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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2006年06月04日13時15分掲載
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根津教諭の「君が代」拒否
「卒業式は子どもを祝うより儀式の場」と主張して栄転した若手校長も
気温の変化が激しかったこの一週間、根津公子教諭(鶴川二中)も夏と冬への対応に追われたという。ただ同教諭の場合、それは季節だけを指すのではなさそうだ。なぜ「君が代」拒否なのかをめぐって、路上で父兄や市民と心のこもった対話ができれば、初夏の陽射しのようにすがすがしい気分になる。「君が代」問題に対する東京都教育委員会の対応や教育基本法改正の国会審議に接すると、薄ら寒くなる。この国の教育現場で今、何が起きているのか。国歌拒否教師の「出勤」日記は今回も、マスコミが報じない重大な事実の数々を伝えてくれる。(ベリタ通信)
皆さま
根津公子です。 一昨日もういいだろうとこたつを片づけたら今日はまた寒くて寒くて。日本列島は四季ではなく、冬と夏だけになってしまったようです。 今週は学校以外の「出勤」「出張」が半分でした。
5月29日(月)
都庁「出勤」。私のほかに12人が参加。年休を取って来てくださった人も。感謝です。
8時、出勤する都庁職員にチラシを手渡し、「君が代」強制と処分について訴え、「皆さんのお仕事の中にも、都民のためにならないと思うことがあるのではないでしょうか?都民のための行政となるよう、声を挙げ、行動していきましょう」と語りかけた。今日で6回目、ご自分から手を出してくれる人が増えたような気がする。
10時半からは私たちが提出してきた署名(=私や河原井さんにこれ以上の処分をするな。解雇をするな)の行方と扱いについて、都教委教育情報課から回答をもらうことになっていた。今日は通算7回目。
会場の階でエレベーターを降りると、制服の警備担当者3人の姿が目に飛び込んだ。部屋番号を知らなくても、警備の人で部屋の方向が分かる。前回は私たち10数人と同じくらいの人数の、物々しい警備だったので、苦言を呈したからか、今日は私たちから見える人数は少ない。でも、物陰でスタンバイしていることは聞かずとも分かる。
1時間後終わって部屋を出たところで、ここ第1庁舎にはいるはずのない第2庁舎都教委の、いつもにわか警備となる若い職員とばったり出会ったりもした。私たちは大きな声など出さない。丁寧にことばでやりとりするだけなのに、声を荒げるのは決まって都教委の課長だというのに、なぜ、警備なのか? それも超過剰警備。こんなことに都民の税金を使うのは止めてもらいたいものだ。
部屋に入ると当然いるはずの教職員課長の姿がない。私たちが第1に求めていた「担当所管との対話の場を設定してほしい」との要求に、「教職員課長と折衝中」と聞かされていたので、人事部教職員課長が同席し、所管部署として責任ある回答をくれるのならと、私たちは都教委の意向どおりに回答を3週間も待ったのにだ。3週間は時間稼ぎだったのか?回答の前にまずそこを質した。教育情報課長は、「要請、苦情は情報課が対応するシステム(したがって教職員課長は出席しない)」と、初回だった3ヶ月前からまったく進展のない回答を読み上げる。
「私たちの思いを伝えてくれたか。どう伝えたか」と聞けば、「伝えた」と言う。「どういうことばで伝え、それに対してどういうことばで返事があったのか、ことばどおり再現してほしい」と言ったら、ことばでは一言も言っていないことがようやく判明。書面だけでのやりとりだと言う。書面を補うことばをなぜ使わないのか。担当所管に要請者の思いが伝わっていないのに、なぜ、さらにやりとりをしなかったのか。まったく納得できない。教育情報課長は、教職員課とやりとりに使った書面を私たちに郵送することは約束をした。
あと2つ、署名の扱いについては「内部手続きなので回答を差し控える」。累積加重処分については、「反省と再発防止(研修)を促しているにもかかわらず同様の非違行為をしているときに…(累積加重処分は)裁量である」。
これについてはほとんどやりとりができなかった。職員課の書面回答を見た上で、次回聞き質そう。私たちは都教委にどこまでも対話を求める。
5月30日(火)
午前中立川二中の運動会を見学させてもらい、子どもたちの弾けるようなエネルギーをいっぱいに浴びて、午後は私たち東京教組(=義務制)の「君が代」処分撤回の人事委員会審理に出席した。八王子市立N小校長(=04年3月当時)に対する尋問が行われた。
都教委代理人は校長に、「国旗に向かって起立し斉唱すること」との職務命令を発したかを確認するのみ。それさえ立証すれば、職務命令違反→非違行為→懲戒処分の正当性が担保されると言うもの。悪法や命令を以って侵略戦争に突き進んだ過ちを踏まえてなおかつ、この職務命令が教育理念に照らして正当であることを展開すべきが、そんなことなど一顧だにしない破廉恥な輩。校長や都教委には「君が代」を子どもたちに、考え判断させずに強制することが教育行為かどうか、その説明責任を果たしてほしいものだ。
私たち請求人側の尋問に校長は、「困った時には職務命令を出せと市教委から言われた」と言い、また、子どもの卒業を祝うことよりも儀式をきちんとやることの方が大事なのか、と問われ、「そうです。儀式が大事」と言ってのけた。何と言うことか!
