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2019年06月24日10時55分掲載
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反戦・平和
戦争力を強める日本<1>憲法違反の「防衛計画の大綱」 矢倉久泰
安部政権は2018年12月18日、2019年度からの新しい防衛計画の大綱(防衛大綱)と中期防衛力整備計画(中期防)を閣議決定しました。中国や北朝鮮、ロシアに対応するため、米国と一層協力して、宇宙戦争まで含むさまざまな戦力強化を盛り込んでいます。これらは「武器を持たない」「戦争をしない」、つまり「集団的自衛権を行使しない」と定めた平和憲法をないがしろにするものです。その具体的な内容を検証するとともに、根っ子にある日米軍事同盟を安部政権はどう進めているのか。そして、それに対応する自衛隊の現状はどうなっているか。私たち主権者は、どのような国をめざすべきなのかを、ご一緒に考えたいと思い、数回にわたって報告と提案をさせていただきます。
▽防衛力強化の経緯 そもそも「防衛計画の大綱」とは何か。防衛省は「日本における安全保障政策の基本的指針」としています。1947年5月施行の日本国憲法は「戦争放棄」「陸海空その他の戦力は保持しない」と定めましたが、どのような経過で日本は再軍備を進めていったのでしょうか。 東西冷戦で米国が「日本を防共の砦に」と言い出し、1950年の朝鮮戦争勃発をきっかけに同年7月、当時日本を支配していたマッカーサー最高司令官の指示で警察予備隊が発足、7万5000人が確保されました。「軍隊」の復活です。51年にサンフランシスコ講和条約とともに米と安全保障条約を結びます。それを受けて52年に警察予備隊を保安庁に格上げし、「予備隊」は「保安隊」に改編。54年に日米が日本の防衛力増強を義務付ける安全保障協定を結び、同年7月、保安隊を自衛隊に再編して軍事的機能を持たせることにしました。 そして56年、戦後日本の防衛計画を内閣に諮問する機関として国防会議が設置されました。国防の基本方針として「直接・間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行われるときは、これを排除し、もって民主主義を基調とする我が国の独立と平和を守ることにある」としました。
岸信介内閣は国防会議の審議を経て57年7月、第一次防衛力整備計画を策定します。計画は4回策定されますが、これを実現するためには毎年、多くの予算を付けなければならず、1970年代のオイルショックやインフレという不況の影響も受けて、長期的な見通しが立てられなくなりました。そこで整備計画に代わる「防衛計画の大綱」が策定されることになったのです。 第1次大綱は、三木武夫内閣が1975年に定めました。これは「平和時の防衛力の限界」の上限を定めた「基盤的防衛力」を示すものでした。防衛費を単年度方式にし、予算の歯止めをかけるために、GNP(国内総生産)の1%を超えないことにしました。 1990年8月、イラクのクウェート侵攻よって起きた湾岸危機が翌91年には湾岸戦争へと拡大していくなかで、海部俊樹内閣は日本の「国際貢献」として米軍が主導する多国籍軍のイラク軍撃退作戦に自衛隊の派遣を可能にする国連平和協力法案を国会に上程しました。法案は、自衛隊の海外派遣は日本国憲法に違反するとの国内世論とアジア諸国からの警戒感によって廃案となりましたが、政府は多国籍軍の作戦に130億ドルの資金協力を行い、さらに戦争終結後、史上初めての自衛隊の海外派兵として、海上自衛隊の掃海艇がペルシャ湾のS機雷除去に派遣されました。 日本政府は1992年6月、カネだけではなくヒトの国際貢献」を進めるとして、国連平和維持活動に参加するPKO協力法を成立させ、戦後初めてカンボジアに自衛官と民間人を派遣します。海外派兵に第一歩踏み出したとされます。
