2023年09月14日18時55分掲載  無料記事
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検証・メディア

NHKと旧東独・東欧の放送局の比較史の研究のために  〜NHK瓦解のプロセスとその背後の要因を歴史的に解明する国際プロジェクトを始動〜

  NHKの放送が政府の広報機関と化した今、未来人のためにその過程と力学の歴史研究を開始する時期になりつつあります。まず、その検証の参考にするために、旧東欧のTVについて研究した先行研究書がいくつも世界で出版されています。若い人たちや学生たちは、こうした研究をして、どこで間違ったのかを調査して、しっかりと理解していただきたく思っています。これはイデオロギーには関せず、ジャーナリズムのあり方がテーマです。 
 
 
  多分、なぜ旧社会主義圏とNHKが・・・?と思われる方もいるかもしれませんが、安倍政権がソ連型の統治を行うであろうことを私は第二次安倍政権が始まってすぐに論じましたし、実際にメディアが政権に統制され、経済は衰退し、政治は腐敗まみれになりました。これは日本のソ連化と言っても過言ではないと思います。統計のごまかしや公文書の組織的な改竄・廃棄もそうです。そして、東欧のメディアもソ連のメディアに追随していました。 
 
 
 
 さて、NHKの旧東欧の放送局との比較史的研究で1つの参考になるのが、英国の大学の研究サイト「Screening Socialism」です。東欧圏のメディアについて研究を紹介しています。NHKとどこが同じで、どこが違うのかを見ていくことで研究が深められるはずです。Burton Paulu著『Radio and television broadcastinf in eastern Europe』という本やHeather L.Gumbert著『Envisioning Socialism』など、多数の参考文献が紹介されています。いずれは日本の研究者が欧州の研究者とNHKの問題を国際的に論じる日が来るはずです。 
 
https://www.lboro.ac.uk/subjects/communication-media/research/research-projects/screening-socialism/television-histories/tvinthegdr/ 
 
  今後、解明されるべき事項ー 
 
 
  ●NHKの組織と人脈の解明 
 
 ●NHK職員たちの社会心理学的研究 
 
 ●NHKと自民党との関係の解明 
 
 ●NHKにおける思考の型の解明 
  (報道・編集における考え方の解明) 
 
 ●NHKの経済面における解明 
 
 ●NHKにおける番組の変遷 
   どのような機序で番組が新旧で改編されるのか。 
  (ニュース、選挙報道、ドキュメンタリー他) 
 
 ●NHKとプロパガンダ 
 
 ●NHKとワシントンD.C. および情報機関の関係 
 
 
  日本の民主主義の崩壊の根っこにメディアの腐敗があることは、最近、大衆レベルで知れ渡ってきたところです。その責任は極めて重いものがあります。この数年で、人々のメディア観は激変しました。メディアと言えば、民主主義を守るものという常識が失われ、むしろ、民主主義を破壊する装置に転化したと多くの人々が考えるようになったのです。そして、その先の未来にはオーウェルの小説で描かれた「情報省」のような情報統制機関と化す可能性が濃厚です。それはどのようなプロセスで起きたのか?メディア産業の人びとの心理はどうだったのか?そして、その人事に何があったのか?などなど、多面的に見ていく必要があるでしょう。公共放送のプロパガンダにはすでに世界で研究の積み上げがあります。そこで洋の東西で研究者同士で交流を深めつつ効果的な対策を国際社会の力を借りつつ練っていく必要があります。NHKや日本のメディアに対する大衆の目が変わった背景には、報道のグローバリゼーションがあり、BBCなどの海外メディアによる日本国内問題の報道によって、これまで日本の「一流」メディアで何が報じられなかったのかがいよいよ明確になってきて、メディア漬けによって起きていたプロパガンダの洗脳から解き放たれる人々が増えていることです。 
 
 
   このようなことを記さなくてはならないのはとても残念です。というのも私はTVが好きだったですし、NHKについてもかつては敬意を払っていた、ということなのです。NHKと言えば私の思春期の頃は佐々木昭一郎ディレクターの『四季・ユートピアノ』という初々しい作品など、ドキドキするような名作をたくさん見て育ちました。それだけに、安倍政権ごときであっという間に伝統が壊されてしまったことに驚愕したのです。戦後の青春ドラマでよくあったように、不当な権力にはみんなで徒党を組んで立ち向かって最後に勝利するのではなかったのか、と。戦後、築いてきたものは蜃気楼だったのだろうか、と。 
 
 
  私が日刊ベリタに寄稿し始めた初期には「TV制作者シリーズ」というインタビューの連続企画をやっていたほどだったんです。それは民主党政権の頃で、当時は記者クラブにフリー記者が入れるようになり始め、非常に明るい希望を持っていました。ところが、3年もたつと第二次安倍政権が誕生するとともに、メディアにも反動の時代が訪れたのです。安倍首相は2001年の介入で味をしめた政治的圧力で、NHKをトップの人事を入れ替えることで180度と言ってもいいくらい、性格を変えてしまいました。そして10年以上が過ぎ、政府広報化したNHKにもはや自浄を期待できる時期は過ぎ去りました。それは起こらなかったのです。これから様々な証拠を集めながら、世界のメディア歴史学者・メディア研究者・哲学者・社会学者らとNHKをめぐる討議を進めていきたく思っています。そして必ずやNHKをもと以上に素晴らしい放送局に戻すために小さな一歩であっても貢献したく思うものです。ぜひとも皆様のお力添えをお願いします。 
 
 
 
 
村上良太 
 
 
 
■「プラハの春」のドゥプチェク第一書記と2009年の鳩山首相 〜戦車なくして粉砕された「人間の顔をした資本主義」〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202308202135420 
 
■米戦時情報局による対日勝利後の政策策定とマンスフィールド研修 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202307211935305 
 
■■国会パブリックビューイングを見に行く 3  政府統計不正問題 緊急街頭上映(新宿駅西口地下) 2019年2月16日 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201902192219212 
 
■国会パブリックビューイングを見に行く  その2 〜国会を市民に『見せる』(可視化)から、市民が国会を『見る』(監視)に〜 
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■国会パブリックビューイングを見に行く 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201902062355103 
 
■ジェローム・カラベル(米社会学者)「トランプ主義は生き残る」 〜アメリカの民主党と共和党の支持層の逆転現象〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202105090128010 
 
■日仏会館シンポジウム「イマージュと権力 〜あるいはメディアの織物〜」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201905190344430 
 
■ナショナリズムの台頭の真の原因は欧州連合本部にある ロビイ活動を監視するCorporate Europe Observatoryの ケネス・ハー氏 Kenneth Haar 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201702070312142 
 
■私はなぜ刑務所の民営化と闘ってきたか  元受刑囚で「刑務所法律ニュース」のジャーナリストに聞く  Interview : Alex Friedmann , Managing Editor of "Prison Legal News." 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201612081813454 
 
■PARC新作DVD上映会&トーク 『甘いバナナの苦い現実』   鶴見良行氏の「バナナと日本人」から約40年、フィリピン・ミンダナオ島のバナナ農民たちは今? 
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■日本の大メディアによる、フランスの年金改悪反対デモの伝え方  朝日新聞もNHKもデモへの冷笑的視点で描いてきた 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202001202020581 
 
■フランスの年金制度改革反対の最前線にAttacの女性たち〜替え歌とダンスで盛り上げ市民100万人単位の動員の起爆剤となる 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202303152318463 
 
■現代日本の「凡庸な悪」  NHK独立検証委員会の設置を 
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