米国連邦控訴裁判所は6月17日、米国環境保護庁(EPA)に対して、除草剤グリホサートについてヒトや絶滅危惧種へのリスクに対して十分な評価を行っていないとして再評価を命じた。農業労働者や環境、自然保護などの団体が20年3月に提訴していた。判決は3人の判事の一致した判断。(有機農業ニュースクリップ)
原告の一つ、フロリダ農業労働者協会(Farmworker Association of Florida)のエコノモスさんは、「私たちはこの重要な判決を歓迎し、拍手を送ります」「グリホサートへの暴露で苦しむ多くの農民や造園業者にとっては遅すぎる判決ですが、EPAがこの有毒な農薬による病気や疾患から未来の労働者を守るために迅速に行動することを望みます」とコメントしている。
米国環境保護庁が20年1月、除草剤グリホサートを再登録したことに対して、原告グル−プはグリホサートのホルモンかく乱の可能性、絶滅危惧種への影響を完全に評価できなかったにもかかわらず、農薬の継続的な販売を許可したとして提訴していた。
この訴訟の主任弁護士であるエイミー・ヴァン・ザウンはこの判決を歓迎し、「EPAの《がんのリスクがない》という結論は、精査に耐えるものではありませんでした。今日の勝利は、グリホサートに暴露された農民やその他の人々にとって大きなものです。また、EPAがグリホサートを認可する前に絶滅危惧種の安全性を確認する必要があることを裁判所が認めたことで、危機に瀕した野生生物も勝利を収めました」とコメントしている。
・Center for Food Safety, 2022-6-17 Federal Court Rejects Glyphosate Registration Decision Because EPA Ignored Cancer Risks, Endangered Species Risks https://www.centerforfoodsafety.org/press-releases/6659/federal-court-rejects-glyphosate-registration-decision-because-epa-ignored-cancer-risks-endangered-species-risks
・連邦控訴裁判所 判決 https://www.centerforfoodsafety.org/files/ca9_glyphosate-decision_82995.pdf
■欧州化学機関(ECHA) グリホサートの評価を変えず
EUは12月で農薬登録の期限となるグリホサートの再評価を進めているが、欧州化学機関(ECHA)のリスクアセスメント委員会(RAC)は5月30日、これまでの評価を変更せず、グリホサートを発がん性物質に分類することは正当化されないと再度結論づけたと発表した。
この決定を受けて、欧州の環境系、農業系の14団体は5月31日、「欧州化学機関は今回もまた、産業界の研究と主張に一方的に依拠した」と非難する声明を発表した。
声明は、欧州化学機関の「利用可能な科学的証拠は、グリホサートを特定標的臓器毒性、または発がん性、変異原性、生殖毒性物質として分類する基準を満たしていない」という結論を強く否定するとしている。そして、欧州化学機関は、いくつかの査読付き論文で実証されているように、優れた科学的実践だけでなく、独自のガイドラインやEU規制さえにも違反し、グリホサートの発がんメカニズムを説明した実験室での研究やグリホサートに暴露された人々のDNAの損傷と発がんのリスク増加を報告した疫学研究を無視したとしている。
・ECHA, 2022-5-30 Glyphosate: no change proposed to hazard classification https://echa.europa.eu/-/glyphosate-no-change-proposed-to-hazard-classification
・PAN Europe, 2022-5-31 Glyphosate ECHA classification: denial of science and disrespect of EU law https://www.pan-europe.info/press-releases/2022/05/glyphosate-echa-classification-denial-science-and-disrespect-eu-law
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