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2016年12月07日21時42分掲載
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人権/反差別/司法
国際機関「女性差別撤廃委員会」への日本の右派団体の圧力は筋違い 国際人権団体が「声明」で指摘
「慰安婦の真実」国民運動(加瀬英明代表)なる団体が女性差別撤廃条約の条約機関である女性差別撤廃委員会の林陽子委員長の即時解任を求める署名を岸田文雄外務大臣宛てに提出したのを受け、国際人権団体ヒューマンライツ・ナウは2016年12月7日、「きわめて不当であるので、これに抗議し、政府に対して、人権条約機関の任務遂行を尊重するよう求める」との声明を発表した。「慰安婦の真実」国民運動は2013年結成され、慰安婦の存在を消そうとする立場から活動している右派系団体。女性差別撤廃委員会が、本年3月の日本政府報告書審査後の総括所見において、「慰安婦」問題に対する日本政府の対応に懸念を示したことをめぐり、林委員長の解任を求めたものだ。同団体はこれまで、慰安婦の強制連行に関する「河野談話撤回運動や国連人権理事会のクマラスワミ報告書を問題にるなどの活動を行っている。(大野和興)
ヒューマンライツ・ナウの声明は、「慰安婦の真実」国民運動は人権条約機関の委員の任務について理解していないことを指摘した上で、「すべての人権条約機関は、公平性を維持するため、当該国出身の委員は審査に関わらないことを慣例とし、かつその作業方法を明文で確認している」とその公平性を確認し、「従って、日本出身の委員である林陽子委員は、この作業方法に倣い、日本政府報告審査及び総括所見の作成には関与していない」ことを明らかにしている。
その上で声明は、「慰安婦の真実」国民運動の林委員解任要求は、人権条約機関の任務遂行を妨害する不当な圧力とであるとして、日本政府に対し、「このような不当な圧力に一切応じない」ことを要望している。
以下、ヒューマンライツ・ナウの「女性差別撤廃委員会委員長の解任要求に関する声明」の全文を紹介する。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 女性差別撤廃委員会委員長の解任要求に関する声明 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 女性差別撤廃条約の条約機関である女性差別撤廃委員会が、本年3月の日本政府報告書審査後の総括所見[1]において、「慰安婦」問題に対する日本政府の対応に懸念を示したことをめぐり、日本では、これが政府の説明を無視した見解であるとして、同委員会の林陽子委員長の解任を求める動きがある。「慰安婦の真実国民運動」(加瀬英明代表)は11月16日、林委員長の即時解任を求める署名を岸田文雄外務大臣宛てに提出した。 国連経済社会理事会の協議資格を有する国際人権団体であるヒューマンライツ・ナウは、このような要求は人権条約機関の委員の任務についての誤解に基づいており、きわめて不当であるので、これに抗議し、政府に対して、人権条約機関の任務遂行を尊重するよう求める。 人権条約機関の委員は、徳望が高く人権分野において能力を認められた締約国の国民の中から、締約国会議において選出され、個人の資格で職務を遂行する。そして、国別の報告審査においては、すべての人権条約機関は、公平性を維持するため、当該国出身の委員は審査に関わらないことを慣例とし、かつその作業方法を明文で確認している。女性差別撤廃委員会も、1998年の決定18/III「報告書の検討」において、「女性差別撤廃委員会は、実質においても外見においても最高度の不偏不党性を維持するため、委員会の委員は、自分がその国民である国の報告書の検討のいかなる側面にも参加することを控えるべきであるというこれまでの慣行を再確認する」としている[2]。現在では、このような人権条約機関の作業方法は、「人権条約機関の委員の独立性及び不偏不党性に関する指針(アジスアベバ・ガイドライン)」[3]としてまとめられ、女性差別撤廃委員会もこれに依拠している。従って、日本出身の委員である林陽子委員は、この作業方法に倣い、日本政府報告審査及び総括所見の作成には関与していない。林委員が現在、女性差別撤廃委員会の委員長を務めているとしても、このことは同様である。同委員会が「慰安婦」問題に関して日本に対し懸念を表明する総括所見を採択したからといって、日本の外務省に対して解任要求を行うことは、このような意味で筋違いである。また、林委員は女性差別撤廃条約の締約国会議で選挙により選出されているのであって、そもそも日本政府は林委員を解任できる立場にはない。このような要求を外務省に行うことは、人権条約機関の委員の任務遂行に関する完全な誤解に基づいて、委員に対して不当な圧力をかけようとするものであるのみならず、ひいては、人権条約機関が人権条約に基づく報告制度等の任務を円滑に遂行することを妨げる行為である。 なお、女性差別撤廃委員会が「慰安婦」問題に関して総括所見で指摘した事項[4]は、当該所見でも引用されているように、諸人権条約機関及び人権理事会の手続においても共通の関心事となっている事柄であって、国際人権基準に基づきこれまでも繰り返されてきた内容である。 