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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2012年11月15日13時21分掲載
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文化
【核を詠う】(74)福島の歌人たちが原発災の1年の日々を詠った短歌作品を読む�ぁ/轡▲薀薀�福島会合同歌集「あらゝぎ 東日本大震災特集号」から(上) 山崎芳彦
すべて一括りにしていうわけではないが、この国のジャーナリズムの原発についての論調に、特に経済関係の特集や解説記事には、驚かされることしばしばである。最近発行された「週刊東洋経済」臨時増刊の「原発ゼロは正しいのか 電力政策・無策の恐怖」を読み、その感を新たにしている。
「感情論を排しリアルで持続可能な解決策をさぐる」との謳い文句からして、すでに脱原発、原発ゼロをもとめる多くの人々を「感情論」でリアリティを持たない愚論と斬って捨てる構えが見え見えだが、買って読んでいる。本稿では内容に触れないで、改めて内容を吟味する機会を持ちたいが、無署名の巻頭の『「原発ゼロ」の判断に迷いの見える『革新的戦略』』と題する文章の中で、政府が9月14日に公表した「革新的エネルギー・環境戦略」に対する批判と、政府の混乱、混迷した原発対策を批判展開しているのはよいにしても、この文の論理が、徹頭徹尾、経済成長絶対主義、従って原発必要論に導くエネルギー論を述べていることには同意できない。そして、その結びの部分で次のように論じていることは、決して許されるべきでないと、批判しなければならない。
「『革新的エネルギー・環境戦略』の第1ページには『この新たなエネルギー戦略は<一握りの人々で作る戦略>ではない。何より先ず、政府と国民が、一人ひとりの意見、不安、願いに虚心に耳を傾け合い、さまざまな主張を深く理解し合うことで策定される<国民的議論で作る戦略>でなければならないとある。だが、十市勉氏(日本エネルギー経済研究所顧問、この特集号にインタビュー記事で登場している)の言葉を借りれば『エネルギー戦略は国家戦略であり国家の安全保障に深くかかわる問題』である。 経済政策のみならず、外交政策を含む国家戦略を、市民一人ひとりの意見を尊重しながら作り上げる、などということが現実的であろうはずがない。」
というのである。まさに「原子力ムラ」あるいはかつての「軍部独裁」の論理そのものであろう。国家戦略とは、市民の越え、要求などを聞いていては作れないと論じるジャーナリストの顔が見たい。
上から目線などと言うものではない、権威権力者に媚びへつらうジャーナリズムが何を「市民」にもたらしてきたか、いやというほど痛苦の経験を積んできた人びとはこの雑誌編集者、記者たちの眼中にないのだろうか。彼らが何処から経営原資を得ているのか、透けて見える気がする。彼らには、原発事故に苦しみ、全国各地で原発の存在に恐怖し、怒り生きている人々に思いを致す心がないのであろうか。
原発のエネルギーが人びとを豊かに、幸福にしてきたか。これからの人間生活に何をもたらす存在であるのか、経済成長主義、競争社会をよしとする立場からは、福島の歌人たちが詠う短歌も、「感情論」の生み出す作品としてしか読むことができないかも知れないが、そのようなジャーナリストたちが主導しようとしているエネルギー論など、信ずるに耐えられるはずがない。
いささか、憤りにまかせて書きすぎたが、福島の歌人たちの真実に満ちた短歌作品を、今回は新アララギ福島会が2012年4月に刊行した合同歌集『あらゝぎ』(東日本大震災特集号)から、原発にかかわる短歌を抄出して読みたい。同会には以前に読んだ歌集『青白き光』の作者佐藤祐禎さんも所属しておられる。
同歌集の「発刊にあたって」で会長の小野木正夫氏は次のように記している。
「平成二十三年は新アララギ福島会の私どもにとって深い悲しみの一年間でありました。それは、三月十一日に発生した大地震と巨大津波、加えての福島第一原発事故、それと四月十六日に宮地伸一先生がお亡くなりになられたことです。・・・。太平洋沿岸を襲った地震と津波、それに最悪の放射能汚染をもたらした原発事故は私どもを奈落の底に突き落としました。二万人を超す死者・行方不明者。今でも十五万人が避難生活を強いられ、特にわが福島県は放射能汚染を避け、一家離散と言う極限の日々を送っておられる方が少なくありません。 浜通りに数多くおられる本会会員も散り散りになってしまいました。お掛けする言葉もありません。短歌文学をバネとして、支えとして一日も早い再興をお祈りいたすばかりです。 『家には永久に帰れなくなりました。小生も半分死んでおります。新アララギのことは一切お任せします。お元気で。』 これは佐藤祐禎さんからいただいた年賀状の文面です。祐禎さんの悲痛な叫び、涙を禁じ得ません。ご存知のごとく、祐禎さんは本会の立ち上げと長年事務局として御尽力くださいました。大熊町での歌会前日、宮地先生と皆で第一原発の原子炉天頂に立ったことも忘れられません。 このような状況のもと、私どもは合同歌集『あらゝぎ』第十三集を『東日本大震災特別号』として編むことを決意いたしました。幸い、特別寄稿をいただいた七名の方々を含め、総勢五十八名の参加者を得ました。・・・」
