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2019年01月15日23時14分掲載
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欧州
ある高校の抗議デモから、イタリアを考える 〜 チャオ!!イタリア通信(1)
イタリアでは、イエスの誕生日であるクリスマスから始まり、年末年始を経てエピファニアと東方三博士がイエスを来訪する日である1月6日までが冬のバカンスとなります。 そして、今年7日から学校(幼稚園から高校まで)が始まりましたが、そこで飛び込んできたのがこのニュースです。
まさに学校が始まる1月7日、トスカーナ州の海沿いにある都市リヴォルノで、高校生とその親、教師たち約2500名が、市に対して抗議のデモを行いました。 高校の名前は「フェデリゴ・エンリケス」。リヴォルノ出身の数学者の名前をつけたこの高校は、いわゆる理数系の高校です。 なぜ、彼らが抗議デモをすることになったのか。 それは高校の建物に問題がありました。建物が古くなり、壁が一部剥げ落ち、火事に対する設備も基準を満たしておらず、消防署からは「利用しないほうがいい」という悪いお墨付きをもらったのです。 しかし、こうした状況にも関わらず、なかなか問題が解決しないのがイタリアの特徴です。 学校側は、一部のクラスを別の場所に移すとか、クラスを2つに分けて交替で授業するとか、そんなことを考えています。ただ、それらの解決策は、生徒や教師、父兄の納得いくものではありません。そこで、抗議のデモとなったのでした。
こうしたニュースは、このリヴォルノの高校だけではありません。 ニュース番組で学校の建物が古くて天井の一部が落ちてきたというニュースを、時々見かけます。2016年10月のレップブリカ紙では、過去3年間に117の学校で天井や壁の一部が落ちてきて、18名の生徒が負傷しているという報道がありました。 こういうニュースを見ると、いつも思うのですが、イタリアは1000年以上も前の素晴らしい建築物がたくさん残っているのに、そこから何も学習してないのかと、本当に残念ですし、憤りさえ感じます。
私は、こちらで子どもたちに日本語を教えていて、イタリアの小学校の教室を借りて授業をしたことがあります。そこで驚いたのが、小学校のトイレにトイレットペーパーが置いてないということでした。イタリアに住んでいると、日本ではあり得ないことが普通にあり、驚いたり、憤慨したりすることがありますが、学校の施設が整ってないというのは驚きを通して、大きな社会問題だと感じます。 そして、私の子どもは今、公立幼稚園に通っていますが、そこは子どもの人数が増えて教室が足りなく、以前は食堂として使っていたところを現在は教室にしています。給食は玄関から入ってすぐの広間に机と椅子を並べて行っています。父兄からは、衛生上の問題が持ち上がったことがあります。先生たちもこの状況でいいとは思っていませんが、なにせ市が動かない限りは何もできません。
また、学校のストライキが多いというのも日本ではあり得ないことです。 私の子どもが通う幼稚園では、教師だけでなく、用務員たちのストライキもあります。2ヶ月に1回ぐらいあり、父兄からは不満の声が上がっています。イタリアは共働きの夫婦が多いので、子どもを預けられる人がいないと困りますし、子どもは小学校まで通学は同伴しなくてはいけないので、送り迎えが大変です。 ストライキをする時は、数日前に通告が出ます。たいてい午前中だけの授業で終わります。私の義母は小学校の先生をしていましたが、昔は何の通告もなくストライキをしたので、子どもを送りに行ったら学校が閉まっていたということもあったそうです。その義母が驚くほど、最近はストライキが多いので、学校の労働条件が悪いことが分かります。
未来を担い、国を作っていく子どもたちは“国の宝”とも言えますが、その子たちを取り巻く環境がひどいのには愕然とします。 「学校に行けば普通に勉強できる環境がある」という当たり前のことが実行されず、こういう問題が存在しても、なかなか解決できないのがイタリアです。 とにかく、いろいろな手続きがありすぎて、簡単なことが複雑になってしまうのがイタリアの欠点なのですが、学校や教育環境に関しては、本当に素早い解決が求められます。(サトウ・ノリコ)
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