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2007年09月01日11時49分掲載
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安倍政権を検証する
活動実態を洗い直し、国会で徹底審議を 「テロ特措法」延長の是非 池田龍夫(ジャーナリスト)
第21回参議院選挙(7月29日)は自民党の歴史的な惨敗、民主党の大躍進によって、参院では自・公勢力が過半数割れに追い込まれた。年金行政の不手際や政治資金スキャンダルなどで追い詰められた安倍晋三政権は、17回も強行採決を連発して議会制民主主義を踏みにじってきた。これら通常国会での多数党の暴挙に対し、有権者が鉄槌を下したことは、健全な選択と言えるだろう。かくして衆・参ねじれ現象が生じ、政局に及ぼす影響は計り知れない。 政府・与党提出の法案が参院で否決されても、与党絶対多数の衆院で再可決することは可能だが、乱発すれば多数党横暴の非難が高まることは必至で、�狹漸箸諒�刀�瓩魎蔽韻鉾瓦�わけにはいくまい。自・公独走にストップをかけた意義は大きく、早くも「テロ対策特別措置法」延長をめぐって民主党から第一弾が撃ち込まれた。
▽インド洋上「無料ガソリンスタンド」
2001年9月11日の米国同時多発テロから6年、イラク戦争はますます泥沼化し、アフガニスタン情勢も最近急激に混迷を深めてきた。日本政府は米国の要請に応じてテロ対策特措法(01年10月成立)、イラク復興特別措置法(03年7月成立)=いずれも時限立法=を制定し、国際協力の姿勢を示してきた。参院選挙後にわかにクローズアップされてきたのが、今年11月1日で期限切れとなる「テロ特措法」だ。参院第一党に躍り出た民主党の小沢一郎代表が「延長反対」を明確に打ち出したため、政府与党をはじめ米政府に衝撃を与えている。
アフガニスタン・テロ対策で、�犢餾盜弩キ瓩量召硫爾法�海上自衛隊艦艇のインド洋派遣に踏み切ったのが01年12月。インド洋上でのテロリスト移動や補給路を断つ任務を負って米英仏海軍などが出動しており、それら艦艇への洋上給油が、海自派遣の目的だった。以来、6年近く、11カ国の外国艦艇への無償給油を続けている。テロ対策とはいえ、「無料ガソリンスタンド」と言われる無償提供の継続に疑義が高まり、そこに斬り込んだのが小沢代表の戦術だった。
「テロ特措法」延長の是非を論じる前に、防衛省公表の最新データを提示しておきたい。現在、護衛艦「きりさめ」と補給(給油)艦「ときわ」の2隻がインド洋での給油に当たっている。統合幕僚監部公表の「01年12月2日〜07年6月21日の活動実績」によると――。 ▼給油先と給油量・費用概算=(1)米国349回 (2)パキスタ133回 (3)フランス92回 (4)カナダ43回 (5)イタリア40回 (6)ドイツ29回 (7)英国29回 (8)ニュージーランド15回 (9)オランダ11回 (10)スペイン10回 (11)ギリシア10回=11カ国合計761回、給油量480000�銑函L欺�提供額は概算216億円。 このほかパキスタン駆逐艦へ給水も行ない、111回・約6090トンの水を供給。また、艦艇搭載ヘリコプター燃料を七カ国に62回(うち米ヘリ31回)、約920キロリットル給油している。
海自の艦船は、補給艦・護衛艦のペアが原則だが、当初はイージス艦や掃海艇も派遣された。補給艦乗務隊員は130人前後、護衛艦が175人くらいで、常時約300人が洋上勤務している。危険手当を含め派遣経費が膨大な額になっていることは容易に想像できる。これだけ大掛かりな海外派遣をしているのだから、その成果やアフガニスタン情勢の推移や問題点の情報を開示し、国会で論議するのが筋だが、3回も特措法を延長しながら明確な報告を行なっていない。
▽「国際的合意待たずに、米国が開戦」
小沢民主党代表は8月8日、民主党本部でシーファー駐日米大使の訪問を受け「テロ特措法延長問題」をめぐって会談した。米大使から野党第一党党首に会談を持ち掛けたもので、45分もの会談がメディアに公開されたことは異例である。その問答の経緯は既に伝えられている通りだが、民主党HPが論議の模様を的確に報じていたので、主要点をピックアップしておこう。
