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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2014年12月04日23時54分掲載
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政治
【衆院選の争点:ガザ攻撃の取材から】 日本が売った武器で人々が殺されることを容認するのか 志葉 玲
衆院選の重要争点の一つは、安倍政権の外交・安全保障政策の是非だろう。中でも筆者が問題視しているのは、武器輸出の問題だ。安倍政権は昨年3月、米国の最新鋭戦闘機F-35開発への日本企業参加について、「武器輸出三原則の例外とする」と閣議決定。今年4月には、武器輸出三原則を撤廃し、新たに防衛装備移転三原則を設置。武器輸出は原則禁止から、原則容認へと、180度方針転換された。
武器輸出をめぐる議論については、日本のマスメディアでは「日本企業の国際競争力」「産業育成」といった業界や安倍政権の広報活動か、と思いたくなるような論説が目立つ。だが、最大の問題は、一部の業界や政治家の利権のために、日本が売った武器で人々が殺されることを容認するか、否かということだろう。とりわけ、F-35の開発参加は日本の官民で戦争犯罪に加担する可能性が大きい。防衛省は、F-35の共同開発に参加する日本企業への支援として、2013年度予算で830億円、さらに2014年予算では430億円を計上。IHIや三菱電気が参画予定であり、三菱重工もコスト面で調整がつけば参画する可能性がある。F-35開発の中心となる米ロッキードマーチン社も「最大で40%の部品が日本産となるだろう」としている。
だが、F-35は中東で戦争を繰り返すイスラエルも導入を予定しているのだ。そのイスラエルは今年7月から8月の50日間にかけて、パレスチナ自治区ガザへの軍事侵攻を行った。その名目は「テロ掃討」であったが、現地で筆者が観たのは、一方的な虐殺であり、国際人道法違反の戦争犯罪の連続であった。
現地時間7月30日早朝、ガザ北部ジャバリア難民キャンプで、国連が運営する学校がイスラエル軍に攻撃を受けた。私も知らせを聞いて現場に急行する。ジャバリア難民キャンプは、中東戦争以降、多くのパレスチナ人が流れ着いて出来た街で、ガザの中でも最も人口密度の高い地域の一つ。同地区にある「ジャバリアA&B女子学校」は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営するもので、ベイトハヌーンなどガザ北部の戦闘の激しい地域から避難してきた人々の避難場所となっていた。現場に駆けつけた私を待ち受けたのは、むせ返るような血の臭いだ。犠牲者の肉片や血糊、頭蓋骨の破片などが破壊された教室の周囲に散乱していた。
この攻撃の負傷者は周囲の二つの病院へ搬送され、両病院に筆者が確認したところ、死者は22人、負傷者は140人ほどだという。このジャバリア難民キャンプの事例も含め、実に3回も国連管理の学校が攻撃され、避難していた人々が殺されている。イスラエル当局は「武装勢力がまぎれこんでいる」「武器の隠し場所になっている」と国連の学校への攻撃を正当化したが、筆者が現場で聞くと、避難民の人々は 「国連の学校には武器の持ち込みは禁じられていた。あそこにいた避難民に銃や爆弾を持っていた人は1人もいない」「私たちはただの一般市民。武装勢力ではない」と口々に反論した。
結局、イスラエル軍が殺したのは、罪のない一般市民だ。ガザ中心部にある主要病院「シファ病院」で、出会ったマナール・アルシンバリさん(14 歳)は、ベイトハヌーンの国連学校に避難していたところ、イスラエル軍の爆撃に遭い、両足と脾臓を失った。さらに彼女の母親と二人の妹(それぞれ、8歳と12歳)など親族5人が死亡したという。国連施設への攻撃は、今回にかぎらず、イスラエル軍の「悪しき伝統」である。私の取材経験の中でも、レバノン侵攻(06年)、08年末から09年頭のガザ侵攻「鋳られた鉛」作戦で、イスラエルによる国連の避難施設や食料・医薬品庫への攻撃の被害を見聞きしてきた。さらに、病院や救急車への攻撃も毎度のように行っている。ジュネーブ条約等の国際人道法では、攻撃はあくまで軍人及び軍事施設に限定し、民間人や民間施設をターゲットにしてはならないと定められており、上記したようなイスラエル軍の行為は、全て戦争犯罪として、処罰されるべきものである。だが、米国の全面的な擁護やユダヤ人迫害の過去から及び腰な欧州の姿勢から、国際刑事裁判所で裁かれるまでには至らず、イスラエルは毎度でも戦争犯罪を繰り返すのである。
安倍首相をはじめとする日本の武器輸出を推進する面々には、筆者がこの夏ガザで観てきたものを、是非、観てもらいたい。その上で、なお、武器輸出を行うのか問いただしたい。ガザ中部デルバラの病院では、筆者が取材している間も、次々と負傷者や遺体が運び込まれてきた。その中には、子どもや女性の被害者も多かった。その日の朝、ガザ中部ブレイズ難民キャンプの民家をイスラエル軍のF-16戦闘機(これもメイド・イン・USAだ)が爆撃。その家に住んでいたジャベル一家22人が死亡。その遺体が搬送されてきたのである。小学生くらいの幼い女の子の遺体、その母親や姉と思われる遺体…。
まだへその緒がついた赤ん坊の遺体まであった。灰にまみれたその小さな頭部は、無残にも割れ、脳みそがこぼれ落ちている。爆撃時、ジャベル家のディアナさんは妊娠9ヶ月目で、おそらく爆撃時のショックで流産したものと思われる。遺体安置室が子どもや女性の遺体でいっぱいになっていくのは、全くやりきれない光景だった。
武器を輸出するということは単なる金儲けではない。その先には必ず被害者がいるのだ。 何の罪のない子ども達がバラバラの肉片、黒焦げた炭の塊となる。そうした非人道的な虐殺に日本が加担する、ということなのだ。08年から09年1月のガザ侵攻「鋳られた鉛作戦」で、両親を含む親族らを目の前でイスラエル軍に惨殺されたザイナブ・サモーニさん(18歳)は、私にこう訴えた。「日本の人々は良い人たちだと思います。どうか、米国やイスラエルに武器を売らないで下さい。その武器が、私達を殺します」と。この言葉の意味、込められた悲しみの深さを、安倍政権の面々は勿論、日本の有権者にも我が事として感じとってもらいたい。金のためなら何をしてもいいのか。血にまみれ、死体の山を築いて利益を上げることが「国際社会の中で名誉ある地位」(日本国憲法前文)をしめることなのか。本当に、よく考えるべきなのだ。
文・写真:志葉玲
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破壊された街
デルバラの病院
国連学校への攻撃
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