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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2023年03月22日06時06分掲載
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国際
NYTでも報道されたパリのゴミの山 ゴミ回収労働者たちが年金制度改正案に反対してストライキ
先日、フランスで年金制度改革法案をボルヌ首相が憲法49条3項という下院での採決なしに法制化したことを書きましたが、その少し前にニューヨークタイムズはパリのゴミの山を取り上げていました。(Garbage Mounts in Odorous Last Stand Against France’s Pension Change)これはゴミ回収労働者たちが、年金受給年齢を2年引き上げて64歳まで労働させる改正案に対抗して行っていたストライキでした。パリだけじゃなく、他の都市でも一斉に行われていました。花の都パリもゴミの袋が通りに高く積み上がる有様。
ニューヨークタイムズ記者が書いているのですが、ゴミ回収労働者たちの抗議には、早朝から働くこの労働の肉体的な厳しさを可視化しようという狙いがありました。たかが2年と大統領は考えるかもしれませんが、労働者にとって「2年」の重みは様々で、最も重大な負担になって来る仕事をしている人々こそ守られなければならなかったはずなのです。コロナ禍でも休まず仕事をしてきた日々の暮らしに欠かせないエッセンシャルワーカーです。そして彼らの労働の年齢的限界は〜スポーツ選手が室内の事務職よりも40代、50代で厳しくなるのと同様に〜仕事によって、厳しさの内実も様々である、ということです。そして、一般に貧しい人々は富裕層よりも平均的に若くして亡くなる、という統計データもあります。高齢化と一口に言っても、細かく見ていくと、様々なリアリティがあります。過酷な労働を死ぬまでさせるような社会であってはならないはずです。
私はフランスのインターネットの映像番組で、やはりこの問題を投げかけた番組を見たことがあります。そこで取り上げられていた労働者はアフリカのコートジボアールから来日した黒人の女性労働者で、午前3時台に目を覚まし、5時には家を出て、地下鉄を乗り換え、2時間近くかけて職場にたどり着くと、掃除の仕事をして1日中、体を動かしていました。子供が5人いる62歳の女性だったのですが〜ちょうど、この改正案とぴったりの労働者を見つけて取材したのでしょう〜彼女は子育てで10年以上、年金の積立金を払っていなかった年月があるため、ただでさえ給料が安いうえに、満額を受け取ろうと思うと70歳くらいまで働かなくてはならないだろう、というものでした。
フランス政府は、反民主的な手法を使って、過半数の市民が反対している法案を通してしまったのです。合法的だとしても、国民が支持していないために、正当性がない由縁です。このような事情は日本人と無関係ではないのです。というのは資本主義の資本家層は国境を越えてつながっているだけでなく、大学などを通して仲間でもあるのです。一方、こうした外国の事情をなるだけ庶民には報道を通して見せないようにして、分断して統治しようとしているのです。NHKの外国報道でも、そういうスタンスに2016年にガラッと変わりました。グローバリゼーションの時代、労働者は国境を越えて競争させられているため、他国で起きていることは必ず自国で意味を持つのです。しかし、その労働を取材できる調査チームは解体されたのです。いったい何のためなのでしょうか。放送は何のために行われるのか、ということも考えさせます。そうした中、ニューヨークタイムズがこの問題を書いたことはとても評価できます。
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