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2018年09月25日15時03分掲載
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コラム
差別二題 根本行雄
『週刊 新社会』紙に、辛淑玉(シン・スゴ)さんが「たんこぶ」という題名のエッセイを連載している。このエッセイを読んでいると、自分のなかに差別意識があることに気付かされることが多い。差別は、じつに根深い。差別をなくしていく闘いは、根気よく続けていくしかない。人類史の課題である。
◆「新潮45」問題と差別
月刊誌「新潮45」が10月号で、性的少数者(LGBTなど)を「生産性がない」と否定した自民党の杉田水脈衆院議員を擁護する特集を組んだ。版元のツイッター公式アカウントの一つ「新潮社出版部文芸」が特集を念頭に置いて同社創立者の言葉を投稿した。特集への批判的な意見が次々にリツイート(拡散)され、他の出版社がこれを応援するという異例の事態となっている。出版不況下の部数減を背景に「ヘイト路線」や「炎上商法」に走っているのではないかとの指摘や、「なぜ差別に加担するのか」との疑問が出版界や書店業界、論壇の間で噴き出している。差別は、じつに根深い。「新潮45」問題も、氷山の一角である。
杉田氏の寄稿は「新潮45」誌の8月号が掲載された。彼女は「LGBTカップルのために税金を使うことに賛同が得られるのか。彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり生産性がない」などと主張した。「ナチス・ドイツと同じ発想」「相模原障害者殺傷事件の植松聖被告と重なる」と批判が広がり、自民党本部前で抗議集会も開かれた。今回の特集について杉田氏の事務所は取材に対して「(杉田氏への)殺害予告の捜査に進展がなくコメントできない」と回答した。
性的少数者(LGBTなど)を「生産性がない」と否定する杉田水脈衆院議員の寄稿を掲載した月刊誌「新潮45」が、9月18日発売の10月号で「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」と題した特集を組んだ。杉田氏への批判は「見当外れの大バッシング」だとし、教育研究者の藤岡信勝氏や文芸評論家の小川栄太郎氏ら7人の寄稿を掲載している。
版元のツイッター公式アカウントの一つ「新潮社出版部文芸」が創立者佐藤義亮の言葉「良心に背く出版は、殺されてもせぬ事」を投稿した。特集への批判的な意見が次々にリツイート(拡散)され、20日午後4時現在、2万5000件も拡散しているという。 さらには「岩波文庫編集部」のアカウントも19日に<新潮社出版部文芸さんの志、共有したいと思います>と投稿し、「河出書房新社」も佐藤の言葉を引き<これは新潮社さんの社是>と投稿した。他の出版社がこれを応援するという異例の事態となっている。
発行元の新潮社は21日、「ある部分に関しては、あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられました。差別やマイノリティの問題は文学でも大きなテーマです。文芸出版社である新潮社122年の歴史はそれらとともに育まれてきたといっても過言ではありません。弊社は今後とも、差別的な表現には十分に配慮する所存です」との佐藤隆信社長名のコメントを発表した。
◆入れ墨
9月21日、ラグビーの国際統括団体「ワールドラグビー」は、来年、開催されるラグビーワールドカップ日本大会の期間中、公共のプールやフィットネスジムなどを利用する際には、タトゥーを隠すよう選手やサポーターに対し、呼びかけた。 この呼びかけについて、「ワールドラグビー」は、日本ではタトゥーが暴力団を連想させることがあり、抵抗を感じる人に配慮するための措置だと説明している。 タトゥーは海外では文化やファッションとして捉えられていている。ラグビーの強豪ニュージーランドではタトゥーは先住民族・マオリの文化で家系や社会的地位を表していると言われている。複数の代表選手がタトゥーを入れているが、ニュージーランドの代表チームは「日本の文化を尊重する」と呼びかけに応じる方針で、ほかの出場チームからもこれまでのところ異論は出ていないということである。
上のような内容の記事を毎日新聞で読んだ。 現代の日本では入れ墨・タトゥーに対する抵抗感が根強い。ネモトには、いつごろから、入れ墨に対して抵抗感を感じるようになったからはわからない。 銭湯などの公衆浴場や、温泉施設や、プールなどでは入れ墨がある人の利用を禁止する施設も少なくない。 観光庁が平成27年に全国のホテルと旅館を対象に行ったアンケートによると、回答があったおよそ600施設のうち、入れ墨がある人の浴場の利用を断っている施設はおよそ56%であるという。 先月、タレントのりゅうちぇるさんが両肩に妻と子どもの名前を刻んだタトゥーの写真をインスタグラムに投稿したところSNSには「本当に身勝手な親だ」「タトゥーの件で結構がっかり」といった批判の声が相次いだという。こうした意見に対し、りゅうちぇるさんは、「こんなに偏見ある社会どうなんだろう。仕方ないよね。ではなく、僕は変えていきたい」と投稿し、ツイッターなどには支持する意見も寄せられるという。
古代の中国においては、入れ墨は刑罰のひとつになっていた。しかし、入れ墨もまた、同じ国であっても、その時代によって、その意味がかわったり、利用の仕方が変化している。 日本の縄文時代に作成された土偶の表面に見られる文様は、入れ墨を表現したものと考えられている。弥生時代にあたる3世紀の「倭人」について記した『魏志倭人伝』のなかには、「男子皆黥面文身」との記述があり、「黥面」とは顔に入れ墨を施すことであり、「文身」とは身体に入れ墨を施すことであるとされている。 江戸時代、罪人であることを明示するために、腕に入れ墨を入れていたこともあった。
ネモトも、入れ墨・タトゥーに対する抵抗感がある。最近は、サッカーの試合を見ていると、入れ墨を入れている選手が多い。特に、海外の選手には多い。テレビで、サッカーの試合を見ていると、なぜ、入れ墨を入れているのかなあと違和感を覚えてしまう。『週刊 新社会』紙に、辛淑玉(シン・スゴ)さんが「たんこぶ」という題名のエッセイを連載している。このエッセイを読んでいると、自分のなかに差別意識があることに気付かされることが多い。差別は、じつに根深い。子ども時代に、無自覚のうちに、覚えこまされた差別意識がトラウマとなり、心の奥深くにまで根をはっていることに気付く。 差別をなくしていく闘いは、根気よく続けていくしかない。人類史の課題である。
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