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2015年05月18日00時19分掲載
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反戦・平和
「慰安婦」問題は「日本政府への提言」をベースに解決できる! 〜問われる日本政府の対応〜
「『慰安婦』問題で日本政府に新たな努力を行わせるには、被害者が受け入れ、運動団体も受け入れ、両国国民も支持し、そして日本政府が実行できる解決案があることが明らかにならなければなりません。2014年6月に開催された第12回日本軍『慰安婦』問題アジア連帯会議(以下、アジア連帯会議)が打ち出した『日本政府への提言』に接したとき、私はこれがそのような解決案に近いものだと考えました。この提案は実に注目すべきものであり、問題解決の基礎になる案だと思います」 この発言は、1995年に発足し、2007年に解散するまでの12年間に亘って日本軍「慰安婦」被害者への償い事業を進めた財団法人「女性のためのアジア平和国民基金」(略称:アジア女性基金)で専務理事を務めた和田春樹さん(東京大学名誉教授)が4月23日に参議院議員会館で開催された院内集会「『慰安婦』問題、解決は可能だ!」の中で語ったものである。 集会を主催したのは「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」(以下、全国行動)と「日本の戦争責任資料センター」の2団体。 ご存知の方も多いと思うが、「慰安婦」問題の解決に向けて取り組む日本国内の団体・個人が集まって2010年に発足した全国行動は、アジア女性基金の事業について「日本政府が公式な謝罪と賠償を行わず、その責任から目を背けるものだ」と批判する立場であり、その全国行動がアジア女性基金の事業を進めた和田さんを集会に招くとあって、参加者約300人(主催者発表)の2割に当たる約70人のメディア関係者が駆け付けたほか、韓国、アメリカ、オランダの各駐日大使館員も訪れるなど大きく注目を集めた集会となった。
全国行動が打ち出した「日本政府への提言」は次のとおりである。
日本軍「慰安婦」問題解決のために日本政府は
1.次のような事実とその責任を認めること
� ‘�本政府および軍が軍の施設として「慰安所」を立案・設置し管理・統制したこと �◆―�性たちが本人たちの意に反して、「慰安婦・性奴隷」にされ、「慰安所」等において強制的な状況の下におかれたこと �� 日本軍の性暴力に遭った植民地、占領地、日本の女性たちの被害にはそれぞれに異なる態様があり、かつ被害が甚大であったこと、そして現在もその被害が続いているということ �ぁ‥�時の様々な国内法・国際法に違反する重大な人権侵害であったこと
2.次のような被害回復措置をとること
� )櫃垢海箸里任�ない明確で公式な方法で謝罪すること �◆ー婪瓩両擇箸靴独鏗下圓貿綵�すること �� 真相究明:日本政府保有資料の全面公開・国内外でのさらなる資料調査・ 国内外の被害者および関係者へのヒヤリング �ぁ〆独�防止措置:義務教育課程の教科書への記述を含む学校教育・社会教育の実施・ 追悼事業の実施・誤った歴史認識に基づく公人の発言の禁止および同様の発言への明確で公式な反駁等
主催者を代表して挨拶した日本の戦争責任資料センター研究事務局長の林博史さん(関東学院大学教授)は、「日本政府への提言」をベースに解決を目指そうと訴えた。 「日本社会には、『慰安婦』問題について『日韓の対立が激しくて、もう解決は無理だ、出来そうにない』という雰囲気があるようです。特に、『韓国を中心とする運動団体の主張が非常に強硬なので、対立が激しくて駄目だ』というイメージもあるようです」 「昨年6月にアジア連帯会議が打ち出した『日本政府への提言』は、現時点において、恐らく日韓両政府、被害者の方々、支援団体も受け入れ可能な解決案だと考えて発表されたものです。今日のシンポジウムで檀上に並んでいるメンバーは、司会の私を含めて、アジア女性基金の評価がどうであれ『基金によって問題はまだ解決されていない』という認識を共有しています。そして、解決していくベースとなるのが『日本政府への提言』であり、これを幅広い人々の共同で実現していこうという点で一致しています。戦後70年という節目の今年中になんとしても解決したく思っています」
全国行動共同代表の梁澄子(ヤン・チンジャ)さんは、アジア女性基金で問題が解決しなかった事実を踏まえれば、現実的な解決案とは被害者が受け入れられる案だけであり、日本政府には、安倍政権を含めて歴代政権が日本政府の公式見解として踏襲してきた河野談話を踏まえて作った「日本政府への提言」をガイドラインにして、被害者が受け入れられる解決案を提示してほしいと訴えた。 「被害者の方たちに『何を望みますか』と尋ねますと、必ず最初に仰るのが『事実を認めよ』ということです。『あなたが傷付いたら謝る』とか『怒っているから謝る』という人がいますが、謝るとはそういうことではありません。『何をしたのかを認めることが大事だ』と被害者たちは仰っています。だから、提言では『事実と責任を求める』ことを非常に重視しました。