日本は女性差別撤廃条約をはじめとする諸人権条約の締約国として、条約を誠実に遵守する義務を負っているが、その義務には、条約で設けられた機関である各条約の委員会の任務遂行を尊重することが当然に含まれる。日本政府は、報告制度における条約機関の任務遂行を尊重し、不当な攻撃から委員の独立性・不偏不党性を擁護すべきである。林委員は、弁護士として、女性の人権問題をはじめとする人権擁護に尽力し、その徳望と能力を広く認められて、女性差別撤廃条約の締約国会議において委員会の委員として選出され、かつ、委員会内でその任務遂行ぶりを高く評価されて、委員長に選ばれた専門家である。 ヒューマンライツ・ナウは、このたびの林委員解任要求に対し、人権条約機関の任務遂行を妨害する不当な圧力として抗議するとともに、日本政府に対しては、このような不当な圧力に一切応じないことを要望する。 加えて、こうした誤解を積極的に解消し、国連人権協約機関のメカニズムおよび意義について広く啓発・教育を行うとともに、この機会に日本の外交政策として人権条約機関を尊重し強化していくことを明らかにするよう要請する。 以上
________________________________________ [1] UN Doc.CEDAW/C/JPN/CO/7-8. [2] UN Doc. A/53/ 38/Rev.1 (1998), p.3. [3] Addis Ababa guidelines on the independence and impartiality of members of the human rights treaty bodies, UN Doc. A/67/222 (2012), annex I. [4] 「当委員会は、前回の総括所見(CEDAW/C/JPN/CO/6, paras. 37 and 38)を想起し、また未解決の『慰安婦』問題に関して他の国連人権機関が行った数多くの勧告、例えば人種差別撤廃委員会(CERD/C/JPN/CO/7-9)、自由権規約委員会(CCPR/C/JPN/CO/6)、拷問禁止委員会(CAT/C/JPN/CO/2)、社会権規約委員会(E/C.12/JPN/CO/3)、国連人権理事会の特別手続の任務保持者や普遍的定期審査(A/HRC/22/14/Add.1, para.147-145 et seq.)の勧告に言及する。『慰安婦』問題を解決しようとする締約国の努力、最近では2015年12月28日に発表された締約国と韓国の間の二国間合意を通じてのものに注目しつつ、当委員会は、締約国が前述の諸勧告を実施していないこと、そして、指摘されている違反は当該条約が締約国にとって発効した1985年より前に起こったものであるから『慰安婦』」問題は委員会の権限外であるとする締約国の主張を遺憾に思う。当委員会は以下のことをさらに遺憾に思う。(a) 『慰安婦』に対して行われた侵害に対する締約国の責任に関して、近年、公的な職にある者や指導的立場にある者による発言が増えていること、また『慰安婦』問題が『最終的かつ不可逆的に解決した』とする大韓民国との二国間合意の発表は被害者中心アプローチを十分に採用していないこと。(b) 深刻な人権侵害を受けた『慰安婦』には、締約国から公式で曖昧さのない責任を認められることなく死去した者がいること。(c) 締約国が他の関係国の『慰安婦』被害者に対して国際人権法上の責務を果たしていないこと。(d) 締約国が「慰安婦」問題に関する教科書の記述を削除したこと」(28項)。「当委員会は前回の勧告(CEDAW/ C/JPN/CO/6, paras. 37 and 38)を繰り返し述べるとともに、『慰安婦』問題は、被害者に対する効果的な救済の不足が継続している現状のもとでは、第二次世界大戦中に締約国の軍隊によってなされた侵害行為の被害者・サバイバーの権利に継続的に影響を与える深刻な違反を発生させるものであると考える。よって、当委員会は、このような違反を扱うことに時間的管轄による妨げはないと考え、締約国に以下を求める。(a) 指導的立場にある者や公職者が責任に関して軽率な発言を止めることを確実にすること。こうした発言は被害者に再び心的外傷を与える。(b) 被害者の救済への権利認定をし、それに応じて損害賠償、名誉回復、公式謝罪とリハビリテーション・サービスを含む十全で効果的な救済と被害回復措置を提供すること。(c) 2015年12月に大韓民国と共同発表した二国間合意を実施するにあたって、締約国は、被害者・サバイバーの見解を十分に考慮し、彼女たちの真実と正義と被害回復に対する権利を確保すること。(d) 教科書に『慰安婦』問題を適切に取り入れ,生徒及び学生や一般の人々に歴史の事実が客観的に提供されることを確保すること。(e) 次回の定期報告において、被害者・サバイバーの真実、正義及び被害回復の権利を保障するために行われた協議その他の施策の状況について情報を提供すること」(29項)。 --
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