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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2019年07月15日12時37分掲載
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人権/反差別/司法
ハンセン病家族訴訟、 控訴せず 安倍の”ドヤ顔”より救済制度の創設を 根本行雄
ハンセン病の患者に対する誤った隔離政策で家族も差別され被害を受けたとして、元患者の家族500人余りが国を訴えた集団訴訟で、熊本地方裁判所は6月28日、元患者だけでなく、家族が受けた損害についても国の責任を認める初めての判断を示し、国に賠償を命じる判決を言い渡した。これに対して、安倍総理は「筆舌に尽くしがたい経験をされたご家族の皆様のご苦労をこれ以上長引かせるわけにはいかない」として、控訴しないことを表明した。この判断は、参議院選挙をにらんだ安倍総理の「パフォーマンス政治」による決断だろうが、素直に喜んでおくことにしよう。ハンセン病家族訴訟の原告・弁護団は7月12日、控訴せず訴訟を終結させる方針を明らかにした。
ハンセン病 は、ノルウェーの医師ハンセンが発見した「らい菌」による感染症である。末梢神経がまひし、皮膚のただれや体の変形などで障害が残る恐れがあるが、感染力は弱い。日本では医学的根拠のないまま隔離が始まり、1931年の旧「癩(らい)予防法」で強制隔離を法制化された。断種や中絶手術の強制などが行われた。そして、薬の開発で治療法が確立された後も差別や人権侵害が続いていた。
ハンセン病はかつては「らい病」と呼ばれ、国は感染の拡大を防ぐ目的で1953年に「らい予防法」を定め、患者の隔離政策を進めた。その後、感染力が極めて弱いことが分かり、治療法が確立されたが、国は患者を強制的に療養所に隔離する政策を続けた。この隔離政策は1996年に法律が廃止されるまで行われた。
ハンセン病の元患者たちは「国の誤った隔離政策で人権を侵害された」として、各地で国に賠償を求めた裁判を起こした。2001年5月に熊本地方裁判所が「国は必要がなくなったあとも患者の強制的な隔離を続け、差別や偏見を助長した」などとして国に賠償を命じる判決を言い渡した。国と国会はその年に隔離政策の誤りを認めて謝罪し、元患者や遺族が形式的に裁判を起こしたり申請をしたりすれば、補償金などを支払う救済策を設けた。一方で、元患者本人だけでなくその家族も隔離政策で差別を受けたという訴えについては、国は補償金の対象に含めていない。2016年、元患者の家族561人が、国が進めてきた誤った隔離政策によって差別される立場に置かれ、家族関係が壊れるなど深刻な被害を受けたとして、熊本地方裁判所に賠償を求める訴えを起こした。熊本地方裁判所は2019年6月28日、「結婚や就職の機会が失われるなど家族が受けてきた不利益は重大だ」などとして、国に対して総額3億7000万円余りを支払うよう命じた。
□ 政府声明
政府は7月12日の持ち回り閣議で、安倍総理大臣の談話と併せて、今回の熊本地方裁判所の判決について法律上の問題点を指摘した政府声明を決定した。それによると、裁判でも争われた、原告の人たちが賠償を求める権利が時効によって消滅しているかどうかという点について「判決での消滅時効の起算点の解釈は民法の趣旨や判例に反するもので、国民の権利や義務への影響が大きく、法律論としてゆるがせにすることができない」と指摘している。また判決で、差別を解消するための措置を怠ったなどと認定された厚生労働大臣、法務大臣、文部科学大臣の責任について「過去の判決で平成8年のらい予防法廃止時をもって終了するとされていて、今回の判決とそごがあり、受け入れられない」としている。さらに「偏見や差別を除去する方策は柔軟に対応すべきもので、行政に裁量が認められているが、判決はそれを極端に狭くとらえている」などと主張している。
菅官房長官は持ち回り閣議のあとの記者会見で、元患者の家族への補償の範囲について「総理大臣談話において、訴訟への参加・不参加を問わず、家族を対象とした新たな補償の措置を講じることを表明しており、具体的な内容は今後、早急に検討を進めていきたい」と述べた。また、安倍総理大臣と家族との面会について「具体的な日程は今後調整していきたい」と述べた。さらに、政府声明について「今回、訴訟をしないという異例の判断をするにあたり、法的に容認できない点があるため、当事者である政府の立場を明らかにするとともに、他の事案への影響をできるだけ少なくしようとするものだ。法的拘束力はないが、政府としての大変重い意思表明であり、閣議における全閣僚の合意によるものだ」と述べた。
□安倍総理の本音
熊本地方裁判所は6月28日、元患者だけでなく、家族が受けた損害についても国の責任を認める初めての判断を示し、国に賠償を命じる判決を言い渡した。これに対して、安倍総理は「筆舌に尽くしがたい経験をされたご家族の皆様のご苦労をこれ以上長引かせるわけにはいかない」として、控訴しないことを表明した。政府声明を読めば、安倍総理の、この判断は、参議院選挙をにらんだ安倍総理の「パフォーマンス政治」による決断であると容易に推測できるだろう。
この超法規的な措置は、私の英断であるという安倍総理の「ドヤ顔」が見えてくる。
毎日新聞によれば、記者団が参議院選挙の期間中だということが政府の判断に影響を与えた可能性があるかどうかについて質問したのに対し、「選挙に合わせて裁判の結果が出たわけではなく、直接の影響はない」と述べたという。
原告団の団長で、父親が鹿児島県の療養所に入所していた福岡市の林力さん(94)は「謝罪の思いがあるのであればきちんと面会をして文書で渡してほしかった。安倍総理大臣に面会できたら、自分が生きてきた苦しかった道のりの断片でも分かってもらいたいという切なる願いがある」と話したという。
□ 救済制度の創設を
集団訴訟の原告団は、7月9日午後、都内の議員会館で会見を開き、国に、新たな救済制度を作るよう求める声明を発表した。このなかで、安倍総理大臣が原告と面談したうえで謝罪を行うことや、元患者の配偶者や親子など原告以外も含めた被害者全員に、一律の補償金を支払う制度を作ること、それに教育や就職の機会を奪われた人を救うための仕組みを作ることなどを求めている。
弁護団の徳田靖之共同代表は「今後、救済制度の創設について国と協議を進めていきたい。裁判に参加していない元患者の家族がどれくらいいるかわからないが、1人でも多くの当事者に声を上げてもらえるよう呼びかけていきたい」と話している。
政府は訴訟への参加、不参加を問わず、補償を行うべきである。そして、救済制度の創設も忘れてはならない。
控訴をしないという安倍総理の判断は、参議院選挙をにらんだ安倍総理の「パフォーマンス政治」による決断だろうが、素直に喜んでおくことにしよう。ハンセン病だけでなく、すべての差別や偏見をなくしていくことがわたしたちの課題だからである。
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