提言1.�,浪鰐鄰模辰糧�展形で、河野談話では軍の関与は認めましたが、河野談話発表後に明らかになった公文書をきちんと読んでいけば、軍が慰安所を立案・設置し管理・統制した主体であったことは明らかです。ですから、そこをきちんと認めるということを1番に持ってきました。提言1.�△蓮�河野談話が言っていることです。提言1.��について、加害国の責任ある立場の人が具体的な事実を述べるならば、恐らく被害者感情にとって大きな慰藉になるのではないでしょうか。そういった具体的な言及を日本政府には是非考えていただきたい」 「被害回復措置4つのうち、2.�,鉢△�きちんとなされるならば、その他の��真相究明や�ず独�防止措置は長い時間を掛けて継続的に取り組んでいくべき課題だと思っています。2.�,�ら�い泙覗瓦討魄貪戮砲笋蕕覆韻譴佛柴世任�ないという訳ではありません。高齢の被害者たちに対して、まずは為すべきことを為し、それから日本国としてやっていかなければならないことを続けていくという決意を示すことが唯一、被害者たちの求める解決なのです」
韓国挺身隊問題対策協議会(以下、挺対協)常任代表の尹美香(ユン・ミヒャン)さんは、「日本政府への提言」を高く評価しつつ、日本軍「慰安婦」被害者たちに安息と平和を与えられるかどうかは日本政府・安倍政権にかかっていると訴えた。 「2011年11月30日、日本軍『慰安婦』問題に関する韓国の憲法裁判所判決以降、韓国社会では日本軍『慰安婦』問題に対する日本政府の法的責任と解決に関する議論が活発化しました。そして、これまでに要求してきた『法的な解決』とは具体的に何なのかについての議論も始まりました。2012年に入り、挺対協の法律専門委員会は、日本の全国行動や法律家たちとともに日韓タスクフォースを設置して『解決』に関する討論を開始し、2014年4月10日に『韓国市民社会の要求書』を発表しました。そうした結果を踏まえて、同年5月31日から6月3日まで東京で開催されたアジア連帯会議では『日本政府への提言』が採択されたのですが、この提言こそ正に私たちが求める解決の内容でした」
アジア女性基金で専務理事を務めた和田春樹さんは、まず初めに「25年の長きに亘り、『慰安婦』問題解決のために努力してこられた皆様に敬意を表します。日本政府の側で問題の解決に関わった者の1人として、25年の経過にもかかわらず、慰安婦問題がなお未解決にあるということに対しまして責任を感じているところであります」と述べ、 「慰安婦問題の解決のために残された時間は少ないと思います。言うまでもなく、日本政府がどうするかが問われています」と強調した。
そして、アジア女性基金が批判を受けた理由について、�.▲献⊇�性基金案決定前に「民間募金で見舞金」が政府案だとの新聞報道(朝日新聞1994年8月19日付け)が出たときに否定しなかった、�▲▲献⊇�性基金設立にあたり、「償い」の概念を韓国語と中国語で説明することに失敗した。「atonement=謝罪」と訳すべきであった、�9駝永膓發如崕�い金」を支払うというアジア女性基金の基本コンセプトに問題があった。政府の責任回避を表すとして韓国の被害者と運動団体に受け入れられず、かつ現実的に事業実施できない結果が出発点で明らかになった、という3点を挙げ、 「私は、アジア女性基金の関係者は、どんなに難しくとも日本政府と交渉し、基金の基本コンセプトの修正を正式決定することで合意すべきだった」と反省の弁を述べた。
また、和田さんは「日本政府への提言」に対する自らの見方を次のように語った。 「この提言は、これまで日本と韓国の運動団体が主張してきた解決策と一見大きな違いを見せています。『法的責任を認めよ。戦争犯罪と認めよ』と、犯罪に対する懲罰としての賠償や犯罪責任者の処罰が書かれていないのです。この案を見て『運動団体が、自分たちの要求を実現できないと知って、実現し易い要求に引き下げたのだ』というふうに考える人がいるかもしれませんが、私はそういうものではないと見ています。25年に亘って運動を続けてきた訳ですが、当然ながら解決に行き着かない運動はマンネリ化します。大事なことは、被害者が本当には何を望んでいるかということに何度も何度も立ち返り、要求を新鮮なものに表現し直すことが大事です。被害者は、自分が受けた苦しみの中心は何だと考えているのか、苦しみの中心を自分に与えた責任者は誰だと考えているのか、その責任者にどのように謝罪してもらうことを望むのか、こういうことを深く考え直してみることによって、自分たちの要求項目をより鋭く、直截に表現することが必要であったのでしょう。被害者たちは、自分たちの苦しみの中核を、日本軍の慰安所などで日本兵に性的奉仕を強いられたこと、そこでさせられたことが自分の意思に反したことだと考えている人たちです。責任は慰安所を作って戦争した日本軍、日本という国にあります。だから提言の起草者は、被害者の思いを汲み取って『日本政府に代表して国の責任を認めて謝罪してほしい。国にはっきりと責任を認める、謝罪すると言ってもらいたい。謝罪の仕方はどうかと聞かれれば、真摯な謝罪であってほしい。そのことが伝わるようにしてほしい』と考えるに至ったのではないかと思っています」
