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2018年11月04日15時41分掲載
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人権/反差別/司法
タイムスケジュールと規制ありき問題だらけの東京都「人権」条例
2018年10月5日、東京都議会9月議会で東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例(以下、東京都「人権」条例)が自民党の反対、かがやけの退席という反対少数で可決、成立した。 東京都「人権」条例は、 ● 前文 ● 1章 オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現 ● 2章 多様な性の理解の推進 ● 3章 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進(いわゆるヘイトスピーチ規制法を受けた取組推進。以下、ヘイトスピーチ対策) ● 附則 で構成されている。
東京都「人権」条例は前文の中で「東京都人権施策推進指針に基づき」と記載しているが、2015年改訂の東京都人権施策推進指針は、 �―�性、�∋匐 ↓9睥霄圈↓ぞ祿下圈↓テ穎駄簑蝓↓Ε▲ぅ未凌諭后↓С姐饋諭↓┌硲稗峇鏡�者・ハンセン病患者等、��犯罪被害者とその家族、��インターネットによる人権侵害、��北朝鮮による拉致問題、��災害に伴う人権問題、��ハラスメント、��性同一性障害者、��性的指向、�囲�上生活者、�瑛諭垢平邑�課題、 という17の個別具体的な人権課題を掲げ、“現状”と“施策の方向性”を示している。
それと比較すると、東京都「人権」条例は“多様な性の理解の推進”“ヘイトスピーチ対策”の2つしか個別具体的な人権課題を取り上げていない。 この点について、立憲・民主から「東京都人権施策指針に掲げられている17の人権課題を含めて取り組むこと」という付帯決議案が提出されたが、議会で否決され、17の人権課題を含む点が明確になったとは言いがたい。
各章にも問題がある。 第1章は“人権尊重の理念”としてオリンピック憲章を掲げているが、それが人権基準としてふさわしいのかという問題がある。 男性と女性という身体的特徴を前提とする競技体系が前提に、女性だけを対象にした性別検査が廃止されたのは1993年であり、オリンピックの根本原則として 「オリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」 と規定されたのは2017年からで、最近のことである。 そのオリンピック憲章ですら取り上げている言語や宗教、政治的またはその他の意見、財産、出自などの人権課題をなぜ無視するのか。
オリンピックと言えば、過大な施設建設を開催都市に強制するため、どの都市でも環境破壊と住民の追い出しがつきものである。 東京でも、メインスタジアムの新国立競技場建設を建設するため、デモや展示会会場として使われていた都立明治公園を建設敷地とし、多くの樹木を伐採した。失われた都立明治公園の面積を確保するため、近隣の都営住宅である都立霞ヶ丘アパートを取り壊し、住民を追い出した。追い出された住民には何の非もないにも関わらず、通常の都営住宅の建て直しと同様の扱いしかせず、引っ越し先も神宮前、新宿若松町、百人町と3箇所分散させ、団地内コミュニティをズタズタにした。 オリンピック建設工事に伴う事故も発生している。 2017年に新国立競技場で働いていた現場監督が自殺。遺族代理人の弁護士の申し入れを受け、2017年7月に東京オリンピック・パラリンピック準備局長名で『東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の会場整備における法令順守の徹底等について』という文書を担当局宛てに出したにも関わらず、2018年1月には晴海の選手村作業現場で労働者がなくなる事故が発生している。 オリンピック開催前に施設建設が終了していなければならないという縛りがきつく、オリンピック開催が近づけば近づくほど労働が強化され、その結果として事故が発生する可能性が高くなる点を考えずに、オリンピック万歳という姿勢で人権尊重の理念が実現されるのか。
第2章の“多様な性の理解の推進”に関して「性的指向には無性愛も含まれるのか」という議会質問に、「無性愛も含まれる」旨の答弁をしたが、2017年1月に「結婚等気運情勢のためのイメージ動画の作成について」を企画、カップルと結婚を礼賛する動画を作ったのは東京都である。 そして、この動画がWEB公開された2018年2月に、東京都「人権」条例の知事ブリーフィングが行われており、どこに政策の整合性があるのか。 また、都議会の審議の中で「性自認及び性的指向等に関する専門相談窓口」の設置が明らかになったが、具体的な契約日時について質問がなかったので、契約関係の日付を情報公開請求で確認すると、2018年9月4日に社会的包摂サポートセンター代表理事と契約をしていることが分かった。 このことから、東京都「人権」条例と関係なく、多様な性の理解推進の政策をやろうと思えば、もっと早くから実行できたはずである。
こういう東京都が定める基本計画や必要な取組について、当事者の意見が反映されるのだろうか。 東京都「人権」条例のパブリックコメントは全体で1085件あり、その中で多様な性の理解の推進は731件と圧倒的な意見が寄せられたにも関わらず、条例では具体的な中身に乏しい事例から、東京都に過度の期待をすると裏切られる可能性があるのではないか。