「シーファー大使は、(1)海自の活動はテロ反対の国際的部隊であり、極めて重要な役割だ(2)アフガニスタン、インド洋での活動は国連の権限の下で行なっている(3)日本の石油の90%がこの地域を通って輸入されている――として、テロ特措法延長への賛成を求めた。
これに対し小沢代表は、民主党の「政権政策の基本方針」を基に、(1)日本が自衛権を行使するのは、個別的であれ集団的であれ、日本が攻撃を受けた場合に限る(2)国際社会の合意に基づき、国連の平和活動には積極的に参加する――との原則を説明したうえで、『米国(ブッシュ政権)は国際社会の合意を待たずにアフガン戦争を始めた。我々の憲法解釈では、日本に直接的に関係のない地域で、米国あるいは他の国々と作戦することはできない』と言明。 また、米国が多国籍軍活動の根拠としている国連決議についても『NATОを中心とするアフガニスタンでの活動は、PKОと同じ任務と性格が付与され、オーソライズされているが、米国などの行動は国連決議で直接的にオーソライズされていない』と指摘し、テロ特措法延長に反対を表明した。次いで『テロとは断固戦わねばならないが、どういう方法、手段で戦うかは各国で異なる』と述べ、幅広い国際協力のため、より柔軟に対処すべきだと、米側に要望した」。
▽日米協力関係を再構築する好機
民主党は以前からテロ特措法に反対してきており、小沢代表が突飛な主張を表明したわけではないが、参院第一党党首としての言葉は重い。日米同盟にヒビが入ることを極度に怖れる安倍政権とブッシュ政権が慌てていることは、小池百合子防衛相の渡米など一連の動きが物語っている。
「時限立法はあくまで緊急の特例措置であり、期限が来たら区切りをつけるのが原則だ。延長するならよほどの根拠を示すべきだが、それがないままにここまできたと言えよう。…民主党は徹底的に政府に活動実態を明らかにさせ、そのために国政調査権も積極的に活用すべきだ。また延長に反対するなら、テロ対策の代替案も示してほしい」という『毎日』社説(8・9)の指摘は尤もで、朝日、道新、信毎、琉球新報など�狆�沢発言�瓩亮饂櫃鰺�解した筆致の論説が多かった。
一方、『読売』は「小沢�坑喨涜膸函\�権担当能力に疑問符がついた」と題する社説(8・9)を掲げ、「小沢代表は『ブッシュ大統領が国際社会のコンセンサスを待たずに戦争を始めた』と強調した。『日本は米国中心の活動には参加できないが、国連に承認された活動には参加したい』とも語った。国連安保理事会の承認を得ていない現在の海自の活動には反対する、という理由のようだ。この主張は明らかにおかしい。…『米国に言うべきことは言う』という姿勢を示し、民主党の存在感をアピールする狙いなのだろうが、小沢代表から、日本が『国益』を踏まえてどう行動するか、という発言はなかった。極めて残念である」と真っ向から批判。 産経も「日本は国際社会の一員として、テロとの戦いに屈しない国家意思を明確にしている。特措法の失効は、これからの離脱を意味する。政権交代を目指す責任政党というなら、国益を損なわない方法論を考えるべきだ」との論説(8・9)を掲げていたが、両紙の主張には「テロ特措法を延長しないと、日米同盟が崩れる」との思い込みが強すぎるのではないか。
「イラク戦争の失敗について、まともな総括も反省も行われていない。インド洋とイラクでの自衛隊活動の詳細も明らかにしてもらいたい。イラクで活動する航空自衛隊は、何を運んでいるのか、どのくらい危険な業務なのか。文民統制の主体である国会がないがしろにされてきたことを、ただす必要がある。そうした検証の上で、日本がやるべきことは何かをしっかり議論すべきだ」と、朝日社説(8・10)が強調していた。
日米両国間には、軍事分野だけでなく多くの協力関係が構築されてきた。小沢代表の思いだけでなく、「言うべきことは言う�狢佚�な日米関係�瓩旅獣曄廚砲話�も反対できまい。「テロ特措法をただ延長すればいいという状況ではない。中東へのかかわり方をアフガニスタンとイラクとに分けて考え直し、日本の判断も思慮深いなと国際社会に印象づけるいい機会だ。日本の政策論に立脚し、筋の通った主張なら、日米関係は損なわない」という寺島実郎氏の指摘(毎日8・8朝刊)に共感する。
*本稿は、「新聞通信調査会報」9月号に掲載された「プレスウォッチング」の転載です。
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