同歌集は「発刊にあたって」、「東日本大震災の概要」、「特別作品」「会員作品」、「あとがき」で構成された132頁である。なお、財団法人東邦銀行文化財団助成事業となっている。
今回も、多くの作品から原発事故にかかわるとの、筆者の独断による抄出となることをお許し願いたい。抄出歌以外の貴重な作品を紹介できないことは、毎回のことだが残念極まりない。(各連の表題も省略する。)
[特別作品]
▼三十家族住みゐしうから等散りぢりか廃墟の如き町もとほろふ
便利さを求むる暮しは止めにせむデッド・エンドの日へ加速する 2首 雁部貞夫
▼放射線の恐怖と停電の日々続くかの平穏は錯覚なりき
原発に抗ひ続けし高木仁三郎やはり起きしとあの世に嘆くか
向きあふことせずして支援といふなかれ金のみ送りて被曝者拒むか
二百キロ彼方の事故は五坪なる吾の畑に死の灰降らす 3首 今野英山
▼福島歌会をはれば駅までの道を原発廃止のデモにくははる
東電の計画停電に妻たのもし鍋にて上手に飯炊きあげる 2首 斎藤 茂
▼何を隠す歯切れの悪さか知りたきを語らぬ原発の会見に苛立つ
海底のプレートのさま知るべくも無くあやふき生をけふも生きゐる 2首 鶴見輝子
「会員作品」 ▼原発の廃止論おきにぎにぎしわれら被災者を置き去りにして
もはや大熊に人は住めぬという噂流れながれて大阪に届く
「帰りたい」思わずつぶやきいしわれかひとりの部屋にこもりておりて
安全なところしか見せないと原発につとめいし夫の言いし日ありき
大熊は三十年は住めぬとぞ東電社員の本音を聞けり 5首 阿部 緑
▼怯えつつその「日暮らし」の蝉よ鳴け鳴けばこころの隠しきものを
(放射能の風が南東より吹きくる) 蝉しぐれ届かぬ夏の寂しさにいや増す思ひ強きいなさに
おどおどと怯え暮らしの宵の間も浜へ向かふや選挙カー行く 3首 荒 仁志
▼地震津波原発台風と続く列島か人の力は弱きものなり
丹精の野菜も米も放射能浴びしか風評に農民の泣く
原発事故に無農薬農家は鶏飼ふも野菜稲作も止めてしまひぬ 3首 安斎幸子
▼放射線圏外三十キロの地点なれば屋内避難を求められをり
外出を避け窓を閉ざして放射線マイクロシーベルトを注視して居り
福島原発の鎮静信じて避難命令あるまで家を離れずに居り
児童らは遠く全国に散らばりて地元に残るは十五人といふ
原発事故発生の今年水稲の作付中止にて蛙を聞かず
ふと見れば嫩葉となりし梅の木に放射能知らぬ四十雀をり
排気筒吐く放射線に振り回され避難余儀なき人ら離りゆく 7首 海老原廣
▼目に見えぬ放射能に怯えつつ潤ひの無き町にわが住む
窓開けて放射能なきすがすがし風思ひきりわれは吸ひたし
池袋の雑踏の中に紛れつつ脳裏にありし原発忘る
田も畑も一面黄色に染まりたるセシウム吸ひし向日葵の花
久びさのそぼ降る雨にも放射能あれど庭の花うるほひて咲く 5首 大谷京子
▼原発事故の屋内避難エリアに生きて日にち放射線に戦き惑ふ
着のみ着のまま放射能逃がれ避難所を転々としてやうやく我家に
炉心溶融の収束に身を賭して働く君よ君よ恙なくあれ 3首 奥山 隆
原子炉の天頂に宮地先生と立ちし日よ[安全神話]御託を前に
地震津波・原発事故の二重枷うち拉がれし現し身に対ふ (避難者診療)
原発の仕事に糊口を凌ぎたれば此度の事故を多く語らず
その電力を使ふことなき県民吾ら火焙りの刑を食ひたる如し
そよぐ風揺らぐ光にこころ寄せ在り得むものをああ飯舘村
放射能に怯ゆる日々なり早稲田に白き土蔵の影ゆらぎつつ 6首 小野木正夫
避難しか選べる道はないのかと娘のメールにゆれ動く日々
原発のメルトダウンの危険しりて孫との帰郷を拒みて居りぬ
ヒマワリは原発のセシウム吸い取るときけば近所でも植えこみはげむ
幼き孫の線量計の高ければ帰郷拒みて写真を抱きしむ
朝顔もヒマワリも咲くわが庭は線量計にて安心と知る
原発に負けずに咲けよ朝顔の五十余の花天高く咲く
花火さえ川俣産と云うだけで打ち上げ中止の風評被害を知る 6首 菅野節子
▼大津波は福島原発破壊して人住まはせぬものとなりたり
原発の壊れし中に働くと甥は行きたり未だ帰らず
今朝もまたセシウム単位少なしと稲を作らむ食はむがために
この政治進まぬものか遅れゆく原発瓦礫われら戸惑ひ
開通のいつかは知らず線路錆び原発事故に草覆ひたり
東電の原発未だ収束の見えず放射セシウム汚染拡がる
原発の事故に稲作出来ぬかと思へど稲の花見事付く 7首 木下 真
▼セシウムの雨降る町に並びつつ水求めむと幾時間待つ
をやみなく降り来て白き春の雪地震(なゐ)の瓦礫を覆ひて白し
放射能漏れたる事故の責任を誰もとらずに五ヵ月が過ぐ
牛数多飢ゑ死なしめし老農の己の避難を責めて自死せり
園児らはガラスバッジを首に下げマスクを掛けて歩くフクシマ
あきらめてただ諦めてあきらめて線量高きフクシマに住む 6首 金野金哉
合同歌集に収録の作品はまだまだ続く。次回に読みたい。 (つづく)
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