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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2013年12月05日13時10分掲載
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文化
【核を詠う】(133)『2013年版現代万葉集』から原子力詠を読む(3) 「放射能見えず臭はず冬に入るみちのくの海、大地、森、河」 山崎芳彦
今回も『現代万葉集』の原子力詠を読むのだが、それに先立って、原発、原子力問題とも深くかかわることになるに違いない「特定秘密保護法案」について、筆者の思いなどを記しておきたい。
「特定秘密保護法案」が衆議院で強行採決、参議院に送られたが必要な審議が行われることもなく、国会閉会までには自民党とその後について金魚の糞よろしくゆらゆらよろよろしている一部野党の、数を頼みにした採決強行はシナリオどおり、というのが大方の見方だが、この法案の内容、予想される運用の底知れない危険性を考えれば、「大方の見方」などといっているわけにはいかない。国会の会期末までにはとどまらず、この法案が実効的な機能を思うままに発揮できない縛りを、国民、主権者のあらゆる知恵と力を引き出して、かける努力を続けなければならない。「悪法も法だ」などといっているわけにはいかない。許してはならない。
石破茂自民党幹事長は、11月29日付の自身のブログに「沖縄など」と題して書いた一文の中で、とてつもないことを言っている。 特定秘密保護法に関する部分でこのようなことを記している。 「今も議員会館の外では「特定機密保護法絶対阻止!」を叫ぶ大音量が鳴り響いています。いかなる勢力なのか知る由もありませんが、左右どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはないでしょう。 主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべきなのであって、単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変らないように思われます。」
というのである。国民の正当な権利であり、世界の国々でも、また現代日本でも行われているデモや集会におけるシュプレヒコールやアピールの行為を「テロ行為とその本質においてあまり変らない」という石破自民党幹事長の認識、考え方をもってすれば、原発周辺でのシュプレヒコールを行えば「テロ行為と変らない」行為だということになる。テロ対策の対象になるということに、論理的にいきつく。
このような認識と立場で国民と向かい合う自民党幹事長、元防衛大臣、有力な将来の首相候補といわれる者の発言である。「特定秘密保護法」が成立したときのことを考えると、背筋が凍るような石破発言である。そして、このような反国民的政治家を首脳に据えている自民党政権を続けさせること、その政治にこの国の運営を独占させることの危険さを、叫び続けなければならないと思う。(石破幹事長は、12月1日に、「(街頭デモを)『テロと同じに見た』と受け取られる部分があるとすれば、そこは撤回させていただく」と記者団に語り、一部撤回したと12月2日づけ新聞で報じられているが、法案成立への影響を避けるためのもので、本音に変りはないだろう。卑劣で見苦しいその場しのぎの言い換えを信じるものはいない。)
暴虐の限りを尽くす悪政がひき起こした侵略戦争を、かつてこの国は経験した。そのとき、治安維持法があり、言論も報道も、個人的な会話、小グループの話し合いに至るまで監視され、捕縛され、拷問を受け、処罰される、まさに権力のもとに虐げられた時代があり、そうして作られた「強い国」「世界の一等国」「大東亜共栄圏の盟主」を誇るこの国は、「戦争する国」「他国を侵略し人々を虐げる国」「自国民を塗炭の苦しみに追い込み、軍隊に縛りつけ、人を殺す、傷つけるための道具にまで貶める国」「他国の国土と人々を惨憺たる苦しみに陥れる国」であった。この国の繰り返してはならない経験を、再びの道を通って時代の色に染め替えて、おそらくはさらに凄惨なことをする国への一里塚として「特定秘密保護法」は言葉の陰に如何様にも機能する仕掛けと手段を埋め込んで、底知れない非道を行うための悪法になるに違いない。
