| 出入国在留管理庁は今月10日、今年5月に発表した「不法滞在者ゼロプラン」の実施状況に関する資料を公表した。入管庁の資料によれば、今年6月から8月に護送官が同行して送還された人は119人で、前年同期の約2倍に上った。また、今年1月から8月までの間に国費送還(護送官付き)された203人のうち、最も多かったのはトルコ国籍者の41人である。有識者や外国人支援団体からは「クルド人を狙い撃ちにしている」との批判が強まっており、今後もこうした送還が加速する懸念が広がっている。 
 〈各地で巻き起こる“ゼロプラン廃止”を求める草の根アクション〉
 
 10月15日の夜、「ゼロプラン廃止」を求める抗議アクションが国会正門前で実施された。現行の入管行政に疑問を抱く多くの市民が集まり、「ノーノーゼロプラン」「ゼロプランは廃止一択」と声を上げた。抗議の輪は幅広い世代に広がりをみせ、入管行政のあり方を根本から問い直す動きが高まっている。
 
 登壇した共産党の吉良佳子参院議員は、入管庁が外国籍の一家を強制的に送還している実態に言及し、「親子の分離をしてはならないという『子どもの権利条約』があるにも関わらず、入管庁は親と子どもを無理やり引き離し、送還している。これは明らかに条約違反である」と訴えた。同党の山添拓参院議員も「政府は『不法滞在者ゼロプラン』ではなく、『自民党裏金議員ゼロプラン』を打ち出すべきであり、ゼロにする対象を間違っている」と厳しく批判した。
 
 〈持病を患うクルド人難民もゼロプランの対象に〉
 
 1990年代後半に来日し、日本で20年以上暮らしていたクルド人難民Mさんも先月、トルコへ強制送還された。Mさんは今月、胆石症の手術をする予定であったが、入管庁はそうした事情を無視した。Mさんは日本で子どもたちと生活していたが、子どもたちは父親と別れを告げることも、持病のために服用している薬や着替えを渡すことさえ許されず、突然、家族を引き裂かれた。
 
 ゼロプランの計画実行を優先するあまり、入管庁が人権よりも数字を重視しているのではないかという疑念が、市民の間で強まっている。13年にわたりMさんを支援してきた「クルド人難民Mさんを支援する会」の周香織さんは「ゼロプランの影響はさることながら、高市政権の誕生により、今後ますます非正規滞在者への締め付けが強化されるだろう。過去には入管当局が特定の国籍者を次々と収容した後、チャーター機で一斉送還した例もあり、クルド難民や非正規滞在者に同様のことが行われるのではないかと懸念している」と警鐘を鳴らす。
 
 〈入管庁長官に「ゼロプラン反対」の声を届ける取組も〉
 
 都内で「入管法改悪反対アクション」に取り組む市民有志は今月、「STOP!ゼロプランはがきアクション」を開始した。呼びかけ人は、「難民申請者の送還、健康上重度の支障がある人の送還、未成年者の送還などの事例が相次いでいる」として、入管庁長官に対し「ゼロプラン反対」の声を届けようと呼びかけている。
 
 「不法滞在者ゼロプラン」は、数字の上では「成果」を生むかもしれない。しかし、その数字の裏側で切り捨てられているのは、人の生活であり、声であり、未来である。国が人を単なる統計として扱うとき、社会は確実に鈍感になっていく。ゼロを目指す政策の果てに、何が失われるのか。それを問う責任は、政府だけでなく、この国に暮らすすべての人にある。
 
 「STOP!ゼロプランはがきアクション」の詳細は以下を参照。
 
 https://x.com/nyukandemo/status/1977211335827243457?s=46 
 |