・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・国際
・イスラエル/パレスチナ
・農と食
・アジア
・核・原子力
・入管
・反戦・平和
・教育
・文化
・中国
・市民活動
・米国
・欧州
・みる・よむ・きく
・検証・メディア
・外国人労働者
・司法
・国際
・市民活動告知板
・人権/反差別/司法
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年12月06日
・2024年12月05日
・2024年12月03日
・2024年12月02日
・2024年11月30日
・2024年11月29日
・2024年11月28日
・2024年11月27日
・2024年11月26日
・2024年11月22日
|
|
2024年04月30日11時11分掲載
無料記事
印刷用
農と食
食料・農業・農村基本法改定の意味を問う(中) 農業の担い手を農外資本にシフト
いま国会で審議中の基本法改定はそうした時代背景の中で出てきたものです。その中心軸は「食料安保」です。農林水産省が作成した基本法改定案の概要によると、法案の柱は「食料安全保障の確立」で、「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義されています。(大野和興)
このことに誰も異議はないのだけれど、問題はそれをどうやって実現するつもりなのか、ということです。
まず気になるのは「合理的な価格」というときの「合理的」とはどういうことを意味するのかということです。それを知るために基本法改定に向けての検討過程の論議に立ち戻ってみると、以下のような議論と認識がなされていることがわかります。
まずこれまでの農産物価格政策について、以下のような認識を明らかにします。 「価格の安定とともに所得確保にも強い配慮が払われてきた結果」、農産物価格が需給事情や品質の評価を適切に反映せず、その結果「効率的かつ安定的な農業経営が生まれなかった」
ここに「合理的な価格」とはどういう価格かという問いの答えがあります。農産物価格とは、生産者である農民の暮らしが成り立つとか生産コスト費を償えるとかということとは関係なく、「需給事情」とか「品質」によって市場で作られる価格こそが「合理的な価格である」という論理が貫かれているのです。
その上で、需給事情や消費者による品質評価が一目瞭然でみられるのはスーパーマーケットの売り場です。きれいに包装された内外の農産物・加工食品が豊富に並び、食料は豊富に出回っているように見えます。確かにそれはカロリー換算で38%という自給率しかないこの国の食をめぐる一つの現実です。しかしその背後には先ほど述べた農業の担い手の超高齢化、農業から離脱する農民の激増、低価格農産物の横行からもたらされる”農民の貧困化”という、もう一つの現実があるのです。
⬛︎生産現場の衰退をどうする
食料安保を考えるときの最大の課題は、この矛盾をどうつじつま合わせるかということです。
今国会審議中の基本法改定を軸とする諸法案の中にその回答はあります。一つは法人化をテコとする大規模農業経営体の創出です。農民が集まって法人を作り大規模化する動きはこれまでもありますが、農民主体の農業法人は低農産物価格の中で行き詰まりが出ています。
コロナ禍による消費の減退で農産物価格、特に生産者米価が大きく下がりました。その時点で農民の農業からの撤退が急増し、その流れはいまも続いています。国内農業の担い手である基幹的農業従事者の減少を時系列でみると、その減少の勢いは相当のものがあります。 特にコロナ以降は猛烈です。
この時期、秋田県や山形県の米作地帯を何カ所か歩き、農民が集まって法人を作り大型稲作経営を行っているところを訪ねました。
秋田県南部の雄勝平野では法人化で80ヘクタールにまで規模拡大した稲崎経営体が半分の40ヘクタールに一挙に規模を縮小したという話を聞きました。山形県南部の置賜盆地では、60ヘクタール前後の稲作法人二カ所を訪ね、話を聞きました。両法人とも、地域の農家に頼まれて作ってきた田んぼ農地、作業効率が悪い田んぼの返して身軽にならなければ自分たちがつぶれてしまうと危機感をあらわにしていました。
これには解説がいります。一部も稲作経営体が次第に大規模化していったのには理由があります。農業をやっていても先が見えないとか、年をとり、後継ぎもいないから、ということで農業から離脱したいが、耕作放棄して荒れ地になってしまうのはご先祖に申し訳ない、ということで作ってくれる人をさがします。だけどみんな同じように農業から手を引きがっている。
地域内には、ほんのわずか規模拡大をめざして法人化している人がいる。そこで「うちの田んぼも引き受けてくれないか」と頼み込む。法人のほうはコメの先行きも考え、これ以上拡大したくないと思っているのだが、同じ地域に住む農家どうしということでやむなく引き受ける。しかしそれも生産者米価の値下がりで限界に来た、というのが現状なのです。 法人に土地を引き受けてもらった農家は、再び米作りをする気もないし、農機も手放していてその体制もない。法人から土地を返してもらっても、そのまま耕作放棄するしかない。それがいまの農業の現状なのです。
⬛︎農業の主体は農外資本に
そこで政府が考えたのは、農民に代わって食品企業や銀行資本など農外資本に農業経営をになってもらおうという算段です。
今国会で基本法改定の関連法案として出されている農地関連法改正案で、農地を所有できる法人への出資規制が大幅に緩和され、農外企業が出資の三分の二まで持てることになります。農業法人の経営権は農外の資本に握られることになるわけです。
この規制緩和によって平野部の条件のよいところでは桁外れの大規模農業経営体が出現することになりそうです。
それら巨大経営を支える技術的基盤はAIとバイオテクノロジーです。トラクターやコンバイン、田植機など大型農機の無人化、ドローンによる農薬散布や肥培管理、遺伝子組み換えやゲノム編集による品種開発や微生物改変、などを駆使してのイノベーションで、これをスマート農業と政府は称しています。その育成の法案も基本改正関連法案として国会に出ています。 (続く)
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
耕作放棄され、畦と土手が崩れた田んぼが広がる(新潟県下)
放置されたビニールハウス(埼玉県下)
|