南北の経済格差を埋めるためのフェアトレード(公正な貿易)にファッション小売業として取り組んできたブランド「ピープル・ツリー」が、3月4日、イギリスで発行されているファッション雑誌「コスモポリタン」主催のコンテストCosmopolitan Fashion Awardsで、'Most Ethical Retailer'(もっともエシカル<=倫理的>なファッション小売業)に選ばれた。選考は読者投票による。ピープル・ツリーの受賞は2008年以来二度目。ただし、前回は'Most Ethical E-tailer'(もっとも倫理的なオンライン小売業)だった。
ピープル・ツリーによると、読者投票は1月から始まり、対象のファッションブランドは数千にも及ぶ。しかも、フェアトレードやオーガニックというだけではトップになれない。ファッションとしても優れていなくてはならないのだ。
「ピープル・ツリー」の創設者はインド系英国人のサフィア・ミニーさん(1964-)。ミニーさんは高校卒業後、ロンドンで出版とマーケティングの仕事に携わる傍ら、人権や環境保護のNGO活動に参加した。1990年に夫と来日。当初、NGO団体を作って発展途上国への支援活動を行っていたが、95年にフェアトレード部門を法人化し、フェアトレードカンパニー株式会社を日本で設立した。これがファッションブランド「ピープル・ツリー」の母体となった。 その後、2001年、ミニーさんにとっては里帰りする形でロンドンにPeople Tree Ltd. を設立した。日本法人であるフェアトレードカンパニーの販売実績も1995年の3400万円から2008年には7億9672万円に成長した。
ピープル・ツリーの製品はレディース、メンズ、ネックレスやピアスなどのアクセサリー、バッグなど多岐に渡る。これらの商品をピープル・ツリーと提携して生産しているのはインド、バングラディッシュ、ネパール、ケニア、ペルーなど、世界15ヵ国50団体におよぶ。
これまで買い手である先進国が圧倒的に強い立場から、途上国の生産物を買い叩くというやり方が大半だった。それが途上国の人々の低賃金や不安定な雇用条件につながっていた。そこで長期契約で安定した雇用環境を作り、先進国の消費者が求めている品質が何かを伝え、そのための技術支援を行う。開発途上国で困窮している人々に単にお金を与えるのではなく、職業を通して自立できるよう途上国の生産者と先進国の消費者との間の公正な貿易が何かを考え、実現していく。これがフェアトレードの基本的な考え方だ。
だが、ミニーさんにとってその道のりは平坦ではなかった。日刊ベリタ「テレビ制作者シリーズ⑨」の原村政樹ディレクターがテレビ東京「ガイアの夜明け」(ファッションが貧困を救う 2004年12月14日放送)でミニーさんが奮闘する姿を紹介している。現地の貧しい生産者に支払い金の50%を前払いするための資金繰りや日本の消費者の品質に対する厳しい目によってつき返される婦人服など、様々な試練とそれに立ち向かう姿が描かれている。
単に途上国の製品だから、というだけで消費者は動かない。そこにどのような価値を盛り込むか。 品質の高さ、顔の見える関係、デザイン性、伝統、そうした様々なハードルを越えてきた結果が今回の受賞につながった。
■受賞の報告(英語)
http://www.peopletree.co.uk/press/cosmo_award_2010.php
ピープル・ツリー HP: http://www.peopletree.co.jp
村上良太
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