第2次大綱は、1995年、村山富市・自さ社連立内閣が、安全保障会議の報告を受けて策定しました。1989年に「ベルリンの壁」が崩されて、米ソ対立の冷戦が終結したのと、阪神淡路大震災といった大規模な災害(安全保障)に対応するのが、大綱の方針になりました。 第3次大綱は、2004年、小泉純一郎内閣が策定しました。米国で起きた同時多発テロや大量破壊兵器、弾道ミサイルの拡散など新たな事態に対応しうるために、「多機能で弾力的な実効性ある防衛力」を構築しました。 第4次大綱は、2013年、安倍晋三第2次内閣が、中国軍の海洋進出に対応するため、「機動的展開が出来るよう」陸海空の自衛隊の統合運用を徹底する「統合機動防衛力」を定めました。安部首相はこの年、自衛隊法を改正し、海外での武器使用を条件付きで認めることにしました。 そして今回の第5次大綱。安倍内閣が設置した国家安全保障会議の議論を経て策定しました。
▽隣国を警戒する防衛大綱 では、今回の大綱の中身は? 「策定の趣旨」として、次のように述べています。 「激変する安全保障環境の中、国民の生命・身体・財産、領土・領海・領空、主権・独立を主体的、自主的な努力で守る体制を抜本的に強化する。従来の延長線上ではない真に実効的な防衛力を構築するため、質と量を必要かつ十分に確保する必要がある」 その「激変する安全保障環境」について、中国、北朝鮮、ロシアを挙げ、その「激変ぶり」を示しています。 中国については、国防費を増やして「世界一流の軍隊」を建設することをめざしているとし、「核・ミサイル戦力や海上・航空戦力を軍事力の質・量を急速に強化している」「東シナ海をはじめ海空域で軍事活動を拡大させている。わが国固有の領土である尖閣諸島周辺では公船による断続的な領海侵犯や海軍艦艇による恒常的な活動を実施。南シナ海では大規模かつ急速な埋め立てを強行し、軍事拠点化を進めている」と危機感を煽っています。中国の国防費は2018年、18兆4000億円で前年より8.1%増。米に次いで世界第2位という超軍事大国になり、宇宙やサイバーの軍事技術では、日本のはるか先を行っていると言われます。 北朝鮮については、「近年、前例のない頻度で弾道ミサイルを発射し、同時発射能力や奇襲的な攻撃能力を急速に強化してきた。核実験を通じた技術的成熟度を踏まえれば、弾道ミサイルに搭載するための核兵器の小型化、弾道化をすでに実現していると見られる」「北朝鮮の軍事行動はわが国の安全に対する重大かつ脅威であり、地域と国際社会の平和と安全を著しく損なう」と警戒心を強めています。2018年の南北脳会談や米朝首脳会談で北朝鮮が「非核化」に取り組むこと、弾道ミサイルの発射をやめていることなどには触れていません。 ロシアについては、「北極圏、欧州、米国周辺、中東に加え、北方領土を含む極東でも軍事行動を活発化させる傾向にある」としています。 だから「防衛体制の強化」が必要だと「大綱」は述べています。なんだか国民に「脅威」「不安」を煽って戦力増強をはかっているように思えてなりません。 その「防衛体制の強化」について「防衛力は平時から有事まであらゆる段階で日米同盟におけるわが国の役割を主体的に果たすために不可欠である」としています。具体的にどういうふうに防衛力を強化するのでしょうか。
▽護衛艦を「空母」に改修 その一つが、ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型二隻を改修して「空母」にし、相手軍を攻撃できる戦闘能力の高い戦闘機F35Bを搭載できるようにすることです。この戦闘機は空母から飛び立てるように短距離離陸と垂直着陸ができ、しかも「ステルス」という相手軍のレーダーに捕捉されないようになっています。それを搭載するのですから、「護衛艦」ではなく「攻撃型空母」ということになります。この戦闘機を米国から42機(F35A機を含めると105機)購入することになっています。 政府はこれまで「憲法上、他国に脅威を与えるような攻撃的兵器の保持はゆるされない」とし、安部首相は「空母に国際的に確立した定義はない」「改修後のいずもは憲法上保有を許されない攻撃型空母ではない」(2019年2月13日の衆院予算委員会)と述べ、岩屋毅防衛相も「航空機を時々の任務に応じて搭載するので、攻撃型空母には当たらない」「専守防衛に範囲内で多用途護衛艦として運用する」と弁明していますが、説得力はありません。ごまかしにすぎません。 また、相手軍のミサイル発射を探知して陸上から迎撃する迎撃ミサイル・システム「イージス・アショア」も2基、米国から購入して、秋田市の新屋演習場と山口県萩市にある陸上自衛隊むつみ演習場に配備される予定です。この2基地で日本全土をカバーできるといわれます。「迎撃」といいますが、相手軍がミサイルを発射した瞬間、日本から「イージス・アショア」を発射させて撃ち落とすことができるので、攻撃型に近い兵器と言えます。 