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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2007年02月26日16時03分掲載
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気になる「忘れ薬」への米国防総省の関心 落合栄一郎(元米ジュニアータ大教授)
プロプラノロールなる薬は、スコットランドの科学者、ジェイムズ・ブラックによって1950年代に発見され、高血圧の薬として広く用いられている(発見者はこれにより1988年ノーベル賞受賞)。これが最近、忘れ薬として用いられるようになった、とアメリカCBSテレビの報道番組「60分」で、昨年11月26日に報じられた。
報道されたのは、PTSD(=Post Traumatic Stress Disorder)症状の軽減に用いられて成功した例である。例えば、若い頃にレイプされて、その忌まわしい経験の悪夢に悩まされていた女性が、この薬の数週間の服用で、その記憶が薄れ、正常性を取り戻した。こういった症例が2、3紹介された。この薬は、そうした過去の忌まわしい記憶のみを消し、その他の記憶にはあまり影響がない風な報道の仕方であった。しかし、これは成功例のわずかで、すべてうまく行くどうかまだはっきりしてはいないにも拘らず、すでにかなり広範に使われているらしいー薬は安いし、容易に入手できるからでもあるが。筆者の知人の一人の経験では、忘れたい記憶は拭いきれず、一般的な物忘れが高じているらしい。
それはさておき、番組の最後に少しだけ言及されたことが大変気になる。それは、米国防総省がこの薬に興味を示しているとのことである。ヴェトナムの時もそうであったが、現イラク帰還兵に心身の問題を訴えるものが多い。心の問題は、異常な経験(同僚の兵士が、路上爆弾で切り裂かれたのを目撃したとか、上官の命令とはいえ無防備の女子供を射殺したとか)の後遺症(PTSD)である。これは、いわば人間性の破壊であり、帰還後の正常生活を妨げ、家族にまで深刻な影響を及ぼしているケースも多い。この薬は、こうしたケースの軽減に格好の役割を果たすかもしれない。それは、問題を持つ兵士には朗報に違いない。
一方、国防省にも朗報であろう。いままで帰還兵士や市民から突き上げられていた戦場体験に基づく人間破壊という心の問題、の安上がりな解決法を提供してくれるから。このような影響をもつ薬は、人間の人格まで変えてしまう可能性もあり、恣意による人格矯正につながる。もっともすでに、人格にまで影響を及ぼしかねない医薬品が合法的に使われていないわけではないが。
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