安倍政権は4月6日、今国会の“最重要法案”と位置付ける「働き方改革関連法案」(雇用対策法、労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の各改正案)を国会へ提出した。 これに対し、麻生太郎財務相の辞任などを求めて審議拒否していた立憲民主党(立民)と国民民主党(国民)は、19日ぶりに国会に復帰した5月8日、それぞれ対案を衆議院へ提出。 さらに日本共産党も5月11日に労働基準法等改正大綱を発表しており、衆議院厚生労働委員会での今後の論戦が注目される。
政府案と野党案の主な違いは、次のようになろう。 ① 罰則付き残業時間の上限規制 政府案・国民案=月100時間未満、2~6カ月の平均で月80時間以内 立民案=月80時間未満、2~6カ月の平均で月60時間以内 共産案=月45時間未満
② 高所得の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」 政府案=導入 立民案・国民案・共産案=導入反対
③ 勤務時間後に一定時間の“休息期間”を確保する「勤務間インターバル制度」 政府案=努力義務とする 立民案・共産案=11時間以上の休息期間付与を義務付け 国民案=省令で定めた休息時間付与を義務付け
<雇用共同アクションによる抗議行動> 国会の動きに呼応して、全労連と全労協を中心に幅広い労働組合で2013年に結成された“安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション(略称:雇用共同アクション)”は現在、衆議院第二議員会館前での抗議行動(国会前アクション)や衆議院厚生労働委員会の傍聴行動等に取り組んでいる。
〔雇用共同アクション構成団体:全労連、全労協、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)、全国港湾労働組合連合会、航空労組連絡会、純中立労働組合懇談会、中小労組政策ネットワーク、東京争議団共闘会議、けんり総行動実行委員会、コミュニティ・ユニオン首都圏ネットワーク、反貧困ネットワーク〕
雇用共同アクション事務局長の伊藤圭一さん(全労連)は、野党が欠席する中、衆議院厚生労働委員会で政府案が審理入りした5月2日(水)昼に行われた国会前抗議集会において、情勢報告を行いつつ、 「政府・与党が創設を目指している、高所得の一部専門職を労働時間規制から外す“高度プロフェッショナル制度”の欠陥を、できるだけ多くの人に知らせることが大事だと思います。また、正規・非正規労働者の待遇差を解消する“同一労働同一賃金”の導入について、野党の中にも、労働組合の中にも、弁護士団体の中にも『これは良い法案だ』という人がいます。しかし、我々が見る限り穴だらけです。『正規労働者と非正規労働者の間に職業経験、能力、業績・成果等で一定の違いがあれば、差をつけてもよい』と法案で容認していることは、格差の正当化です。『それはおかしい』という声を国会内外で大きくしていかないと、まともな法案改正の道筋はできないと思います」と訴えた。
また、国会前に集まった人たちへの激励に駆け付けた日本共産党の山添拓参院議員は、 「安倍首相は『労働基準法の70年ぶりの大改正だ』と言っています。しかし、その中身は労働時間規制を骨抜きにしていくというものです。この間、データを捏造し、隠蔽し、労働局長が暴言を吐く、そうした歪んだ労働行政の数々について、反省も無く、検証も無く、改悪を強行ありきで進めていくことは断じて許せません」と怒りを露わにした。
組合関係者の中には「衆議院での法案審議が山場を迎えるのは5月末ではないか」と予測する人もいる。 それ故、雇用共同アクションは当面、毎週金曜日の12時15分から衆議院第二議員会館前で国会前アクションを続ける方針だ。 その他、院内集会や国会前での座り込み等も検討されているとのことである。
<労働法制改悪阻止!全国キャラバン> さらに、全労協を中心に結成する“労働法制改悪を阻止するための全国運動実行委員会”は現在、「8時間働けば生活できる社会へ!」「最低賃金、全国どこでも今すぐ1000円!目指そう1500円!」をスローガンに掲げて全国キャラバンを実施している。
〔“労働法制改悪を阻止するための全国運動実行委員会”構成団体:コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク、全国コミュニティ・ユニオン連合会、全国一般労働組合全国協議会、国鉄労働組合、全日本港湾労働組合、全水道東京水道労働組合、郵政産業労働者ユニオン、東京都労働組合連合会、全日本建設運輸連帯労働組合、全統一労働組合、中小労組政策ネットワーク、全造船関東地協労働組合、全国労働安全衛生センター連絡会議、(特非)東京労働安全衛生センター、NPO法人・派遣労働ネットワーク、18けんり春闘全国実行委員会〕
2つのキャラバン隊は、4月20日に北海道と沖縄県を同時スタートし、5月22日(火)18時30分から東京・日比谷野外音楽堂で開催される「『定額¥働かせ放題』で過労死促進の高度プロフェッショナル制度・裁量労働制拡大はいらない!働く人が大切にされる社会を!日比谷野音集会2018」(主催:日本労働弁護団)に合流する予定である。 地方の中には、全国キャラバンが媒介役となり、連合系・全労連系・全労協系の各労組がナショナルセンターの枠を超えて、政府による労働法制改悪に対抗するべく共闘するケースも現れているとのことである。 さらに全労協は、全国キャラバンの東京実行委員会といった形で、5月18日(金)に都内一斉宣伝行動、5月22日(火)に経団連と厚労省東京労働局に対する要請・抗議行動も計画しているそうだ。
米朝首脳会議や森友・加計問題など注目すべき問題が国内外に山積して目移りしてしまいがちだが、働き方改革は、日本で暮らす多くの労働者の身に降りかかってくる問題である。政府案・野党案の審議の行方に加えて、労働組合の取組にも是非注目してもらいたい。(坂本正義)
5・22日比谷野音集会の詳細はこちら。 http://roudou-bengodan.org/topics/6741/
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