いま安倍政権が目指す「強い国」−大国としての位置を占めるための「経済成長」政策、戦争ができる国としての軍事力強化とそれを受容受忍する国民意識の醸成、国家の危機を煽る領土問題などを挙げての対外政策、集団的安全保障についての憲法解釈の変更、教育の支配、原発政策、海外に派遣する自衛隊の武器携行の強力化、武器輸出三原則の骨抜き、多くの国民の生活を圧迫する収奪のための税制改悪、労働法制の改悪・・・挙げていけばきりが無いほどの危険な施策が打ち出されている。
それらは憲法の実質的な改悪(解釈改憲)を経ての現憲法の廃棄と彼らが求める「自主憲法」の制定へと続いていくに違いない。そのとき、私たちはどのような時代に生きなければならないのだろうか。かつて戦争に向かい、戦時下に詠われた短歌作品、歌人の姿勢について、一面的にではないが、改めて思わないではいられない。
「特定秘密保護法」の制定は、安倍政権、この国を支配する大企業財界をはじめとする勢力にとっては、これからの国家運営の要なのであろう。
当然、原発問題にかかわっても重要である。同法案について、村上達也前東海村長は衆議院での採決後に朝日新聞の記者の取材を受けて、次のように語っている。(朝日新聞11月29日朝刊、茨城版による)
「国民が法案について知り始めたのはつい最近、国民的な議論が熟さない中で強行採決された。きわめて強権的なやり方だ。」 「何が秘密なのか分からず、いくらでも拡大解釈できる。国民の意見を排除しようとするものだ。国民の目はふさがれ、検証することもできない。民主主義の破壊だ。そもそも日米同盟で重要という話も、どう必要なのか明確な説明がない。」
「(原発への影響は)もちろんある。今でさえ原発の情報は取り扱い注意が多い。原発関係者には、住民、国民に知られたくないというマインドがある。これまでは不都合な事実を隠したいというのは感じたが、最後まで情報開示を拒否することはなかった。だが、法律ができれば説明責任は置き去りになり『これは秘密です』の一言で終りになる。」
「(JCO東海事業所での臨界事故を振り返って)JCOは事故を想定していなかったので対応できていなかったところはあったが、秘密にするというのはあまりなかった。今後、事故が起きた場合、担当者が萎縮し、必要な情報を出しづらくなる恐れがある。『私では判断できません』と上司に何度も尋ね、迅速な対応ができなくなる。」
「(森雅子秘密保護法担当相の『原発は除外だ』の発言について)これまでも国会答弁が二転三転しており、信じられない。テロ対策を理由に、原発についても秘密にされることは目に見えている。日本は遅まきながら、民主主義の基本である情報公開や知る権利を追求してきた。それが今、逆行している。」
「(戦前の治安維持法に関連して)治安維持法ができたのは、大正デモクラシーの時代だった。そんなにひどいことにはならないだろうと考えていた人が多かっただろう。だが、大弾圧につながった。」
「(今後の見通し)安倍政権は強硬な方法を次々使ってくるのではないか。憲法改定も狙っているのだろう。特定秘密保護法案について、国民は闘う時間も、意見を言う時間も与えられなかった。今後、世論の力で、廃案にして行くべきだ。」
長い引用になったが、村上さんの言うとおりだと、筆者も考えている。
また、同法案が衆議院で強行採決された前日の11月25日には、福島市で衆院国家安全保障特別委員会が開いた地方公聴会で、与党の自民党、公明党を含め各党が推薦した意見陳述者七名全員が特定秘密保護法案に対する批判、不信感を述べる発言をし、原発事故による深刻、耐えがたい被害を受けたことを踏まえ、原発についての情報や、政府の原発政策の内容などが秘密指定の対象にされることへの危惧、さらに同法ができることによって、原発労働者による情報発信の「抑止」や関係機関による事実や情報の隠蔽、非公表が拡大されることになるとして、反対あるいは慎重審議を求めた。福島で公聴会を開き意見を求めながら、その翌日には同法案の強行採決を行ったことは、原発により塗炭の苦しみ、恐怖、生活の苦難、将来不安の中にある福島県民に対する許しがたい暴挙であった。ここに安倍政権の本質が明らかである。
