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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2015年09月20日16時50分掲載
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コラム
国立大学全国一斉「日の丸掲揚、国歌斉唱」と政府はウソつきであるということについて
6月16日、全国の国立大学の学長会で、下村博文文部科学大臣が入学式・卒業式に日の丸掲揚と国歌斉唱をするよう要請したのに対し、学長らが困惑しているとのニュースが流れた。すでに公立中学校・公立高校では、「改正」教育委員会の指導の下、起立の有無や口もと検査まで行って、日の丸掲揚・国歌斉唱が強要され、教職員の不当処分がなされ、訴訟まで起きているが、その波がいよいよ国立大学にも及ぶことになる。(伊藤一二三)
道徳を「特別な教科」に格上げし、日本の青少年に愛国心を教育することの強化が必要と考えている(昨年来、諮問を出してきた)下村文科大臣ならではのパフォーマンスである。彼は、早稲田大学教育学部卒であるが、まず母校へ行って要請したらどうか(大隈重信が生きていれば許さないと思うけれど)。 とはいえ、「入学式や卒業式に国歌や国旗が大切にされて何が変なのか。当然のことではないか」と言う人も少なくないのではないかと思う。私も、そうした行為が自然に行われるような国であってほしいと思う。しかし、現在の日本社会は、そうした「自然さ」とは程遠いのではないか。
すでに亡くなった私の母は、大正13年生まれ、東京の下町の蕎麦屋の養女で、無学歴の人であった(養父母に対し、唯一、女学校に進学させてくれなかったことを恨めしく思っていた)。 母によれば、尋常小学校の3年生ころまで(即ち10歳前くらい)、天皇陛下は雲の上に住んでいると思い、実際に空を見上げることがあったという。母には軍国少女というほどの強さも信念も無かったが、教育勅語や歴代天皇の暗唱は得意であり、皇国教育は深く浸透していたと言ってよい。恐らく、当時の大日本帝国の子どもたちの多くが、そうであったと思われる。そして、その延長に国家総動員体制、一億玉砕スローガンがあった。 (最近、NHK特集で沖縄戦についての放送があったが、当時の「民間人であっても降伏してはならない。最後まで闘え(武器としての竹槍もないのに)。もしくは自決しろ(公的な命令は無くても手榴弾が配付された)」といった考え方も、皇国教育とつながった同調行動の強要であった) だからこそ、昭和20年8月15日の敗戦後、焦土と化した国土の中で、戦争の悲惨さ、残酷さを舐め尽くした多くの国民は、日本国憲法による戦争放棄とともに、戦争につながらない民主的な教育を希求して、旧教育基本法を受容したのである。
私の母は、昭和20年3月15日の東京大空襲の業火の中を逃げ延びた経験を持っていたが、その夜、複数の同級生・仲間を喪った。その後の数日間、人間の遺体が焼け焦げる臭いの中で生活したという。だから、「若い人や子どもたちを戦争の惨禍に追いやらないこと」「国歌や国旗を無自覚に、たやすく信用しないこと」という一見別のようでありながら、その2つが繋がっていることを身をもって知っていたのだと思う。 また母は、戦死者、そしてその遺族の戦後の生活ぶりの大変さについて、深く同情する人だったが、靖国神社については率直に言って嫌いであった。靖国神社には軍人と軍属だけが祀られ、空襲等で亡くなった被災者、母にとっての幼馴染みたちは祀られなかったからである。「国家的教育思想一色に染まってしまうことより、いろいろな考え方・教育方法があった方がずっと良い」。それが母の思いであった。
実は、安倍晋三首相も下村博文文科大臣も、小生と同年代で、したがって戦後生まれの、直接的な戦争体験を持たない世代である。ただ、どうも小生と異なって、別世界の家庭環境でお育ちになったのではないか。だから勝手な憲法解釈、判例解釈を行って、集団的自衛権の正当化を推し進めるのではないかと思ってしまう。 安倍首相の母方の祖父は、妖怪と呼ばれた岸信介であり、戦争中に財務官僚として源泉徴収制を作り、莫大な戦費の調達に活躍し、同じ源泉徴収制を戦後も引き継いで、多くのサラリーマンから血税を搾り取り、高度経済成長を支えた「英雄」であり、BC級戦犯として裁かれたのは不当なことだといった思いが、安倍首相の胸中にあるのではないか。だから、約400万人に及ぶ戦死者や戦争被災者が国内に生じたことについて、想像力を欠いているのではないかと思ってしまうのである。 少なくとも、安倍首相や下村文科大臣に民主主義は理解できていない。民主的であるということは、様々な対立意見を含めて自由に論議するということにある。やれ「自虐史観だ」「GHQの押し付けだった」と強調し、それと逆方向で考えるのが、彼らにとって全て正しいことのだ。「早く質問を出せ」という彼らの権力者としての姿勢は全く民主的でないし、哲学的でもない。 小生が小6だった頃、母に「日本国憲法にしても、何で敵国だったアメリカの言いなりになったの?」と問うたことがあった。母の答えは明快だった。「そりゃ、みんなが、政府がひどい嘘つきだったと思い知ったからさ」。現在の安倍政権が嘘つきでない保証はない。(伊藤一二三)
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