今年12月にパリで開催される国連気候変動パリ会議(COP21)。フランスの環境大臣、セゴレヌ・ロワイヤル氏は様々なメッセージを出している所です。代替エネルギーの開発の必要性もその1つ。機を同じくしてローマ教皇が先進国は「脱成長」(デクロワッサンス)を掲げて南の途上国と連携して環境対策に取り組む必要があると声明を出したばかりです。COP21では2025年あるいは2030年までの温室効果ガスの排出量の目標基準値を定めることになります。
そんな中、環境問題を巡って、フランスのテレビの女性政治家同士の一騎打ちの論戦を見ました。ナタリー・コシュースコ=モリゼ(国民運動連合=UMP) V.S. セゴレヌ・ロワイヤル(社会党=PS)。女性政治家同士の激しい論戦、日本であまり見られないものです。ロワイヤル氏は現職の環境大臣、コシュースコ=モリゼ氏は前・環境大臣。論戦が行われたのは去年の10月です。興味深かったのは原発大国フランスの行方です。
ロワイヤル氏はオランド政権の環境大臣なので、オランド大統領の政策を踏み越えて発言することはできません。オランド大統領は2012年の大統領選で原発を減らす方針を掲げましたが、現在の電力の原発依存率75%を2025年に50%にすることでした。むしろ2011年の社会党予備選でオランド大統領の対抗馬だった女性党首マルティーヌ・オブリ氏の方が撤廃という強い目標を掲げていました。猶予期間を20年〜30年に見積もって原発をゼロにするのがオブリ氏の公約でした。一方、オランド候補が掲げた2025年の50%という数字はその先にどうするのか見えない、ということでオランド大統領の曖昧政策である、と批判されていたものです。
コシュースコ=モリゼ「あなた原発依存率を2025年までに現在の75%から50%に減らすと言うなら、2025年までに具体的にいくつ原発を廃炉にするのか。あと11年よ。明日のことでしょ」
ロワイヤル「私たちは原発依存率の上限を設定したわけです。今、新しい原発をフラマンヴィルで作っていますが、その分差し引きで廃炉にする原発もありますよ」
コシュースコ=モリゼ「今、75%あるのよ・・・」
ロワイヤル「自分で計算したらどうよ」
コシュースコ=モリゼ氏の突っ込みに、ロワイヤル氏は具体的な数値に言及しませんでしたが、なかなかうまく切り返していたと思います。依存率の削減は%の問題であって、必ずしも廃炉する数のことではないということなのでしょう。失業率を下げることが要請されている社会党にとっては原発依存率の低下によって生まれうる失業者をいかに代替エネルギー産業で雇用するか、これは大きな課題のはずです。
この一騎打ちの論戦で司会もまた女性一人が担当していました。40分のこの論戦を国民戦線(FN)の女性党首、マリーヌ・ルペン氏もまたテレビで見ていたのでしょうか。いずれもフランス大統領の座を狙う政治家と目されています。
女性が環境大臣をつとめるというのは意味深長に思えました。環境の延長には戦争の問題や兵器・核兵器の問題もまたあるに違いありません。
*現在、国民連合運動は共和党に改称されています。
■論戦の録画
https://www.youtube.com/watch?v=U5SYhWnve98
■フランスの核政策 社会党の大統領選候補者を反核団体はこう見る (2011年10月13日の記事)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201110130739134 この年は東日本大震災が起き、福島第一原発事故を世界が注視してドイツの女性政治家メルケル首相は即座に原発撤退を決定しました。この年、大統領選の予備選挙がフランスで行われ、原発問題もまたテーマとなりました。
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