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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2009年02月23日11時38分掲載
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社会
“市民の顔した右翼の時代” の到来か、市民団体化する右派勢力
よく晴れた土曜の正午、まだ若干肌寒い渋谷を歩く。町を歩いていると、インターネットではびこる心無い言説、息の詰まるような感覚を忘れることができる。現在ネット媒体であるベリタも、スイッチを切れば終わってしまう儚いものだった。ところでふと目を上げてみると、宮下公園付近に警察車両が赤灯を回して停車しているではないか。物々しい雰囲気だ。どうやら市民団体のデモが行われるらしい。ところが、そこに集まった市民の主張は“竹島の韓国からの奪還”と、“竹島を韓国領だと主張する『不逞朝鮮人』を日本から叩き出す”というものであった。市民の面した、右翼の時代。それが到来したようである。(村上力)
●手段は既存の市民団体そのもの
この日渋谷で行われたデモは、「主権回復を目指す会」、「せと弘幸Blog『日本よ何処へ』」、「NPO外国人犯罪追放運動」、「在日特権を許さない市民の会」、「外国人参政権に反対する市民の会・東京」、「千風の会」、「日本を護る市民の会」などが呼びかけている。
このデモの情報が一般に公開されたのは、おそらく15日〜と思われる。おもに保守系市民団体のホームページ、掲示板などに、告知の書き込みがされていた。そこにはイベントの趣旨、また集合時間や集合場所の地図などが記載されている。この手法を見てみると、一般的な市民団体と相違は無い。
今回のデモでは目算で30〜40人ほどの市民が参加。その多くは日章旗を掲げ、「竹島を韓国から奪還しよう!」「竹島を韓国領だと主張する『不逞朝鮮人』を日本から叩きだせ!」などのシュプレヒコールをあげながら、「そこの朝鮮人!竹島を返しなさい!」などと書かれた横断幕を広げて、渋谷一帯を練り歩いた。このデモ隊は先頭に街宣車を走らせていたが、軍歌などは流していない。一部の参加者はデモ行進中、見物人に対して「朝鮮人出てきたらどうだ!?」などと声を上げていた。
その主張は既存の右翼と変わりは無い。しかし、手法においては一線を画いているようだ。まさしく市民運動そのものである。右翼の市民化といっても過言ではない。
●今に始まった訳ではない「右翼市民」の存在
こういった保守系の市民運動で、中心的な役割を担っているのは元右翼、若しくは「維新政党・新風」などの右翼政治組織の関係者であることが多い。つまり既存の右翼がその手法をソフトなもの、市民運動的なものにしたという傾向があると思われる。
一方、特筆すべきは“日本最大の保守系市民団体”を自称する「在日特権を許さない市民の会(以下、在特会とする)」だ。
日本社会の在日コリアンに対する差別・嫌悪は、戦前‐戦後一貫している。それは朝鮮学校の「非合法」化、無年金問題などの国家的、制度的な次元のものから、民衆の間において、「チマ・チョゴリ事件」やそのほか多様な形でのいやがらせは存在していた。その根強い差別意識に拍車をかけたのが「拉致」キャンペーンであり、「嫌韓流」やその類の出版物の流行がその証左である。
そういった流行の中で、「在特会」は2007年に正式に発足した。それはこれまで散発的に発生していた「事件」や、インターネットにおける書き込みなど、民衆の間でアングラ的に生産されていた差別・嫌悪が「市民団体」という形をとって集束したものといえよう。
一般的に、人は特定の集団や個人に対して嫌悪感を持ち、差別をすることがある。しかしそれは理不尽なものであって、筆者を含めて人々はそれを是正するように努力をする。実際に学校や職場などのコミュニティーで様々な人に接して、克服されていくはずである。
ところが「在特会」の在日コリアンおよび在日外国人一般に対する嫌悪は、「在日特権」などの政治的イシューでもって、市民運動として主張される。つまり彼らは、彼らなりの理論のようなものをこしらえているのだ。
しかし、たとえば今回のデモに見るように、その嫌悪はおおよそ国家間の問題とは無関係の在日コリアンなどに向けられている。またそういった勢力の拡大は、日朝の交流を作ろうと努力する人々の上に暗い影を落としている。もちろん、「在日特権」などというものがあるかどうかも、歴史的経緯を踏まえた十分な検証が必要である。
このような保守系市民運動が、一定の“成果”を挙げている。彼らは役所等に対する申し入れや、行政訴訟などを行い、千葉県の朝鮮学校への助成金を停止させたり、品川区の福祉給付金の導入を止めさせたりしている。
なお、1月の段階で「在特会」の会員数は4500人であった。それが今4700人を越えている。
●「右と左は手を結べるか」
「在特会」会長の桜井誠氏も明言しているように、不況によって排外主義的な流れが強まるとの見方は正しいのかもしれない。なるほど、元右翼として名高い作家・雨宮処凛氏も、「ロスジェネ 創刊号」にて、右傾化の背景に「生きづらさ」があると指摘している。
「超左翼マガジン」を自称するこの雑誌は創刊号から、「右と左は手を結べるか」などと銘打っている。画期的ではないか、と思った。しかし、その紙面において、右翼が行う威嚇行為、差別に対する批判は無かった。右翼の持つそのような側面に無批判でいながら「右と左は手を結べるか」などと吹聴するのは、右翼が矛先を向ける在日コリアンなどの被差別マイノリティに対しての裏切り行為と言わざるをえない。
それではこれまで日本の「左翼」が擁護し、「連帯」を主張してきた被差別者は、ただ「左翼」に政治利用されていたと揶揄されてもいたしかたない。したがって「左翼」が右翼とされる人々に向き合うときに、まずもって立脚しなければならないのは、被差別者の立場ではないのだろうか。この雑誌の創刊号にはがっかりさせられてしまった。
現実の暮らしの中で、差別意識を露骨に出す人と会うことは少ない。しかし、楽観はできない。本稿で述べたように、右傾化は進行している。一体、市民運動は市民の顔をした右翼に対して、どう対処するのだろうか。
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日の丸を掲げ、デモする保守系市民団体
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