日本軍「慰安婦」被害者で88歳になる金福童(キム・ボクトン)さんは、自分が死ぬまでに「慰安婦」問題が解決してほしいと訴えた。 「韓国と日本がお互いに仲良くしていくためには、『慰安婦』問題での日本政府による法的な謝罪そして賠償が必要です。しかし、私たちはお金が欲しくて賠償を求めているのではありません。私たちがお金を貰って何をするのでしょうか。私には子供がいません。こういう寂しい老人がお金を貰って何をするのでしょうか。皆さまも、外国のことだと考えず、『自分の娘だったら』『自分のお姉ちゃんだったら』というような心で、日本政府に反省を促し、問題を解決するために心を合わせて協力していただければ非常にありがたいです」
集会の最後に、全国行動共同代表の渡辺美奈さんは、日本政府が提言を元に具体的な謝罪の形を議論するよう訴えるとともに、支援者に引き続く協力を要請した。 「私たちは、この20年間、被害者の求めるものをずっと聞いてきました。『日本政府への提言』はそのガイドラインです。『謝罪とは具体的にどういう形なのか』という話がありましたが、それは日本政府が考えることであって、私たちが考えることではありません。日本政府には提言を元に議論を進めていただきたい。それでも、どうしても考えが浮かばないなら、私たちに是非相談してください」 「戦後70年の今年、あと4か月、5か月が勝負だと思っています。会場にいらっしゃる皆様には、この提言を活用し、今年こそ日本が加害責任に向き合い始める年にするためにご協力をいただきたく思っています」
会場に集まった市民との質疑応答では、「慰安婦問題が解決しないのは、日本と韓国の支援団体がいろいろと強硬に主張しているからだという意見がありますが、和田先生はどう思われますか」という質問が出たが、これに対して和田さんは次のように回答した。 「私はそう思っていません。今日私が申しましたように、解決できないのは基本的に日本政府の立場に問題があるからで、そこに責任があることは明らかです。もちろん、運動のプロセスにおいては、いろんな主張やそれに対する反論が出る訳ですが、この度、問題の解決策が出されたのは、ひとえに被害者側に立って運動を進めてこられた皆さんの努力の結果であることは明らかです。そして、解決出来ないでいるのは日本政府の責任であると思います」 「アジア女性基金のどこに誤りがあったかを詰めなければ解決の一歩を踏み出すことが出来ないかというと、日本政府としては、その一歩を踏み出すことで問題が解決出来るのかどうかを気にしているのではないかと思っています。もちろん、どの団体も誤りを認めたくないですから、日本政府も自分のしてきたことが誤っていたということを認めたくないでしょう。しかし、私が今日申し上げた第3番目のポイント(=アジア女性基金の基本コンセプトの欠陥)はかなり深刻な問題だと認識しています。だから、日本政府ともよく話をしなければならないと思っていますし、アジア女性基金の事業を一緒に取り組んだ人々ともよく話をしなければならないと思っています」
集会に続いて行われた記者会見において、記者の中から「法的責任という問題をどうクリアするのか」という質問が出たところ、全国行動共同代表の梁さんは、提言に「法的責任」という言葉が無いからといって法的責任が不要であるということではないと強調した。 「私の説明の中で繰り返し申し上げたように、私たちは法的責任とは何かという議論の結果、この提言を導き出しました。提言の中には、結果的に『法的責任』という言葉は書き込みませんでした。それは、提言に掲げた4つの事実を加害国が認めることは、すなわち法的責任を認めることになると考えたからです。提言では縮約的な言葉を使っていますが、これは法的責任という言葉を具体的に語っているとも言えます。最終的に日本政府が解決案を示すときには、『法的責任』という言葉も含めて、提言に書かれている言葉を使わなければいけないとは思っていません。加害国が、かつての軍が何をやったのかを具体的に認めれば、その中身は自ずと法的責任を認めた中身になります。提言では『具体的な中身がほしい』ということを言っている訳です。ですから、『法的責任』という言葉が無いからといって、法的責任は要らないとは全然言っていません」
和田さんは、記者会見の最後に「日韓議連の額賀福志郎さんや河村武夫さん、『慰安婦問題は解決しなければならない』と仰っている自民党総務会長の二階俊博さんといった方たちと運動団体の方たちが会って話することを求めたい」と語っていたが、安倍政権の姿勢や朝日新聞の誤報問題などもあって、今や世間では「『慰安婦』問題は無かった」みたいな風潮が広まっており、現段階で自民党が面談に応じる可能性は低そうだ。目に見えない障害をどう克服するか、悩ましい問題である。 今週、韓国・ソウルで第13回アジア連帯会議が予定されている。全国行動関係者によると、日本の運動団体からも多数参加する今年の会議では、提言を日本政府にどう実行させるかという次の段階について議論される見通しで、韓国国会議員の注目度も高いという。日本政府の対応が注目される。(坂本正義)
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