報道機関の中でも通信社は自ら媒体を持たないが、新聞社やテレビ局などの報道機関に記事を配信し使用料を得ている。産経新聞も時事通信社などと契約を結んでいると思うのだが、3月27日におかしな記事を出した。 それは、既に時事通信社が昨年12月21日に配信していた内容を一部なぞったもので、3月27日に主要部分について「昨日判明」とした内容で報じたのである。
もんじゅ模擬燃料170体不足 廃炉の障害…原子力機構、ずさん管理露呈
http://www.sankei.com/life/news/170327/lif1703270003-n1.html 廃炉、遠い道のり=燃料搬出準備整わず−ナトリウム処理課題・もんじゅ
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016122100489&g=eqa
時事通信の記事を知らなかったとしか思えないような産経新聞の記事だ。今「もんじゅ」で何が起きているのか。
今のままでは廃炉になった「もんじゅ」から燃料を取り出せないという事態に陥っている。責任の所在は燃料を取り出す際のダミー燃料体を用意していない原子力研究開発機構にある。これが大量に不足しているため、異常事態になっているのだ。
問題発覚のきっかけは昨年12月21日に「もんじゅ」の廃炉が決まった時に遡る。 廃炉になったからには、安全に燃料を保管する必要が生じる。 可及的速やかに炉心の燃料集合体を取り出し、炉外燃料貯蔵槽(原発の使用済燃料プールに相当する)に移動させるべきだが、まだ炉心に198体、ブランケット燃料体172体を合わせると370体が残ったままだ。
「もんじゅ」の炉心燃料198体の燃料集合体は「ラッパ管」と呼ばれるステンレス製の筒状容器に燃料棒(燃料要素という)が169本が入っている。ウランとプルトニウムのMOX燃料だ。六角形のラッパ管はそれぞれの面が接するようにして炉心に入れられている。つまり六面で支え合っている。この隙間に燃料を支える構造は存在しない。燃料同士が支え合っている。
従って燃料を炉心から抜く場合、抜いた場所にラッパ管と同じサイズのダミー燃料体を入れなければならない。順次ダミー燃料体と置き換えていくことで、全部の燃料を取り出すことが出来るが、用意されているダミー燃料体は200体しかない。ちょうどブランケット燃料分が不足する計算だ。
◆これでは「もんじゅ」を廃炉に出来ない。
どうやら廃炉計画そのものが最初から存在せず、照射したブランケット燃料体を順次取り出して高純度プルトニウムを生成したら炉外燃料貯蔵槽に運び出し、ナトリウムを除去してから缶詰めにして再処理施設(東海村のRETF)に送る計画だった。 炉心の燃料は再処理する施設がないため、炉外燃料貯蔵槽にそのまま留置かれるのであろう。これでは相当危険だが、運転していれば誤魔化すことも出来た。いわば原発と同様に使用済燃料を保管しているだけだから。
ナトリウムを冷却材に使っているので、「もんじゅ」の燃料は今も極めて危険な状態にある。軽水炉のように水ならば貯蔵槽が破損して漏れ出しても、とにかく水を送り続けていればなんとかなる。
しかし劣化した配管からナトリウムが漏れて火災事故を起こしたり、地震や津波で施設設備が重大な損傷を受けるなどしたらナトリウム火災事故と同時に核燃料の事故をも引き起こす。燃料すら安全性を確保していないのだから極めて重大な背信行為だ。ダミー燃料体の製造と、もし破損しているものがあればその改修作業を最優先で行うべきだ。
地震や津波が人間の都合を「待ってくれる」わけではない。
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