また、不起立したAさんについて校長が書いた事故報告書にも唖然とした。「八王子市、東京、日本の教育にとってマイナスである」と書いたと言う。17日の人事委員会審理で「都教委は事故報告書をどう書いたらいいかわからない校長のために、事故報告書の書き方見本を参考として配っている」(=趣旨)と証言していたが、その見本をはるかに超えたこの「校長所見」。
子どもを祝うことよりも儀式をきちんと執り行うことに価値を置く校長に、子どもたちの日々の息遣いが届くはずがない。若くして校長に上り詰めたこの校長は、今は区教委指導室長だと言う。
今日は板橋高校の藤田さんになんとも不当な判決が下りた。教頭の証言を100%採用し、藤田さんや生徒たちの証言を「虚偽」とした上に成り立つ判決。
5月31日(水)
鶴川二中へ。今日はとってもうれしいことがあった。
下を向いて書きものをしていたら声をかけられた。見上げてとっさにどなたかわからない私に、「この間の」と名乗ってくださった。先週「ここに立つのは迷惑」と怒りをぶつけた一人の保護者だった。あの時とは180度違う表情に、わかるはずがない。「今日はお一人ですね」とおっしゃるので、「私を訪ねる人が時々いますが、これは私の思いからの私一人の行動なんですよ」と言い、私が起立できない、教員としての理由を話した。きちんと聴いてくださった。きっと真面目な方なんだろうと思った。ぜひお互いに意見を交わしたいと思い、「時間のあるときにぜひお立ち寄りください」とお願いした。人の考えは千差万別ではあるが、人の誠意は考えの違いを超えて通じるもの。違いを擦り合わせ、互いの固 定観念を緩め、そうしたらきっと何かが生まれる、と思う。気持ちを込めてお礼を言い、すがすがしい気分で後姿を眺めた。
昼下がり、お子さんの下校を出迎えたかと思われる若いお母さんが私のプラカードを見ていることに気づき、私は近寄って自己紹介をし、プラカードに書いた「学校は一つの考え(=国家の考え)を押しつけるところではありません。知り考え、意見を形成するところです」を指して、起立しない理由を話した。
「私は君が代は歴史的に見ても憲法との関係からも問題だと思います、でも、嫌いだから着席したのではありません。強制する、一つの価値観を押しつけることに反対だから着席したんです。私は自分が好きなことでも全員がそれを強制されるなら、拒否します。自由であることが大事ですから。一般には『個性の尊重』と言いながら、『君が代』では個性や個人の意思を認めないのはおかしいと思います」と言うと、彼女は「全くおかしいですよね。これ(処分)はいじめですね」と怒っていた。 そして私のささやかな行動に「ありがとう」と言ってくださった。
小学2年生と言うお子さんが、話しに興味を示し、「自分がやられていやなことは人にしちゃあいけない」とずばり。
今日も、近所のおじいさんや日課で散歩される方と、長いこと話をした。
6月1日(木)
鶴川二中へ。昨日に続き快晴。朝から気温は高い。運動会の予行をフェンス越しに、一人で、あるいはご近所のいつもの人たちと見学した。
6月2日(金)
教育基本法改悪の特別委員会を傍聴した。途中席を外したので都合、民主党3人と共産党(よく聞こえなかったので、たぶん)1人の質問を聴いた。
民主党議員の一人は、「連合国の関与で作られた屈辱的な教育基本法。全く新しいものを作るべきと思うがどうか」と言い、一人は「生命の大切さは教育上の大きなテーマ。宗教を生命と結びつけたのが民主党の法案の意義。政府案は粗雑だ」と言った。「教育勅語はすばらしいが、しかし…」に続けて、公式見解を言わざるを得ない政府側答弁を超える、民主党の主張。もう一人若い女性議員は、出生率の低さは個人の問題ではなく雇用や社会保障の問題、と指摘は正しいが、しかし、ここでの質問主張ではないだろう。
3人の質問を聴いていて、これじゃあ、与与党。委員会を開いたというアリバイつくりへの加担?!と思った。教育理念をめぐって質の高い論議ができない国会及び委員会の質を高めるために、傍聴や国会前座り込みをしたり、はがき・ファックスを送ろう。
(たぶん)共産党の議員は、憲法と教育基本法の関係や憲法9条と教育基本法前文から「平和」が削除したこととの関係性等を指摘し、また、来年度から行われようとしている全国一斉学力テストの予想される弊害を、すでに行われている東京都を例に挙げて批判した。今日唯一の指摘だった。
終始その場で配布された資料に目を通さず、また、だらしのない座り方をし、緊張感のない議員が目についた。この議員たちに、自身の「道徳心」を尋ねたかった。国民を愚弄するが故のこの態度なんだろうと感じたから。
夜は日比谷野外音楽堂で行われた「教育基本法改悪反対全国集会」に参加した。参加者3000人とのこと。
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