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2012年11月02日11時56分掲載
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原子力規制委の責務は重大 チェック機能を厳密に果たせ 池田龍夫
4月にスタート予定だった原子力規制委員会は、半年近く遅れて9月19日やっと発足した。それも、本来は衆参両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命する委員長と委員を、同意のないまま任命する異例の発令だった。確かに原子力規制委員会設置法の附則に定められた手続きで違法ではないようだが、強引に人事を決めて9月中発足を急いだことを批判する声は強い。
任命された原子力規制委員会委員長は田中俊一・前原子力委員会委員長代理。日本原子力研究開発機構の前身の一つ、日本原子力研究所の副理事長を務めた人だ。委員は、更田豊志・日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門副部門長、中村佳代子・日本アイソトープ協会プロジェクトチーム主査、島崎邦彦・地震予知連絡会会長、大島賢三・元国連大使の4人である。規制対象である日本原子力研究開発機構や日本アイソトープ協会から委員に選ばれており、「原子力ムラ」臭の強い人選に違和感を持つ国民は少なくない。
就任したばかりの田中規制委員長が、直ちに事務方の規制庁長官を任命し、規制委員会と同時に発足させた。原子力規制庁長官は「警備のエース」と呼ばれた池田克彦・前警視総監。次長には、長年環境省で環境行政に携わり、内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室長として「規制委員会+規制庁」を生み出すことに貢献した森本英香・元環境省審議官を任命した。事務局のトップに原子力と関係のない省庁出身者を充てることで、「原子力ムラ」のイメージを払う狙いもある」と、勘ぐる向きもある。
通産省傘下の原子力安全・保安委員会は、原発事故処理に当たって全く機能せず、解体に追い込まれた。この反省を込めて発足した原子力規制委は、公正取引委員会国家行政組織法3条2項の委員会として独立性を高めることなどを定めた。いわゆる「3条委員会」として大きな権限を持つ機関と位置づけられた意味は大きい。ただ、環境省の外局のため、同省が人事案件の準備を進め、環境相が規制委員長・規制庁長官の人事を事実上決めたことに、規制委の独立性を危ぶむ批判があるのは、故ナシとしない。
▽原子力規制の強い権限 原子力規制委員会の田中俊一委員長は、10月10日の記者会見で、原発の早期再稼働などを求める地方自治体や経済団体の要請や陳情に関し「地方でも中央でも規制委の独立を守りたい。要請文を持ってきても受け取るつもりはない」と述べた。田中氏は世論を意識してか、「要請文を受け取っただけでも、政治的な関与が否定できなくなる。そこはけじめをつけていきたい」と強調。再稼働の前提になる安全審査では、地域の電力需給や経済の状況を判断材料にしない方針を重ねて示した。北海道の経済団体などは10月9日、北海道電力泊原発の早期再稼働が必要として、規制委に要請機会の設定を打診したが、規制委側が断っている。
規制委の所掌事務は、①原子力利用における安全確保に関すること②原子力に係る精錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに原子炉に関する規制その他これらに関する規制、安全確保に関すること③各原料物質及び核燃料物質の規制、安全に確保に関すること④放射線による障害防止に関すること等と規定。「その所掌事務を遂行に必要あると認めるときは、関係行政機関に対し安全性の確保を勧告、とった措置について報告求める」との勧報告徴求権限が付与されている。
▽規制委員の国会同意手続きをとれ 毎日新聞9月19日付社説は「国会事故調査委員会は、(当時)の規制当局が専門性で東電に劣り、『規制する立場とされる立場に逆転関係』が起きて、事業者の『虜』」になっていると指摘したが、その徹を踏んではならない。規制庁の職員の多くは保安院などからの横滑り組が占めるが、虜とならない専門性の向上策や意識改革が欠かせない。……そのためにも、規制委人事の国会同意を求めたい。政府は与党からも造反が出ることを嫌い、特例規定に基づき首相権限で委員を任命したが、規制委発足の経緯やその強大な権限に照らせば、国会同意は不可欠である」とズバリ指摘していたが、その通りである。
