環境省は6月26日、中央環境審議会土壌農薬部会(第38回)による「生活環境動植物に係る農薬登録基準の設定について(第二次答申)」を受けて、農薬登録にかかる影響評価に、日本ミツバチやマルハナバチなどの野生ハナバチ類を加えることを決め、「本答申を踏まえ、野生ハナバチ類に係るリスク評価を行い、農薬登録基準を設定するため、所要の手続きを進めることとしています」と発表した。(有機農業ニュ―スクリップ)
毎日新聞は同日、「ミツバチ大量死の一因と指摘されるネオニコチノイド系農薬への規制を強化するため、環境省は新規に登録される農薬の安全性審査の対象となる影響評価生物に、野生のミツバチを追加する方針を固めた」と報じた。
・環境省, 2020-6-26 中央環境審議会「生活環境動植物に係る農薬登録基準の設定について(第二次答申)」及び意見募集(パブリックコメント)の結果について http://www.env.go.jp/press/108134.html
・毎日, 2020-6-26 ネオニコ系農薬を規制強化 野生ミツバチへの影響評価も追加 環境省方針 https://mainichi.jp/articles/20200626/k00/00m/040/212000c
答申では、野生ハナバチ類に対する基準値の設定について、対象農薬の原体とすることを明記し、製剤としての評価に言及していない。
意見公募で提出された製剤での評価を求める意見に対して、「農薬の毒性は主に有効成分によるものが大きいと考えられることから、環境大臣が定める農薬登録基準は、農薬原体を用いた試験成績を基に定めています」として退けている。
補助剤を含めた製剤での影響に関して、ロンドン大学の研究チームは2018年、補助剤が主成分より毒性が大きいとする包括的なレビューを発表している。そこでは、住友化学のクロチアニジン製剤(Apache 50WG)のオオミジンコに対する毒性は、クロチアニジン単独よりも46.5倍高いことが判明しているとしている。また、中国農業科学院の研究グループが2019年、単体では重大な急性毒性起こさない3種類の補助剤をアセタミプリドと混合した場合、原体のみの場合より急性死亡率は有意に高かったとする研究結果を専門誌に発表している。
カーン大学(フランス)のセラリーニ教授らのグリホサートに関する研究でも、グリホサートそのものより補助剤の毒性が大きいという結果を発表している。
環境省の新たな方針では、野生のハナバチをリスク評価の対象に加えるとして点は評価できるが、原体評価にこだわり、より予防原則に立った枠組みを拒否している点は評価できない。
・Frontiers in Public Health, 2018-1-22 Ignoring Adjuvant Toxicity Falsifies the Safety Profile of Commercial Pesticides https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2017.00361/full
・Environmental Toxicology Joint Toxicity of Acetamiprid and Co‐Applied Pesticide https://setac.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/etc.4515
・Phys, 2019-8-5 Pesticides deliver a one-two punch to honey bees https://phys.org/news/2019-08-pesticides-one-two-honey-bees.html
【関連記事】 ・農薬補助剤のリスク評価無視は安全性を偽る 英国の研究 http://organic-newsclip.info/log/2018/18030900-1.html
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