パリ左岸に実際にある書店についてのカナダ人の青年の回想録。私は観光二階建てバスで前を通ったことしかないけれど、外観だけでもバッチリ目をひくような忘れられない雰囲気。次回は必ず訪れてみたいと思っていたお店です。
「優しき日々」というタイトルでもあり、パリ、本、と言う切り口で思わずときめいてしまうような内容かと思いきや、ご用心。 愛すべき名物店主のカリスマ頑固老人と、この書店に住みついた物書きを夢に見るボヘミアン達との希有な日々についてが描かれています。
ビックリするような話ですが、このお店はかつて貧しい作家や旅人に無償でべッド(または床)、とスープを提供していました。そしてたいていの人はそこでしばらく対価として労働するのです。
店内には天井まで積まれた本棚の間に執筆できるエリアやべッドが点在していて、彼らは夜になるとそのベッドで眠ります。
そこで、すみません、現実的な私は、一泊ならまだしもお風呂はどうするのだろうなどと、考えてしまいましたが、そんなものはないようでした・・・。 読み進むにつれ、悲惨さはあまりないけれで、食べているものはまずそうだし、ベッドはダニの巣窟になっていそうで、それが、夢があっていいな、と言う気持ちに勝ってしまいました。
この本は2005年に書かれた物で、今は店主が替わっているので、ここに書かれた状態ではないでしょう。私のオススメはこのお店のwebsiteの魅力的な写真をご覧になりながら、この本を読まれること。
そうすると、汚そう、と思う気持ちをやや押さえつつ、人との結びつきや、青春時代のきらめきにより思いをはせられるはず。
そして、今は誰がお店をやっているかも楽しみに読み進んでください。どちらにせよ。次回は行く。
(本文より)
-「みんなここで自分を発見するのさ」
-希望は世にも美しい麻薬である。
-「できるだけ少ない金で暮らして、家族といっしょに過ごしたり、トルストイを読んだり、本屋をやったりすればいいじゃないか。ばかな話だ」
スギハラ シズカ (東京下町に暮らすウェブデザイナー)
■最近読んだ本 「フランスのポスター」(京都工芸繊維大学美術工芸資料館デザインコレクション) スギハラ シズカ
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202007121205560
■最近読んだ本 又吉直樹著「東京百景」 スギハラ シズカ
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202006091549002
■最近読んだ本 松浦弥太郎著「着るもののきほん100」 スギハラ シズカ
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202005051608362
■今週読んだ本 原田マハ著「デトロイト美術館の奇跡」 スギハラ シズカ
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202004141248592
■今週読んだ本 「山内マリコの美術館は一人で行く派展」 スギハラ シズカ(東京下町に暮らすウェブデザイナー)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202004061510041
■最近読んだ本 梶山季之作「せどり男爵数奇譚」 スギハラ シズカ
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202006142152350 ■最近読んだ本 柚木麻子作「BUTTER バター」 スギハラ シズカ
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202007212102482
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