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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2020年03月24日17時46分掲載
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欧州
さらに広がるコロナウィルス:イタリアの現状〜チャオ!イタリア通信
前回の記事を2月23日に書いたのですが、約一ヶ月間にウィルスの感染者数がとうとう37860名、死亡者数は4032名(3月20日付)と急激に増え、1日あたりの死亡者数は今まで最高の627名となりました。
3月5日には、全国の幼稚園から大学までが休校、3月10日には移動制限措置が取られました。それと同時にスーパーや薬局、郵便局、役所など必要最小限の場所を除いて、すべてのお店を閉める措置も取られました。現在、買い物で家を出るにも自己申告書が必要です。自己申告書には、氏名、住所、生年月日、電話番号の記入はもちろん、移動制限の政令を認識しているとか、コロナウィルスには感染していないことを宣言するという文章が書かれており、それに署名して持ち歩くことになります。また、どういう理由で外出しているのかも記入しなくてはいけません。仕事が理由なら、どこの会社に行くのか、路上で警官のパトロールに遭ったら、警官がその会社に確認して裏付けを取るということも聞きました。そのため、違法に外出していると最高で206€の罰金や3か月の警察による拘束を受けます。この法令が出た時は、罰金が好きなイタリア人らしいと苦笑いも出ましたけど、また、ここまでしなくてはいけない状況になってるのかと、事の重大性も感じました。そして、私の町では3月19日から、お年寄りだけの家では、電話でボランティアに買い物を依頼できるようになりました。私の義理の両親も、二人で暮らしているので、それを利用したいと思っているようです。
移動措置制限が出されて最初の日やその次の日あたりは、本当に町中で人を見かけることがなかったのですが、1週間経ち、天気の良い日が続いてるせいでしょうか、私の町では車の行き来は結構あり、ちらほらと犬と散歩する人やベンチで新聞を読んでる人も見かけます。移動制限措置が取られてからこの一週間で約4万3千人が理由もなく外出していたために訴えられたとニュースがあります。感染者数が一番多いミラノの地域では、この一週間で5123名が路上で取り調べを受けて、その内292名が今回の法令に違反したと訴えられました。虚偽の自己申告書を書いていたり、偽の身元を記入していたりという理由です。昨日、テレビ番組で警察官が携帯で撮ったビデオを紹介していました。80歳過ぎの男性がマスクもせずジョギングしているのを、警察官が家にいるように注意したのですが、その老人は「もう80過ぎなんだから好きなようにさせてくれ。死ぬなら死ぬでいいよ」と行ってしまいました。”あ〜〜、これぞイタリア人”と思いました。日本人のように「右へならえ」というところがないのがイタリア人なんですよね。そこがイタリア人の面白いところでもあり、強さだと思うんですが、今回はそれが裏目に出てしまいました・・・。
ここでも町のミゼリコルディア(地域のボランティアで運営される医療機関)の車が「不必要に外に出ないで、家にいるように」とスピーカーで放送して回ってました。また、感染者数が一番多いロンバルディア州の州知事が「天気が良い日に家で過ごすのは素敵なことだ。外出して、死ぬかもしれないリスクを負うより」と、ちょっと悲痛な感じのメッセージを市民に送っている映像も見ました。さらに、若い人たちに人気のある歌手たちもソーシャルネットワークを通して、自分が家にいる様子の映像を流し、若い人たちへのメッセージを送っています。というのも、休校にしたのはいいのですが、若い子たちは、バカンスと勘違いしたようで、夜出歩いていたそうです。確かに、私の町でも休校になってから数日間、夜遅く若い人たちの声が聞こえてました。さすがに、今は学生の姿は見られませんが。
イタリアがなぜこんなに感染者が増えてしまったのか、いつも自問自答しておりますが、まずは新型コロナウィルスを過小評価していたことは確実です。世界中でコロナウィルスの話題が出ていたころ、政府は特に対策を打ってませんでした。日本では、症状が出たら2週間家で待機するようにとなっていたと思うのですが、こうした通達も出さず、コロナウィルスがどういうところから感染するか、感染を防ぐにはどうしたらいいかの宣伝が全くされていなかったのは事実です。
イタリアの医療システムも、一つの原因かなと思います。入院施設や色々な検査の機械がある大きな病院は一つの地域に公立の病院が一つあるのが基本です。日本のように、私立の大きな大学病院があったり、小さくても入院施設や検査のできる病院というのはほとんど見かけません。そのため、個人の医者は個人でクリニックを持っていますが、簡単な検査だけできて、入院やもっと検査が必要となると大きな病院にまわされるのが通常です。そのため、患者が一つの病院に集中し、そこから感染が広がったのは容易に想像できますし、ベッドや人工呼吸器が足りなくなるのも無理はないと思いました。
今回、最初の感染者が行った公立病院の救急窓口ですが、そこはホームドクターではなく、専門の医者にすぐ診察してほしいという人が行くところです。無料で診察してくれるので、いつもたくさんの人でいっぱいです。そこに何の防御もなく、感染者がやってくるとなると、一人で多くの人に感染するのは想像に難くありません。さらに、こちらでは病気の人も医療関係者もマスクをしている人はほとんど見かけません。
医者不足もよく取り上げられますが、先日は感染者が1万5千人以上いるロンバルディア州の州知事が退職した医師や看護師を人数不足のための予備軍として考えていると発言しているのをテレビで見ました。さらに、今日(3月21日)から、テレビのスポットで300人の医師を募集していました。感染者が集中している北部の地域に派遣団として投入する政策です。医者不足は、以前からよく聞いていました。医者だけでなく、研究者なども職がなかったり、お給料が安いため海外に出てしまう傾向にあります。それが、今大きな大きな問題となっています。
生活習慣も大きく影響していると思います。土足で家をウロウロするのが普通なので、衛生感覚も日本とは違います。例えば、日本では幼稚園や小学校のトイレに手洗いやうがいの仕方を説明する用紙が貼られていたりしますが、こちらはそういうものは全くなく、子どもを持つ親としては、手洗い・うがいの習慣をもっと徹底してほしいと思ったりもします。スーパーでは、必ずパンやハム、サラミなどを計り売りするコーナーがあるのですが、そこで働く人もマスクや手袋をする人は見かけません。ハムやサラミは脂っこいのでさすがに手づかみはせず、挟んで摘み上げるものがあるのですが、パンは素手でつかむのが通常です。私もすっかりそんな生活に慣れてしまいましたが、こういう状況になると本当に不衛生なことですよね。
夫がつぶやいていたのですが、「コンテ首相は2年前に、こんなことになるなんて想像してなかっただろうな。フィレンツェ大学の教授だったのが、歴史に名が残ることになっちゃって」と。確かにそうです。ただ、本当に名前を残すのは、これから、今回出てきた色々な問題を解決していくことができた時だと思います。
注:この記事を書いている間、イタリア保健省の発表で死亡者が今まで最高の793名となりました。
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