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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2025年03月22日11時37分掲載
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アジア
ミャンマー特殊詐欺拠点(1)過熱する報道 日本人に集中、問題の本質解明進まず 宇崎真
このひと月余日本のマスコミ、特にテレビはミャンマー東部カレン州の特殊詐欺拠点の報道合戦を繰り広げた。とりわけそこから「救出」されて出てきた、あるいは脱出してきた日本人数名の存在が判明してから報道は過熱化した。だが、巨大な犯罪組織の急成長の背景にある、軍事クーデター後の社会破綻や国民生活の困窮、国際社会の無関心は見過ごされたままである。 それらの報道内容は次の諸点では共通している。① 国軍と関係の深いカレン民族の一部武装勢力BGF(国境防衛隊)が詐欺拠点の摘発に乗り出し「7千名の外国人」を「救出」したと発表したが、あくまで国際社会とくに中国からの圧力でそうせざるを得なかったということでいわば「延命」を図っている。詐欺拠点では現在でも活動は継続、あるいは他の場所に移動して継続を図っているようだ。② 中国犯罪組織が「主犯」であるとみられ、拠点施設内部では大勢の外国人が監禁され、暴行や電気ショック等の拷問が加えられていた。③ 「20名以上」「数十人」の日本人が詐欺拠点で従事しているという情報もあったが、それらの確かな根拠はなくいずれも伝聞情報である。日本の視聴者むけに「耳目を集める」噂の範囲を出ない。 日本のテレビ局の過熱報道はあくまで「加害者」「被害者」いずれのケースであれ日本人を突き止め「単独インタビュー」をものにし、そこから日本人が何故どのようにしてミャンマー犯罪拠点に入っていったのかを明らかにしたい、この動機が「特ダネ競争」をもたらしたとみていい。そうだとすれば、どこの局も大同小異、失敗している。 本質的な解明は殆ど何もできていないのである。まず「最優先」としていた日本人の関わりとその経路、背景、日本国内の特殊犯罪組織との関連なども明らかにできず、実態解明にはほど遠い。ここまでの報道をまとめれば、日本国内でひろまったオレオレ詐欺、窃盗と殺害事件となった特殊詐欺の犯行グループと海外拠点でおこなわれている特殊詐欺の犯罪組織との関係は明らかにされていない。今回のミャンマーのケースでも中国犯罪組織が「主犯」というが、それがどこでどのように日本の犯罪組織と結びついているのか、そこが追求されなければならない。 またどのマスコミ報道も見逃している重要な点は、ミャンマーの軍事クーデター以降の社会破綻、国民の極度の生活困窮、将来の希望を失った大量の民衆を創出するシステム、そして国際社会の無関心ではないのか。皮肉にも外から世界で最もミャンマー情勢に関心をもってきたのは他でもない中国政府であり中国企業、犯罪組織である。 日本のマスコミはこの「報道合戦」を深い反省と懺悔の念を込めておこなっているだろうか。実は、ミャンマーの詐欺拠点の組織構造の末端は大量のミャンマー人、次いで中国人なのである。この点を抜きにして何故短期間に詐欺拠点が急拡大したのかが全く説明できないのである。その実態は次のレポートで詳しく述べていきたい。
▽ニュースの本質を見失ってはならない 日本は「失われた30年」を経て現在まさに戦後最大の岐路にたたされている。トランプ政権の強権政治、欧州を覆う右翼勢力の台頭、ロシアと中国の更なる「大国志向」はかつてない国際環境の激変をもたらしている。日本政府はトランプ政権の言動一つひとつに右往左往し、内政を犠牲にしてでも対米追随の「外向き」政策を取らざるをえなくなっている。安倍政権時代からそれは明確になってきた。「自由に開かれたインド太平洋」戦略、自衛隊の増強と各国との合同演習等など次々と「外向き」の政策を打ってきた。それに反し日本のメディアは「内向き」の度合いを深めている。 二十年余も前に民放のバンコク特派員が言った言葉が象徴的で今でもはっきり思い出す。彼はやや自嘲しながら言った。「デスクから赴任にあたって、どうせたいして取材なぞ出来ないんだからあま無駄な動きはするな。現地の社会がどうなっているかといった取材は適当でいい。ただ日本人がらみの事件事故だけは他社に負けるな」 バンコク常駐のテレビ報道の駐在員全員がそれにそのまま従っているとは言わない。だが、今回の報道合戦をみてもその傾向は色濃くあると考えざるをえない。ミャンマー情勢を系統的に追い軍事クーデター以降の現地取材に主体的にかかわってきたテレビ記者カメラマンはどれだけいただろう。それなしに「押っ取り刀」でミャンマー国境に駆け付けたところで深い取材は望むべくもないだろう。 またこのミャンマー詐欺拠点に限らずミャンマー情勢をとりあげる各局番組に登場する専門家の解説にも苦言を呈したいところである。とりわけ2021年の軍事クーデター以降は専門家の解説がどれも一般的で、とても研究の蓄積に基づいた鋭い指摘など聞いたことがないと感じるのは筆者だけだろうか。 だが、翻って考えればテレビ局がだらしないからではないか。日本の研究室にいる専門家よりも日々生の現実の変化に近い立場にいる報道人の方が視聴者にとっても知りたい情報をもっており解説できる筈である。なぜ各局とも同じような顔ぶれの研究者に頼って番組づくりをするのかはなはだ理解に苦しむのである。
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