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2007年07月19日10時37分掲載
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根津教諭の「君が代」拒否
<停職6ヶ月「出勤」日記・15>バンクーバーでも「君が代不起立」の上映会
7月9日(月)
立川二中へ。「1日中曇り、最高気温は26度」の予報を聞き、防寒対策をして「出勤」。ところが予報は見事に外れ、午後は日差しもかなり強く、帽子をかぶっていてもコンクリートの照り返しで、帰る頃には日焼けで体がひりひり状態だった。
夜中からのひどい頭痛とそれによる睡眠不足で、学校到着がいつもより遅く、すでに半分くらいの生徒は登校していた。今朝はNさんが私と一緒に生徒たちへの挨拶に参加してくださった。1人で10人分もの声量の、それでいて柔らかい音色のNさんの「おはようございます」に、生徒たちはかなり自然に挨拶を返していた。なんかほほえましい風景だった。
気づかない私に、「お疲れ様です」と声をかけて通られた初老の男性、車のクラクションを軽やかに鳴らし、手を振ってくださった顔見知りになった大学教員の方。こういう人たちの一言に励まされる。
お昼頃から隣の北多摩高校の生徒が下校し始めた。高校はもう午前授業に入ったのかと思っているところに、卒業生のAさんが通りかかった。私はいすに座ってほとんど居眠り状態だったが、偶然にも目を開けて彼の姿が目に入った。ほとんど寝ぼけ面で、あわてて立ち上がって挨拶をした。彼は、眠っているから声をかけないほうがいいか迷っていたのだそうだ。お腹が空いているだろう彼と長いこと話をし、引き止めてしまった。こうして卒業生と話をしていると不思議なもので、頭痛も眠さもかなり軽減している。
二中生徒たちの下校時間。Nさんを見て、「今日も1日、元気でがんばってください」と朝の彼のことばを真似る生徒もいた。子どもって、本当によく覚えているし、うまく真似る。3年生の集団は、あれこれ声をかけてきて、「根津先生は間違っていないです!」と大きな声で言いながら、帰って行った。「先生のインターネットを見た」と言った生徒もいたことから考えると、「間違っていない」は、停職1ヶ月の初めての校門前「出勤」の時に、私がプラカードに書いたことばを使って言ったのだろう。まったく、うまいものだ。脱帽だ。
7月11日(水)
南大沢学園養護学校に。雨が降ったり止んだりの空模様。
今朝も早朝から近藤さんのほかにTさんがいらして、一緒に挨拶に加わってくださった。途中からSさん親子も加わった。外での授業の子どもたちが通るたびに一言かけたり、それに対してにこにこ顔と握手で返事をくれたり、またその合間におしゃべりに花を咲かせてのゆったりとした時間を過ごす。瞬く間にお昼ご飯。お昼は、喫茶室に行ってオール100円の飲み物を注文し、そして12時に持ち込まれる共同作業所のパン屋さんの天然酵母のおいしいパンを買って楽しんだ。食パンやフランスパンは、そのまま何もつけないで、食パンの持つうま味が十分味わえるのでお勧めだ。なんと、Sさんは今日の大きな目当てが喫茶室だったそうな。
下校時、卒業生のBさんがしばらく話しこんで行った。東京の「君が代」処分についての話しをすると、彼は、「強制はよくないです。おかしいですよ」と言っていた。
7月12日(木)
鶴川二中へ。登校時、今までは私の挨拶に無視をしていた一人の生徒が、ちゅうちょしながら「おはようございます」と挨拶を返してくれた。こうしたちょっとしたことに、ほっとする。
今朝も登校時の挨拶に立っているとSさんがやってきた。しばらくして、先週電話で申し出のあった大阪の大学院生Tさんがいらした。インタビューを受けた。近所にお住まいのKさん、Mさんも立ち寄ってくださった。
皆でおしゃべりをしていると、自転車で通りかかった60過ぎと思われる女性が、プラカードを見ていらっしゃる。「これは、私のことなんです」と言うと、「えっ」と絶句され、やや置いてから、「なぜ国歌を歌わないんですか。国歌なのだからいやでも歌うのが当然でしょう」とおっしゃる。「生徒には歌の意味も歌う意味も教えず隠して、起立させ歌わせますが、これは学校のすべきことではないと思います」と私が言うと、「そうですか、教えないんですか。教育委員会に教えるよう要求しましょう」と言いながら、話し途中で自転車をこぎ出して行かれた。
午後は最後の聴講を断念して、研究のため来日されているフランスの教員であり、大学院生であるKさんに会った。「君が代不起立」の映画が取り持った縁である。東京の「君が代」処分について、4月にお会いしたフランスの記者がおっしゃっていた「フランスでこのようなことが起きたら、教員たちは黙っていない」と言われたことを話すと、彼女も即座に、「フランスならすぐにストライキですよ」とおっしゃった。ストライキは正当性を示すことなのだそうだ。それを見て人々は多くが、理解し、支持するようになるのだとも。つい最近では、彼女の住む町で博物館の公務員が賃金upを要求して2週間ストライキをしたと言う。同じ地球上のこと?!
7月18日(水)
南大沢学園養護学校へ。
今朝も私が7時40分に着くと、近藤さんはすでにいらしていた。しばらくすると、連絡を受けていたバンクーバー在住で一時帰国されているバンクーバー9条の会のNさんが訪ねていらした。3人で生徒たちを迎えた。近藤さんは今朝も校長に、私の扱いについての「お尋ね」を封書で手渡した。校長は、どのように答えてくるのだろう。
Nさんは、インターネット上で「君が代不起立」の映画を知り、バンクーバーで上映会をされたのだそうだ。映像の威力もインターネットの威力もすごいものだ。この上映会に参加された一人の方がNさんに託された、私宛ての手紙をいただいた。読ませていただいて、胸がキュンとなる・・・。お手紙をくださったお気持ちを想う。
今日の訪問者は、他にあと2人。熱心に質問をされるNさんに答えながら、外での授業に出かけ、あるいはそれから帰ってくる子どもたちに、ことばをかける。午後は初訪問のMさんを、公園内の喫茶室に案内した。喫茶室の実習は今日がはじめてという高等部1年生の生徒たちが、注文を訊き、飲み物を運んでくれる。何人かは、顔見知りになった。どの生徒も皆、一生懸命だ。その姿を見ながら飲む飲み物はおいしい。
訪問者が帰りしばらくして、下校の時間。書きものをしていると、声がする。気づいて顔を上げ、軽やかな発声で挨拶をすると、その生徒は納得し、からだ全体で気持ちを伝えてくれた。「お友だちだよ」「受け入れるよ」ということなのかな。また、仲良しになったAさんは、「ねづきみこ先生!」と言って、手を上げてさよならを告げてくれた。握手をして挨拶をしてくれる生徒もいたり。卒業生のBさんとは、今日も立ち話をした。プラカードを読んでいく生徒もいる。3ヶ月間の校門前「出勤」で、生徒たちと随分と顔見知りになった。9月まで「さようなら」。
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