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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2018年12月09日16時12分掲載
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深紅のワインの味がした バルバラ セーヌの黒いバラ 笠原眞弓
映画を見ているときから、無性にワインが飲みたかった。赤いワインが。まだ日が高いのに、小さなコーヒーショップに入った。一人で。家でも一人で飲むことはないし、友だちや仲間たちともソフトドリンクしか飲まなくなっていたのにである。それほど正気を失っていたのだ。いや、正気を失っていたのではなく、不安だったと言う方が当たっている。
映画自体は、1950年代からシャンソンの女王と絶賛されていたバルバラの映画を撮影している現場なのだが、バルバラを演じる俳優ブリジット(ジャンヌ・バリバール歌手でもある)もイヴ監督(監督のマチュー・アマリック自身が演じた)も、どこからが演技でどこからが現実か錯綜して、観ている私はさらにどこまでがバルバラとしての演技なのか俳優ブリジットを演じているのかわからなくなる。俳優と監督が綾なす愛への彷徨いが、シャンソン独特の揺さぶられるような旋律と共にフワリと空中に浮いている感じだったのである。そのとらえどころのない不安感が、何とも心地よかった。赤いワインのグラスの中に今見たばかりの映像を再生することで、少しずつ快楽に代わっていった。
映画の中では、俳優の声と本人の声が入れ替わりながら流れる。バルバラ役を演じる俳優役のジャンヌは、熱心にバルバラの声を真似、仕草を身につけたという。高度な芸術家によく見られるように、バルバラの感性は非常に研ぎ澄まされていたことが伝わる。その鋭い感性が俳優にも乗り移ったのかもしれない。1人の優れた女性の生き方に共感しつつも、生きることの辛さをも思った。黒いピアノがもう一人の主役だった。
挿入歌は、ナントに雨が降る、黒いワシ、我が麗しき恋物語、いつ帰ってくるの他約50曲。本人の舞台映像を挟みながらのつくりは、バルバラファンでなくても見逃せない作品といえるだろう。
Bunkamuraル・シネマ他上映中 全国順次公開 上映時間:99分 監督:マチュー・アマリック 「All Rights Rserved」: 2017 - WAITING FOR CINEMA - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA ー ALICELEO
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ピアノの前
セーヌの黒いバラ
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