タイ国家有害物質委員会は１１月２７日、１２月１日から施行予定のグリホサートの禁止を解除し、パラコート、クロルピリホスの禁止を２０年６月１日まで延期すると決定した。この禁止解除の決定は、タイ国内の農民や流通業者の反対に加え、米国の経済報復と国際的な農薬企業による圧力に屈した形だ。今回のタイの決定についてブルームバーグは２７日、「タイは、農家、米国政府、農薬企業のロビイストから圧力を受け、３農薬を禁止を撤回した」と報じた。（有機農業ニュースクリップ）
同委員会は１０月２２日、グリホサートとパラコート、クロルピリホスの３農薬について、禁止を求める世論の高まりを受けて、３農薬の生産、輸入、輸出、所有の全面的な禁止を１２月１日から実施すると決定していた。この決定に、代替農薬が高価なことなどから農民団体や在庫を抱えることになる流通業者が反対していた。
農民や流通業者など２千人は１１月２６日、１２月１日からの実施の延期を求め政府庁舎へデモをかけたという。その直後、任期満了により委員が一新されたタイ国家有害物質委員会は、今回の禁止解除を決定した。デモをかけた「農民」がどのような組織かははっきり分からない。
・Bonkok Post, 2019-11-27
New committee countermands ban on toxic farm chemicals
https://www.bangkokpost.com/thailand/general/1803389/new-committee-countermands-ban-on-toxic-farm-chemicals
・Bloomberg, 2019-11-27
Thailand Decides Against Pesticides Ban After U.S. Pressure
https://www.yahoo.com/news/thailand-decides-against-pesticides-ban-094606730.html
・Business Times, 2019-11-26
Demonstrators call on Thai government to delay pesticides ban
https://www.businesstimes.com.sg/government-economy/demonstrators-call-on-thai-government-to-delay-pesticides-ban
タイのグリホサート禁止は国際的な反対圧力を受けていた。米国は１３億ドル相当の特恵関税を停止するとともに、決定後に実施の先送りを要求する書簡を首相に送っていた。１０月のタイ国家有害物質委員会の決定により、グリホサート製剤の輸出停止に加え、農産物や食品について検出されてはならない区分に設定されるため、米国はタイ向けの小麦や大豆など農産物の輸出が大きな打撃を受ける、と懸念しているとみられていた。
国際的な農薬業界団体のクロップライフ・アジアが１１月、農業セクターの混乱の可能性を理由に３農薬禁止の延期をプラユット首相に要請したと報じられていた。
・Bankok Post、2019-10-26
US glyphosate letter riles govt
https://www.bangkokpost.com/thailand/general/1780134/us-glyphosate-letter-riles-govt
・Bankok Post, 2019-10-27
US move 'a retaliation' for toxin ban
https://www.bangkokpost.com/business/1780574/us-move-a-retaliation-for-toxin-ban
（参考）
・グリホサート関連年表
http://organic-newsclip.info/nouyaku/glyphosate-table.html
【関連記事】
・タイ グリホサート禁止を正式決定
http://organic-newsclip.info/log/2019/19101018-1.html
・タイ グリホサートなど３農薬を年内に禁止へ
http://organic-newsclip.info/log/2019/19101011-1.html
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