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2008年11月15日10時53分掲載
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戦争を知らない世代へ
軍人こそ正しい歴史観を 自衛隊空幕長の浅薄な歴史認識を憂う 中谷孝
自衛隊の田母神俊雄・航空幕僚長が、「日本は日中戦争に引きずり込まれた被害者で侵略国家と云うのは濡れ衣である」と言う論文を書いたことが原因で更迭された。当然である。日中戦争に日本陸軍の一員として参加した私は、今どき日本は被害者であると云う歴史観を持つ人物が航空自衛隊の最高幹部にいたことに驚いたが、その論文を最優秀賞に選んだアパグループの存在にも危機感を抱いた。田母神氏が強調する「愛国心」が戦前どのようなものであったかを記しておきたい。
私達戦争当事者の被害国に対し申し訳ないという気持ちが「自虐的」だと批判する人達がいるが、田母神氏やアパグループもそのような人達なのであろう。しかし、同氏の歴史観は余りにも偏りすぎている。又、それを最優秀に選んだ選者にも呆れる。
自衛隊幹部も既に戦争を知らない戦後世代に替り、歴史認識が浅薄になっている。軍人なのだから少しは歴史、とくに日本軍により重大な被害を受けた国のことを、もっと勉強してほしい。即時更迭に踏み切った浜田防衛相の措置は適切であった。
しかし、こうした誤った歴史認識を持った人達が出てくるのを見ると、私達はもっと早く戦争の実態を語るべきだったとも反省させられる。
田母神氏は航空自衛隊の隊内機関紙などで「自虐史観」を批判し、誤った歴史観が愛国心の欠如を招いたと主張しているという。また校長を務めた統幕学校で「大東亜戦争史観」「東京裁判史観」などの講座を学んだ幹部自衛官は計390人に上ることを、浜田防衛相は明らかにしている。
では、私達が戦前に受けた愛国心教育とはどのようなものであり、それはアジア各地の日本軍の占領先でどのような形をとっていたかの一例を示そう。
▽インドネシアの小学生に皇居遙拜を課した日本軍
私の受けた戦前の学校教育で、天皇は神であると教えられた。天皇は天照大神(あまてらすおおみかみ)の直系で天下を統一すべき存在であった。 太平洋戦争の初期、南方地域に進駐した日本軍は此の戦争は八紘一宇(はっこういちう)を実現するための聖戦であると宣伝した。八紘一宇とは天皇のもとに世界を統一することを意味していた。
占領地の中で反抗が少なく最も協力的であったインドネシア(当時・オランダ領インド)のジャワ島で最初の皇民化教育が行われた。一方的に押し付ける日本の神話や八紘一宇がジャワの小学生に理解出来たとは思えないが、毎朝皇居遙拜を命じて、皇民化の第一歩と自己満足に陥っていた。資源奪取の目的を糊塗する為の八紘一宇であるから現地人が形式的に従えば満足していた。 先日新聞紙上に当時小学生だった老人の話が載っていた。「アラーは座って拜むが皇居は立ったままで拜むのだから、まぁ良いかと思っていた」と。
戦場で死ねば靖国の神になると決めた明治の政治家が無神論者であった様に、占領地に神社を建てた軍人に信仰心が有ったとは思えない。
中国で私の所属した隊の所在地でも在留民間人数百人の町に神社を建て、三年後の敗戦で放棄した。
指導者自身が無信仰であり乍ら惟神(かんなぐら)の教えを愛国心を示す道具にしたのが、ジャワ島を始めとする占領地の日本神道教育であった。
日本国民が再び恐ろしい方向に傾いていかなよう祈ることが、戦中世代の杞憂であってほしい。
*中谷孝氏は元日本陸軍特務機関員
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