この国、社会に生き、生活を営みながら短歌作品を作る人々にとって、現状をどう受け止め、自身の作歌の内部に映していくか、あるいは生き方、行動の標にするか、それぞれが問われているのだろうと考えている。 より豊かな短歌文学のために、人々を苦しめ、圧迫する社会、国家はふさわしくないのだが、そうであれば、そのような社会に陥っていくことを阻止する力の一端を、短歌人も担わなければならないだろう。
原発、原爆、放射能についていま詠われている作品は、やはり貴重だし、意識的に詠おうとする構えを持つことも大切だと、これまでこの「核を詠う」連載の中で読んできた数多くの作品と出会って思っている。『現代万葉集』の作品も、そう思いながら読ませていただいている。
◇風 土◇ ▼曾良記す「宿キレイ也」そのかみの福島の初夏思いみるべし (福島 星 陽子)
◇東日本大震災� � ▼「今日は人の身明日は我が身」と瓦礫処理うだうだ言はず引受けようよ (山梨 浅見栄子)
▼福島へチャリティコンサート祈り込め合唱隊でソプラノうたう 酷寒に放射能をも流れ出す俤雛に心解(ほぐ)れぬ 道連れに不安感とも過ごすなど思わざりしよ自然災害 (東京 阿部洋子)
▼東電の線下の保障に潤いし過ぎゆきのあり鉄塔見上ぐ 多大なる電力の消費まかないて今原発の是非にさらさる 自由さえ奪われ育つ孫達に送るものなし風評被害に (福島 有賀智枝子)
▼放射性物質撒かれズタズタにされた故郷を東京で観る 汚染土を袋詰めして借り置かる実家の敷地外には非ず 口下手な東北人へ飯館村民(そんみん)へ拙歌を捧ぐ命を捧ぐ (宮城 伊藤誠二)
▼原発ゼロの署名は容易い 風寒きメーデー広場に重く問ひゐつ 原発ゼロの署名をしつつ過りたる五歳の孫の数十年後を ビル街に悲鳴のやうな風が捲く脱原発の立て札傾ぐ (北海道 伊藤典子)
▼原子力村の議事録揺さぶるな「そつとそのままそつとそのまま」 ありありとメルトダウンのその後のフクシマ原発残照のなか 廃炉処理四十年とや遥かなり吾は死後にも眼を開けてゐむ (福島 伊藤正幸)
▼列島が仮相平和の揺籃に揺られ来にけん昏き蜜月 臨界を超ゆるすなはち己が意志持つ原子核の分裂連鎖 流血と欲望の種子秘匿して勝者はつねに正史と言へり (神奈川 今井陽子)
▼ふくしまの春は今年も非常時やセシウムを吸ひセシウムを食ふ 放射線個人線量計を下げ児らはひととき祭りに遊ぶ 竜宮の開けてはならぬ玉手箱いまにして知る太郎の気持 (福島 薄井弘子)
▼何となく雛の日も過ぎ三度また巡り来てゐるあの日の記憶 陽炎の中を揺れつつ異界めくズームレンズの中の原発 遠望はズームの中にとらへられ建屋に動く影の小さし (秋田 臼井良夫)
▼ふくしまに被災後三たびの夏はきてモミヂイチゴが白花ゆらす ドアに鈴つけられし<避難>ひとはいふ そのおとわれも聴いた 気がする 神楽鈴カウベルひびけどひとが呼ぶこゑあたたかし鈴とはなにか (福島 遠藤たか子)
▼おとなしく過ごす外なし原発を作る企業にかかはる町は 原発を阻止する署名もらへずもまづはほほゑむ向日葵の庭 (茨城 大内徳子)
▼放射能見えず臭はず冬に入るみちのくの海、大地、森、河 東北の森林にかくも降り積もる雪の下静かにセシウムはある 列島を北上しゐる桜(はな)前線けふは無人の町に咲く報 (高知 梶田順子)
▼雑食の蛸であるゆゑ太すぎる今年の脚を皆畏れたり (宮城 梶原さい子)
▼「まだ」と「もう」せめぎ合えるは原発か、いえ、私のことなのですが (茨城 勝井かな子)
▼「いがったね」被災の人に曝したる多くはいらぬふる里ことば 彼の日より涙と怒りの対角線ことさらひろがる生きのとまどい (宮城 金澤孝一)
▼人気なき臼石(うすいし)小学校のグランドの線量計の値は2・29μSv(マイクロシーベルト) (山形 鴨田希六)
▼被災地の体育館を抜け出して夜夜母を呼ぶをみなごのこゑ この国を脱出したき牛三頭海沿ひを馳す馳するほかなし (神奈川 川井盛次)
▼家ごとに計画停電カレンダー送付され再稼働さる大飯原発 焚き上ぐるも水に流すもかなはざる鵺の如きを生み出ししわれら 原発の反対唱ふるパレードに従きて街ゆく声出せぬまま (大分 川上美智子)
▼密閉の原子力村は心地よし政官財学のメルト・ダウンに 除染とは放射能を移すのみ言葉は踊る悲しき不満 「除染」は「鬼は外」とふ叫びに似る鬼はさまよひて万年を生く (群馬 木部敬一)
次回も『2013年版現代万葉集』から原子力詠を読む。 (つづく)
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