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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年06月06日14時40分掲載
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アジア
ミャンマー、遠ざかる法治国家 野上俊明(のがみとしあき):哲学研究
内戦終結を第一目標に掲げて政権に就いたアウンサン・スーチー氏ですが、来年には任期が満了するというのに、国軍の国内の少数民族への抑圧や攻撃はいっこうに収まる気配をみせていません。ロヒンギャ危機のあったラカイン州では、今度は政府軍とアラカン軍との戦闘が激化し、あらたにアラカン族仏教徒3万人の難民が生まれていることが報道されています。
そうした中、ロヒンギャ危機の調査報道に従事し、治安部隊の殺害、放火および略奪への関与を明らかにしたのは、ロイター所属の二名の現地記者でした ― ピューリッツア賞受賞。この二人に対し、ロヒンギャ虐殺の発覚を恐れた国軍=警察は機密漏えいなる事件をでっち上げ、司法当局も国軍の意向に沿って有罪判決を下し、この4月には、上訴審で7年の禁固判が確定しました。二人が不当逮捕され、訴追されるなかで、スーチー氏はこの訴訟は「表現の自由とは無関係」と述べ、法を破ったために投獄されたにすぎないとして、国軍=警察、裁判所のやり方を支持しました。その法律というのは、イギリス植民地時代にできた機密保護法という弾圧法規であり、そもそも民主化に伴いいち早く廃棄されるべきものでした。いずれにせよ、スーチー氏の恥ずべき立ち位置を、世界に知らしめた政治事案でした。しかし国連はじめ西側世界から裁判の不当性が轟々たる非難を呼び、その圧力に屈してようやく大統領恩赦というかたちで二人は釈放されました。国際世論に配慮しーーEUは最恵国待遇の取り消しを警告していました――、他方国軍の顔も立てるという苦肉の策の恩赦でしたが、結局はスーチー氏の恥の上塗りの結果に終わりました。
ところがこれで一件落着といかなかったところが、ミャンマー政治の怖さです。 2018年4月にロヒンギャ虐殺の廉で10年の禁固刑判決を受けた彼ら7名の国軍兵士は、刑期の1/10にすら満たない期間刑務所にいただけで、昨年11月にすでに釈放されていたというのです(ドイツ日刊紙「ターゲスツァイトゥング 5/28)。国軍兵士による犯罪への処罰を、民政府には決して許さないという国軍の強い意思を感じる措置でした。国軍との融和を最優先したスーチー政権はあまりにも無抵抗であり、無力でした。
丸山日本大使は、事あるごとにロヒンギャ問題に国際社会が関与しミャンマー政府に圧力をかけることに難色を示してきましたが、それは国軍とスーチー政府を免罪する日本政府の意向を受けてでした。これに対し国連難民高等弁務官事務所は、解決にはロヒンギャへの国籍=市民権が必要条件であるとし、とりあえずの人道的措置として、バングラデシュに避難している難民約27万人に対し、身分証明書を発行したことを報告しています。
つい先日、ミャンマーの闘うジャーナリズムの先頭に立つ「イラワジ紙」の主幹チョーゾワモウ氏は、この調子ではミャンマーの民主化にはもう一世代30年の月日を要すると嘆きました。しかしそれは後ろ向きの見方です、88世代がそれではどうするのですか、その先安定した世界が続きそうな気配はしていませんよ、動乱に備えましょう、と思わず心の中で呼びかけました。
野上俊明(のがみとしあき):哲学研究
ちきゅう座から転載
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