・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・入管
・市民活動告知板
・核・原子力
・国際
・文化
・欧州
・アジア
・イスラエル/パレスチナ
・人権/反差別/司法
・反戦・平和
・教育
・沖縄/日米安保
・難民
・医療/健康
・環境
・中東
・スポーツ
・司法
・政治
・コラム
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年09月10日
・2024年09月09日
・2024年09月08日
・2024年09月07日
・2024年09月06日
・2024年09月04日
・2024年09月03日
・2024年09月02日
・2024年09月01日
・2024年08月31日
|
|
2005年12月11日09時52分掲載
無料記事
印刷用
「犯罪加害者は生きて償いを」 被害者遺族の原田正治さんが死刑制度反対の訴え
「加害者に死刑が執行されても、被害者遺族は救われない。まず生きてもらうこと。それなくして償いはない」。「犯罪被害者の真の救済と私たち」と題して、今月3日に京都の同志社大学で開かれた講演会(同大学主催)で、自らも被害者遺族である原田正治さんはこう述べて、死刑制度への反対を訴えた。(京都・森類臣=日刊ベリタ)
原田さんは、22年前に、末弟を殺害された。当時は事故死だと思われていたのが、一転して保険金殺人だと判明(「半田保険金殺人事件」)。加害者である長谷川俊彦氏を恨み続ける日々を送った。事件から10年後、遺族としては異例の加害者との面会に臨み、それ以降彼との対話を求めるようになった。被害者遺族が死刑確定者と面会し続ける権利を要求、高村法相(当時)に会って死刑の執行停止を求めてきた。しかし、その後就任した森山法相の時に、死刑が執行された。
原田さんは、今でも、長谷川氏のことを「長谷川君」と君付けで呼ぶ。
講演で原田さんは、「弟が殺された後、救済を求め、考えつく限りのところへは行ってみた。しかし救われなかった。被害者遺族は、家族を殺されておいて、なおかつ社会的な打撃を受ける。受け皿がないからだ」と事件後の心境を振り返った。その上で「『被害者感情と国民感情から、死刑は当たり前だ』という意見をよく聞く。しかし、そういう人も、結局は被害者のことを考えていない。私は被害者の立場だが、この私が死刑停止の上申書を法務大臣に持っていったが、結局無視された」と、現状を批判した。
▽加害者の謝罪の気持ちを無視
また、大阪教育大学付属池田小学校の児童殺傷事件にも触れ、「加害者の宅間君は、死刑制度を利用した。死にたかったのだ。死刑制度が存在するからこういうことが起きる。死刑制度は犯罪の抑止力にはならない」「宅間君は『謝罪の気持ちはある』と言っていたのにマスコミは取り上げなかった。都合が悪いからだ。マスコミは、視聴者が喜ぶような内容のコメントを取るだけ」とマスコミ報道についても批判した。
長谷川氏は拘置所内で、ボールペン一本で絵を書いていた。謝罪の意味を込めてである。原田さんは、その絵のうち十数枚を今回持って来ており、一枚一枚聴衆に見せて解説した。長谷川氏は拘置所内でクリスチャンとなっており、絵は宗教画が多かった。
続いて、現在は弁護士活動(刑事弁護)を行っている菊田幸一・明治大学名誉教授が、「そもそも、誰もが加害者・被害者になる可能性がある。被害者感情を強く訴える人はインテリに多い。『私は加害者になるはずがない』と思い込んでいるからだ。だから『こんなひどい犯罪をするやつは許せない』となる。被害者・加害者とも不幸であることには変わりない。加害者問題と被害者問題は、理論的にも別に考えていく必要がある」「日本は象徴的に死刑を行う。制度上あるからやっておこうというわけだ。しかも、おとなしく死を受け入れる受刑者から執行されてしまう」と、法理論と現実の両方についてコメントした。
▽死刑囚の遺書
質疑応答では、「どうしてこのような活動を続けられるのか」という質問が出た。原田さんは「死刑によって殺してもらっても、何のメリットもない。彼のことは憎んでも憎み足りないが、殺したらこの事件は終わってしまう。死刑はなくすべきだと思っている。ただ、今まで私は『死刑制度廃止』と言った覚えはなく、あくまで『執行の停止』を求めた。法律を変えるのはなかなか難しいからだ。今考えても、彼に死刑が行われた意味が分からない。基本的に死刑制度には反対だ」「有罪の確定が出るまで、無罪推定が守られるべきだ」と述べた。
その後、原田さんは、長谷川氏が死刑執行直前にしたためた遺書を示した。死刑執行は、前もって知ることはできず、執行日の朝に本人に告げられる。この遺書は、長谷川氏が、原田さんに渡して欲しいと拘置所職員に託したものである。遺書には「本日『死刑執行』によって、強制的にこの世を去らなければならなくなりました」「生きて罪を償う事を、切にお望みくださった正治様には、そのご期待に応える事が出来なくて、本当に残念で、申し訳なくてなりません」とあり、結びには「さようなら。再会の日まで」とあった。
菊田教授は「死刑制度があるのは、先進国では日本と米国だけ。両方とも野蛮な国だ」と批判した。
最後に、浅野健一・同志社大教授は「原田さんが今日訴えたことの中に、犯罪被害者と加害者が向き合うことで、憎しみも乗り越えていけることを目指すという意味が込められていると、私は感じている」とコメントした。
終了後、参加していた法学部学生は「法律の勉強をしているので、理論としては死刑制度を知っていたが、人が人を殺すことと国家がそれを行うことに疑問を覚えた」「悔い改め、おとなしくしている確定者ほど、早く処刑される事実を知って驚いた」と語った。また、「死刑は当たり前だと思っていたが、今日の講演を聴いて、そうではないことが分かった」という社会学部学生からの感想もあった。
【原田正治さんプロフィール】 1947年、愛知県知多半島で生まれる。自らの体験をふまえて、犯罪被害者の救済支援および確定死刑囚との面会の自由を主張し、講演活動などを行っている。2004年8月に『弟を殺した彼と、僕』(ポプラ社)を出版。
【菊田幸一名誉教授プロフィール】 1934年滋賀県に生まれる。明治大学大学院博士課程修了。法学博士。 法務省法務総合研究所研究官を経て、1975年明治大学教授(犯罪学)。現在、明治大学大学院法学研究科委員長、全国犯罪・非行協議会会長、死刑執行停止連絡会議代表、監獄人権センター副会長、東京犯罪被害者支援センター事務局長。 著書は『少年法概説』(有斐閣)、『死刑廃止を考える』(岩波書店)、『受刑者の法的権利』(三省堂)、『日本の刑務所』(岩波新書)など多数。
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
|