ミャンマー国軍による2月1日のクーデターから半年ほどが経過した8月8日、東京都内で在日ミャンマー人の問題を扱ったドキュメンタリー映画「異国に生きるー日本の中のビルマ人ー」(監督:土井敏邦氏)の上映会が行われた。映画の上映と併せて行われた報告会には、当紙の永井浩主筆が登壇し、「日本ミャンマー協会とミャンマー軍との関係」に関する講演を行ったため、その内容を紹介する。
講演の状況(動画)は、下記URLから−−https://youtu.be/ggPRp8D2YwE
以下、講演要旨。
今年2月のミャンマー国軍のクーデターを、国際社会は「民主主義の破壊」と強く批判、民主主義の回復を叫んで立ち上がった同国民の抗議行動を残虐に武力弾圧する国軍に対して、米国やEU諸国は経済制裁を打ち出した。だが日本政府は、欧米先進国とは一線を画し、ミャンマーとの「独自パイプ」をいかして問題解決につとめると繰り返すだけである。最大の切り札とされるODA(政府開発援助)をどのようにするかについても、ミャンマー国民の側に立つという明確な姿勢を打ち出すことができない。なぜなのか?
この疑問を解き明かすには、「独自パイプ」とは何なのかと、それが前向きに機能しない理由をさぐる必要があるだろう。そこで見逃せないのが、「日本ミャンマー協会」の存在である。
同協会は、ミャンマーが軍政から民政に移管された2011年に設立された一般社団法人で、「アジア最後のフロンティア」と称されるこの国への日本の経済進出に大きな力を発揮してきた。会長は渡邉秀央元郵政相、最高顧問に麻生太郎副首相・財務相、理事に政官財の現・元トップクラスが名を連ね、会員企業は日本を代表する137社。つまり「日本株式会社」の拠点なのである。
渡邉会長は民政移管で誕生した旧知のテインセイン大統領から、経済発展の拠点として最大都市ヤンゴン郊外のティラワの工業団地の開発のために、日本の協力を打診された。渡邉氏は政治家時代に築いた人脈をいかして、180億�砲留臀�と投資、約50億�砲虜通劃⊂辰靴量鸞�を日本政府から取りつけ、この開発計画を日本が全面的に支援する体制を整えた。こうして、ODAプロジェクトや民間投資が急速に始動する。その目玉商品とされたティラワの経済特区を2013年に訪れた安倍晋三首相は、「日本とミャンマーの協力の象徴」ともちあげた。
日本の経済協力と投資がミャンマーの経済インフラの整備や雇用創出に貢献したことは間違いない。だが問題は、ミャンマー側のビジネスパートナーの多くが国軍の設立した巨大複合企業や国軍の「クローニー」(取り巻きの政商)だったことである。渡邉会長はこうした国軍の利権と日本企業の利益をつなぐパイプの「黒幕」視されるようになり、今回のクーデターの首謀者ミンアウンフライン総司令官とも親密な関係を築いていく。つまり日本政府のいう「独自パイプ」なるものの正体のひとつは、こうした両国間の経済利害にかかわるものであり、だから日本政府は国軍に対して欧米の先進民主主義国のように毅然たる姿勢を示すことができないのではないだろうか。
日本とミャンマー間のこうした影の部分はこれまで、「アジア最後のフロンティア」という明るいイメージに隠されてきたが、ミャンマー国民の多くにはすでにお見通しの事実だった。それが私たち日本人にも可視化されたのが、クーデターに立ち向かうミャンマー国民の闘いと「日本の政府と企業は国軍との関係を切れ」という訴えによってであった。 では私たちは、こうした両国間の歪んだ関係を終止符を打ち、日本とアジアの隣人が共に新しい友好と発展の未来を切り拓いていくにはどうすべきなのか。それを考える手がかりのひとつとして、この講演が役立ってくれるなら幸いである。
講演資料は下記URLから。https://docs.google.com/file/d/1XjchZL8wPiAfWPN6KU6u74YiDUb8-qm_/edit?usp=docslist_api&filetype=msword
上映・報告会の全編については下記にて。
〈「異国に生きる」上映会とシンポジウム〉 ―ミャンマーに私たちは何ができるのか― 1988年の民主化運動から33年目の8月8日に開催された上映・報告会の映像をVimeoで有料公開します。https://vimeo.com/ondemand/myanmar2021
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