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2005年10月12日14時39分掲載
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マレーシアに赤ちゃん売買の闇市場 女性を売春で妊娠させる手口も
国際社会が今、さまざまな形を取る人身売買の撲滅に乗り出している中、マレーシアでは生まれたての赤ん坊を売買する事件が相次いで起き、同国社会に衝撃を与えている。不妊で悩む夫婦が、何としても子どもを持ちたいと願い、赤ん坊を闇ルートを通じて買い取っているからだ。最近では同国の犯罪組織が「利益を生む」と、この売買に目をつけて進出。女性に売春を強要して故意に妊娠させ、産まれた赤ん坊を取り上げては、売るという悪質なケースも増えている。(ベリタ通信=都葉郁夫)
フランス通信などが伝えたところによると、マレーシアでこのほど、「児童搾取」をテーマにしたシンポジウムが開かれ、同国犯罪捜査局のナワウィ・イスマイル副局長が「赤ん坊売買」の実態などについて報告した。
それによると、マレーシアで「赤ん坊売買」が特に目立ち始めたのは過去10年前後のことで、2002年からこれまでに売買されようとした赤ん坊35人を救出・保護し、取引に関係した45人を人身売買容疑などで逮捕した。ナワウィ副局長は「売買の手口は年々巧妙になっている」と指摘するとともに、マレーシアが隣国インドネシアなどと連携して、「赤ん坊売買」の取り締まりと撲滅に力を入れていると強調した。
副局長によると、赤ん坊を買い取るのは不妊に悩み、どうしても子どもを欲しいと願っている夫婦たちで、取引が成立すると、そうした夫婦は赤ん坊の生後日数に従って代金を支払うという。支払い額は、5000〜1万8000リンギット(約15万〜54万円)で、生まれたばかりの赤ん坊ほど高い値が付けられているという。
▽売春女性保護で衝撃の事実
また、副局長は最近特に目立ってきた深刻な問題として、売買への「犯罪組織の進出」を取り上げ、「犯罪組織が、赤ん坊売買が利益を生むことに目をつけている。赤ん坊の入手手段や取引手口がさらに巧妙化し、取り締まりが一段と難しくなっている」との厳しい現状を指摘する。
その例として副局長は最近摘発したインドネシア人女性絡みのケースを明らかにした。犯罪捜査局は、インドネシア国境に近いボルネオ(カリマンタン)島サワラク州内で、犯罪組織により売春を強制されていたインドネシア人女性8人を保護した。調べを進めたところ、女性たちは売春の際、故意に妊娠するため、避妊具や避妊薬の使用を禁じられていたことが判明。妊娠した女性は出産するまで犯罪組織の下に置かれ、赤ん坊は産まれた直後に女性たちの手から引き離され、売られていったという。
女性たちによると、生まれた直後の赤ん坊は組織の手により“闇の取引市場”に出され、通常よりも高い2万〜3万リンギット(約60万〜90万円)で売られたという。買い手側の夫婦にとっては、生後間もない赤ん坊ほど人目をごまかせて育てやすいこともあり、高額で取り引きされる。
犯罪組織はこのほか、既に妊娠している女性をインドネシアから不法入国させた上で、出産まで監禁状態に置く手口も使っている。この場合、女性は出産した赤ん坊を組織に売って代金を手にした後、インドネシアに戻っていくという。いずれのケースもマレーシアで出産するため、赤ん坊には自動的に「マレーシア国籍」が与えられることも、高く取り引きされる要因になるという。
赤ん坊売買の拡大について同副局長は、「近隣諸国から女性労働者が流入していることも要因のひとつ」と分析する。また、シンポジウムに参加した地元の人権擁護団体関係者は「従来は、妊娠して困った女性が赤ん坊を売ることがあったが、今では犯罪組織がそれをビジネス化し、巨額の金を動かしている」と批判。マレーシアの捜査当局が近隣諸国の警察などと情報交換を含む捜査協力を密にし、赤ん坊売買という悲劇を早急に撲滅するよう訴えた。
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