戦闘機もミサイルも米軍と協力して使用し、共同行動をすることになっており、憲法にのっとった自衛隊の指針「専守防衛」から転換する「集団的自衛権の行使」です。「防衛計画の大綱」は改憲を実質化するものです。 これらの高性能の兵器はアメリカから購入することになっています。「いずも」に搭載する42機の戦闘機F35BとF35Aの購入費・維持費は1兆2977億円。また「イージス・アショワ」は2基で2352億円。これを安部政権がアメリカの「言い値」で購入するのです。まさに「爆買い」です。トランプ大統領は大いに喜んで「安部はいいやつだ」と言ったそうです。日米軍事同盟がますます強化されていることが分かります。
▽宇宙専門部隊の設置 防衛大綱は、防衛の「新たな境域」として、宇宙・サイバー・電磁波へのシフトを挙げています。「平素から自衛隊の活動を妨げる行為を未然に防止するため継続的に監視する。わが国への攻撃には、宇宙・サイバー・電磁波の領域を活用して阻止、排除する」と。科学技術の進展で、これまでの陸海空シフトでは対応できない状況が生じているというわけです。防衛大綱は中国を意識し、「(中国は)サイバー領域や電磁波領域における能力を急速に発展させ、宇宙領域での能力強化も継続するなど新たな領域で優勢の確保を重視している」と述べています。 「宇宙領域における能力」として、防衛大綱は「宇宙領域を活用した情報収集、通信、測位など各種能力を一層向上させ、宇宙空間の状況を地上と宇宙空間から継続的に監視する体制を構築する」とし、これらを実行するために、航空自衛隊に「宇宙領域専門部隊」を設置することにしています。 すでに人工衛星がその役割を果たしています。弾道ミサイル発射をキャッチする早期警戒衛星、地上の基地や攻撃兵器等の正確な場所、ミサイルなどの誘導をする測位衛星、気象情報を把握・予測する気象衛星(たとえば「ひまわり」)、宇宙から地上の軍事基地を偵察して映した画像を送信する画像収集衛星などが宇宙を飛び交っています。アメリカの偵察衛星が北朝鮮の上空から地上の核基地を撮影し、その映像を米国の司令塔に送信しています。 トランプ大統領は2018年12月16日、宇宙統合軍の創設を指示しました。中国やロシアが衛星攻撃兵器の開発を進めるなど、宇宙空間での競争が活発化する中、米国も対抗して、2020年末までに陸海空軍や海兵隊、沿岸警備隊と同格の独立した6番目の軍への昇格を目指すとのことです。陸海空軍の装備品の多くは通信衛星や全地球測位システム(GPS)衛星を利用するほか、北朝鮮などの弾道ミサイルの監視にも宇宙空間に設置した衛星が不可欠だとしています。(2018年12月20日「毎日」)
▽サイバー防衛部隊の設置 サイバーとは、コンピューターに対するネットワークを通じてのデータの破壊や改ざんを行うことです。 その技術を使ったサイバー攻撃とは、コンピューターシステムやインターネットを利用して、標的のインターネットや情報通信ネットワークに不正に侵入し、データを盗んだり、改ざんたり、誤作動させたり、破壊したりして、標的のコンピューターシステムを機能不全に陥らせるものです。すでに自衛隊に2014年、サイバー攻撃隊を設置し、24時間態勢で情報通信ネットワークを監視してサイバー攻撃に対処しています。 自衛隊のネットによると、「サイバー攻撃が行われると、社会活動に広範囲に甚大な被害が生じる可能性があります。また、サイバー攻撃は攻撃源の特定や抑止が困難という特性があり」、その対応は「国家の安全保障・危機管理上の重要な課題になっています」と記載されています。防衛大綱は「自衛隊の指揮通信システムやネットワークにかかる継続的な監視能力や、被害の極限、被害復旧など必要な措置を迅速に行う能力を抜本的に強化する」と言い、陸海空共同の部隊として「サイバー防衛部隊」を新たにつくることにしています。 2019年2月4日付の毎日新聞によると、米・英・カナダ・ニュージーランド5カ国の「ファイブアイズ」と呼ばれる情報機関と、日本、ドイツ、フランスが連携して、中国などのサーバー攻撃に関する情報共有の新たな枠組みを2018年初めにつくったとのことです。
