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2026年01月19日22時57分掲載
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反戦・平和
台湾有事は日本の有事なのか ―高市発言・米国リスク・沖縄から考える、日本が戦場にならないための選択 李憲彦
公明党と立憲の合流の話で持ちきりですが、両党の最も大きな政策のクビキは、安保法制です。公明党は自民党の暴走に対して、日本の存亡に関わる事態であること、必ず議会の承認をうる、といったブレーキをかける条文を盛り込みました。しかし、その条文は十分に機能しているとは言い難いのが現状です。そこで、高市発言と安保法制のはらむ危険性について、まとめてみました。
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2025年11月、高市早苗首相は国会で「台湾有事は存立危機事態になり得る」と明言しました。この発言は、日本の安全保障政策における大きな転換点となりました。しかし、その裏には、私たちが見過ごしてはならない深刻な矛盾と危険性が潜んでいます。
第1章:安保法制の成立経緯と「ブレーキ」
2015年9月、安保法制が成立しました。この法制の核心は、憲法9条の解釈を変更し、限定的な集団的自衛権の行使を認めたことです。
当時、連立与党である公明党は、武力行使の無制限な拡大を防ぐため、厳格な「ブレーキ」をかけようとしました。それが「武力行使の新三要件」です。
新三要件とは、第一に、我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険があること。第二に、他に適当な手段がないこと。第三に、必要最小限度の実力行使にとどまること、です。
公明党は「日本が滅びるほどの危機」に限定するという厳格な条件を設けました。さらに、国会の事前承認を原則とし、民主的統制を強化させました。
しかし、このブレーキは、現在機能しているのでしょうか?
第2章:高市発言の何が問題なのか
高市首相の発言には、三つの重大な問題があります。
第一に、語義矛盾です。日本政府は1972年の日中共同声明以来、台湾を「国」として認めていません。しかし安保法制の条文には「密接な関係にある他国」とあります。国でないものを「他国」とみなすのは、明らかな論理矛盾です。
第二に、戦略的曖昧さの喪失です。歴代政権は「個別具体的に判断する」として明言を避けてきました。これは「守るかもしれないし、守らないかもしれない」という曖昧さこそが、中国の暴走を抑える抑止力だったからです。高市首相はこの「手の内」を明かしてしまいました。
第三に、米軍への言及がないことです。従来の政府解釈では「米軍への攻撃を介して日本の安全が脅かされる」という論理でした。しかし高市発言は、台湾への攻撃そのものを存立危機と結びつけています。
これは、米国が動かない場合でも、日本単独で参戦する道を開くものです。
第3章:トランプ・リスクと「日本孤立」のシナリオ
2026年1月、トランプ政権によるベネズエラへの電撃作戦が示したのは、「アメリカ・ファースト」の徹底ぶりでした。トランプ氏が目指すのは、アメリカの若者の血を流さず、アメリカの国益を最大化することです。
ここで最悪のシナリオを考えてみましょう。
台湾有事が発生します。米軍艦船が攻撃を受けますが、トランプ大統領は直接派兵を拒否し、武器支援に留めます。しかし日本は、高市首相の発言に基づき「存立危機事態」と認定。自衛隊が参戦します。
中国から見れば、これは日本の参戦です。沖縄の米軍基地と自衛隊基地がミサイル攻撃を受けます。日本本土も標的となります。
しかし米国は、核戦争のリスクを避けるため、一線を引きます。日本だけが甚大な被害を受け、疲弊したところで、米国が仲介役として登場。自国に有利な条件で中国と手打ちをする。
日本は「使い捨ての盾」として犠牲になり、米国はほぼ無傷。実利だけを目指すトランプ氏なら、このシナリオは決してあり得なくはありません。
第4章:国連憲章「敵国条項」という時限爆弾
さらに深刻な問題があります。国連憲章の「敵国条項」です。
