズとクラリネット 滝川雅弘(クラリネット奏者)
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