▽電磁波作戦部隊の設置 もう一つの「新たな領域」である電磁波戦争。防衛大綱は「わが国に対する侵攻を企図する相手方のレーダーや通信などを無力化する能力を強化する」と言っています。電磁波とは、電磁場の振動が波動として真空または物質の中を伝わる現象。これを軍事に使おうというわけです。電磁波攻撃は、強力な電磁波を出して標的のコンピューターやIT機器を故障させたり正常は動作を妨害するなどの攻撃で、軍隊が戦闘行為として行うもので、米軍は空中で爆破させて電磁波を放射させる「電磁爆弾」をすでに装備していると言われます。(電磁波問題市民研究会)。防衛大綱は陸上自衛隊に電磁波作戦部隊を新しく配置することにしています。
▽「新たな領域」に意気込む安倍首相 こうした「新たな領域」に対応するため、防衛大綱は「人工知能など先進的な民生技術を積極的に活用する」と言い、防衛産業との連携強化をうたっています。 東京新聞によると、今回の防衛大綱の策定に関わった政府関係者はこう言ったそうです。「弾道ミサイル発射の兆候も含めて情報収集や警戒監視、通信、測位、気象観測……。陸海空の作戦と装備は宇宙に深く依存している。相手の宇宙のインフラを使えなくすれば、死傷者を出さずに陸海空の戦いで圧倒的に有利になる。だから、現代の戦争は宇宙とサイバーから始まる。宇宙を制する者は現代戦を制する」 このほか、防衛力の整備として、弾道ミサイル対処能力をより効率的に運用できるよう、陸上自衛隊に弾道ミサイル防衛部隊、航空自衛隊に地対空誘導弾部隊を新設、海上自衛隊に「空母化」するヘリコプター搭載護衛艦とイージス・システム搭載護衛艦を中心に構成する水上艦艇部隊を新設することなどにしています。
▽米の言い値で過去最大の防衛費 新防衛大綱実施にかかる防衛費は今後5年間で過去最大の27兆4700億円。現行の防衛大綱・中期防(2014年〜2018年)よりも2兆8000億円も多い金額です。予算が膨らんだのは、中国や北朝鮮の動きを警戒してステルス機F35や陸上配備型迎撃ミサイル・システム「イージス・アショア」など最新鋭の装備を米国から購入するためです。 米国と日本の間に米国防省が仕切る「対外有償軍事援助(FMS)」というのがあり、これに基づき、米から防衛装備品を購入する場合、「米の言い値」で価格が決まるからです。これが6917億円。2012年度の5倍に当たります。安部政権が2015年9月、「集団的自衛権行使」に道を開いた安全保障関連法の成立で日米同盟が強化され、米からの武器購入が急増したのです。 安部首相は2019年1月29日、衆院本会議での施政方針演説で、「テクノロジーの進化は、安全保障の在り方を根本的に変えようとしています。サーバー空間、宇宙空間における活動に、各国はしのぎを削る時代となりました。もはや、これまでの延長線上の安全保障政策では対応できない。陸、海、空といった従来の枠組みだけでは、新たな脅威に立ち向かう立ち向かいことは不可能であります。国民の命と平和な暮らしを、我が国自身の主体的・自主的努力によって、守り抜いていく。新しい防衛大綱の下、その体制を抜本的に強化し、自らが果たし得る役割を拡大します。サイバーや宇宙といった領域で我が国の優位性を保つことができるよう、新たな防衛力の構築に向け、従来とは抜本的に異なる速度で変革を推し進めてまいります」と述べています。 安部政権の「集団的自衛権」行使は、宇宙やサイバーといった「新たな領域」にまで広がっています。その動きは日米同盟による連携の強化そのものです。では日米同盟はなぜ結ばれたのか、現状はどうなっているのか、そして安倍政権はそれにどう対処しようとしているのかを報告したいと思います。 (つづく) (注)集団的自衛権行使 安部政権は2014年7月1日の臨時閣議で集団的自衛権の行使について、つぎの新3要件を満たせば、武力行使を可能とした。�_罎�国に対する武力攻撃が発生したのみならず、我が国と密接な関係にある他国に武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、�△海譴鯒喀�し、我が国の存立を全うし、国民を守るために、他に適当な手段がないとき、�I�要最小限度の実力行使 これに対して、元外務省国際情報国際局長の孫��享氏は「集団的自衛権の行使は、日本の安全とはまったく関係がないこと。なぜなら、すでに日米安保条約が存在し、日本本土をどう守るかということは、決まっているのです。集団的自衛権は必要ありません」と述べている。(「市民の意見」2013年12月1日)
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