規制委発足に問題点はあったが、ともかく田中規制委はスタートし、原発地下の活断層調査などを始めるなどの実務に積極姿勢を見せている。田中委員長も各紙のインタビューに応じ、やる気満々の気構えを示している。田中氏の発言を要約すると、「原発30基の1次評価が提出されているが、手続きは白紙に戻す。来年7月中旬までに新たな安全基準を法制化し、それに基づいて再稼動の可否を判断したい。規制委が再稼動を認めた原発を動かすかどうかは政府の判断の問題だ」などと、明快である。
日経9月26日付社説が「原発再稼動をめぐり、政府と規制委とで責任の押しつけ合いともとれる発言が目立つ。福島原発事故を踏まえ新組織を設けたのは『原子力の推進と規制の分離』の徹底にある。その原則に照らせば、政策を決めて遂行するのは政府の責任。安全の判断で責任を負うのは規制庁と、互いの役割は明確なはずだ」と分析していたが、両者の役割分担をきちんと決め、原子力規制のお目付け役の任務を果たしてもらいたい。
▽使用済み核燃料をどうする? 野田佳彦政権は先に「2030年代の原発ゼロ」をぶちあげたが、核燃料サイクル維持など多くの矛盾点が指摘されている。ウラン・プルトニウムを大量に含む高レベル放射性廃棄物である「使用済み核燃料」処理は、世界的な大問題となっている。特に使用済み核燃料からウラン及びプルトニウムを抽出することで核兵器への転用も可能なため、大量に貯蔵することは好ましくない。日本では、青森県六ヶ所村に再処理工場を設けたものの、トラブル続きでほとんど機能していない。
田中氏も「原子炉の上に、使用済み核燃料を大量保管している現状は、明らかによくない。できるだけ地上に降ろし、金属製の容器に入れて保管する方が、はるかに安全だ」と述べ、全原発で使用済み燃料の地上での保管を検討すべきだとの考えを示した。しかし「保管場所の確保や、地元の了解を得る必要があり、実際に作れるかどうかは、事業者と地元との関係になる。ただ、規制委としては、より安全だという説明はするが、設置の要請などはしない」と述べ、運転再開の判断と同じように、政府や事業者が対応すべきだとの認識を示している。当然の発言だろうが、使用済み核燃料をどう処理するか、議論だけでなく規制委は実効性ある具体策を早急に提言してほしい。
▽「大間原発」建設再開に疑義 福島原発事故後、建設中だった工事は中断したまま。その1つのJパワー(電源開発)が10月1日、大間原発(青森県大間町)の建設再開を明らかにしたことに驚いた。同原発は使用済み核燃料再処理でできたプルトニウムとウランの「混合酸化物(MОX)燃料」を使って発電する計画で、新たな難題を投げかけた。もう1つの問題点は、大間原発を40年間動かせば、「30年代原発ゼロ」の目標は達成できない。野田政権の原発政策は支離滅裂で、信用ならない。
このような原発政策のチェックが規制委の職務だが、核燃料サイクルや大間原発建設再開について、政府側から事前に検討を求める働き掛けがあったとは思えない。問い掛けがあれば、規制委が独自調査すべき重大案件であるからだ。早くも「規制機関をつくったが機能せず」の実態に驚く。野田政権が勝手に決めて走り出す危険性を感じるのである。これでは「強力な権限を持つ3条委員会」の機能を果たせるか、心許ない。内閣原子力委員会新大綱策定会議のメンバーだった金子勝慶大教授は「原子力ムラを第三者の立場からチェックするのが規制委の役割なのに、政府は骨抜きにしようとしている。これでは国民から信用されない」と指摘していた。
原子力規制委員会は、原発を推進する経済産業省から規制部門の原子力安全・保安院を切り離し、内閣府原子力安全委員会などとともに一元化した機関であることを再確認すべきだ。それは、福島原発事故で批判を浴びた「原子力ムラ」のもたれ合いの構図を断つ狙いだったはずだ。公正委員会と同じ「3条委員会」として独立性を担保した意義を大事にしたい。規制委は公開の場で、堂々と正論を述べ、原子力政策のご意見番としての職責を果たしてほしい。
*新聞通信調査会「メディア展望」11月号から転載
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