第3章の“ヘイトスピーチ対策”は、東京都「人権」条例の8条から18条まで該当し、この条例の中心を占めている。 具体的な中身は、施設の利用制限と拡散防止措置及び公表で、取り締まりばかりである。 表現活動は「集団行動及び集団示威運動並びにインターネットによる方法その他手段により行う表現行為」と定義され、あらゆる表現活動が規制対象になる。 「何が不当な差別的言動に該当するのか、ガイドラインを示せ」との議会質問に対し、「明示された表現以外は大丈夫と判断されかねないから示さない」旨の答弁をし、“どういう発言が該当するか”の啓発をする気が見られない。 それにも関わらず「公の施設の利用制限について基準を定め」、「表現活動に係る表現の内容の拡散を防止するために必要な措置を講」し「表現活動の概要等を公表」できると規定する。
そして、知事が「表現活動が不当な差別的言動に該当するおそれがあると認めるとき」は「審議会の意見を聴かなければならない」とあるが、審査会委員は、知事が「適当と認める者のうちから」選ばれる。 小池都知事は、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼文取り止めについて質問され、 「関東大震災におけます朝鮮人虐殺に関してでございますが、この件はさまざまな内容が史実として書かれていると承知をいたしております。何が事実かにつきましては、これまで申し上げてきたとおり、歴史家がひもとくべきだと考えておりまして、私は東京都知事として、東京で起こった甚大な災害と、それに続くさまざまな事情で亡くなられた全ての方々に対しまして、哀悼の意を表するところでございます」と回答。 関東大震災における朝鮮人虐殺については、内閣府におかれた中央防災会議の『災害教訓の継承に関する専門調査会報告書』1923 関東大震災【第2編】でも触れられている事実にも関わらず、そのことを明言せずに歴史家に評価を丸投げする。 小池都知事名のある2016年関東大震災朝鮮人犠牲者追悼文には 「この極度の混乱のなか、多くの在日朝鮮人の方々が、言われのない、被害を受け、犠牲になられたという事件は、わが国の歴史の中でも稀に見る、誠に痛ましい出来事でした」 という記載があったが、関東大震災都内戦災遭難者秋季慰霊大法要への追悼文には上記趣旨の記載は見られない。 小池都知事は、歴史的事実とそれを前提とした反省を軽視している。このような知事が選ぶ審査会委員が、歴史認識と深い関係があるヘイトスピーチに対し、まともに判断できるのか。
そして、このような条例になったのには東京都の明確な意図がある。 1月15日資料『オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念を実現するための条例制定にむけたスケジュール』で、都議会2定までに条例骨子素案、専門家からの意見聴取など、条例骨子(案)、パブリックコメント、3定に議案提出及び議決と、条例に関してのタイムスケジュールを決めた。
2月27日資料『オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念を実現するための条例(仮称)専門家からの意見聴取について』では、オリンピック憲章、LGBT、ヘイトスピーチ分野のみ専門家選任。 「個別に意見聴取を行い、会議体形式での意見聴取は行わない」、「意見聴取に確保できる期間は約1ヶ月半」など専門家の意見を取り入れて、少しでも良い条例を作るよりも、当初の予定を守ることを最優先する意図を明確化。 それどころか「アドバイザーからの意見の概要を公表することにより、行政側のみでなく、外部の意見を取り入れたことを強調」と、専門家の意見を隠れ蓑にするという行政の本音を見せている。
こういう意図は最後まで続き、6月の都議会総務委員会要求資料の『都内におけるヘイトスピーチ等の件数(過去5年間)』では、2012年4月から2015年9月までの数字のみ示し、ヘイトスピーチ規制法制定後の数字を一切明らかにしない手法をとった。 ヘイトスピーチ規制法ができてヘイトスピーチが増えたのか減ったのかという具体的事実を明らかにしない東京都の姿勢は、立法事実すら不明確でも構わないとしか思えず、東京都「人権」条例という重要条例を提出しようという真摯さに欠けている。 この東京都「人権」条例を原案可決した都議会議員も怠慢だと言わざる得ない。
想定される具体例を1つあげておく。 それはヘイトスピーチへの対処の申し出である。 東京都と同様に、拡散防止措置規定のある「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」は審査会委員を5人としており、2016年度27件、2017年度7件を取り扱っておきながら、ヘイトスピーチに該当するかしないかの判断まで至らず、来年度まで持ち越しの件数が24件と、目的達成には人員が足りない。 東京都で拡散防止措置規定を設ければ、取扱件数は大阪市よりも多くなるだろう。なぜ、このような事態を想定できないのか。私には理解できない。 最後に、ヘイトスピーチ規制法は第4条で“地方自治体の責務”を規定しており、他の自治体でも東京都同様に、他の人権課題と抱き合わせでヘイトスピーチ規制の条例化の危険性が考えられる。 国会の法律と違い、マスコミが条例案を逐次解説をし、批判的に報道することは見込めない。 市民一人一人が条例制定過程の資料をきちんと入手して実態を暴露し、泉佐野市民会館事件判例など、多くの先人が裁判闘争も含めて集会の自由を守るために闘ってきた伝統を手放さずに頑張ってほしい。 (デモ・集会くらい自由にやらせろ!実行委員会 アツミマサズミ)
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