第53条、第77条、第107条。これらは第二次大戦の敵国、つまり日本やドイツに対し、再び侵略行動をとった場合、安保理の許可なく軍事制裁を行えるという内容です。
1995年に「死文化した」とする決議は採択されましたが、条文自体は削除されていません。
2025年11月、高市発言の直後、中国の駐日大使館はSNSで敵国条項の条文を投稿しました。これは明確な警告です。同月、中国の傅聡国連大使は安保理の場で高市発言を「国際秩序への重大な挑戦」と非難し、国連事務総長へ抗議書簡を送付しました。中国は、国連という公式の場で、日本を「戦後秩序の破壊者」として糾弾する活動を実際に開始しているのです。
中国の視点で考えてみましょう。与那国島へのミサイル配備、軍事費の倍増、排外主義の台頭、そして高市首相の台湾発言。これらを線で結べば、「日本軍国主義の復活」というナラティブを構築できます。
中国はこれを、国連や国際社会で日本のプレゼンスを下げる外交カードとして使っています。そして注目すべきは、ロシアが即座にこれに呼応していることです。2025年12月、中国外務省とロシア外務省は「日本の軍国主義復活を阻止する」ことで一致したと発表しました。
さらに、中国と経済的に深い関係にあるアジア、アフリカ、中南米の国々が、この主張に賛同する可能性は十分にあります。一度でも有力な国が「日本の危険な変質」に強く賛成の声を上げれば、それは他の国々にとって、日本に対する外交カードが一枚増えることを意味します。「かつての侵略国が再び牙を剥いている」という物語は、過去に植民地支配を受けた国々の心に響きやすいのです。
その結果、日本が戦後70年以上かけて築き上げてきた「平和国家」「平和支援国」としてのイメージは、急速に毀損されていきます。国際社会における日本の信頼と発言力は大きく低下し、孤立への道を歩むことになりかねません。
第5章:「先制攻撃」と「着手」の危うい境界線
もう一つ、見過ごせない問題があります。「敵基地攻撃能力」、政府の言う「反撃能力」です。
2022年12月の安保3文書改定で、日本は「相手が攻撃に着手した段階」で攻撃できるという方針を確立しました。
しかし「着手」とは何でしょうか? ミサイルに燃料を注入した時? 照準を合わせた時? それとも発射ボタンに手をかけた時?
政府は具体的基準を示していません。「その時のインテリジェンスに基づき総合的に判断する」と答えるのみです。
攻撃する側と攻撃される側で、「着手」の認識が一致することは絶対にありません。日本が「着手を確認した」と言っても、相手は「演習だった」と主張するでしょう。
誤認があれば、日本が国際法違反の侵略国になります。そして中国は、敵国条項を発動する正当な理由を得るのです。
第6章:多方位均衡外交への回帰を
では、どうすべきなのか。
日本が生き残る道は、多方位均衡外交です。日米同盟を維持しながらも、韓国、そして中国との対話のパイプを太くしていく。これは日本が戦後、一貫して取ってきた賢明な戦略でした。
2026年1月の日韓首脳会談は、その可能性を示しました。韓国の李在明大統領は、米国とも中国とも実利的な関係を保つ「実用外交」を展開しています。
経済的現実を直視すべきです。約1万3千社の日本企業が中国で活動しています。レアアースの精錬、ハイテク部品のサプライチェーン。日本は中国なしでは立ち行きません。
これは弱さではありません。相互依存こそが、戦争を防ぐ最大の抑止力なのです。
そして沖縄です。再び沖縄を戦場にすることは、絶対に許されません。軍事一辺倒の政策ではなく、外交の力で戦争を回避する。それが、先の大戦の教訓ではなかったのでしょうか。
最後に
日本のマスコミは、この包括的なリスクを報じていません。だからこそ、私たちが語り継がなければなりません。
語義矛盾、戦略的曖昧さの喪失、トランプ・リスク、敵国条項、先制攻撃の危険性。これらは全て繋がっています。
ストーリーとして整理すること、しかも、相手国の考えるストーリーを考察することは大切です。
私は「同盟国である米国軍の甚大な被害がでた場合、国会での十分な議論と承認を得たうえで」などといった内容の発言の修正という形を取るのがいいと思っています。
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